2012 Fiscal Year Research-status Report
骨・軟骨に異常をきたす疾患モデルマウスライブラリーの構築
Project/Area Number |
23592220
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
関本 朝久 宮崎大学, 医学部, 助教 (60305000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
帖佐 悦男 宮崎大学, 医学部, 教授 (00236837)
荒木 正健 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (80271609)
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (90211705)
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Keywords | 遺伝子トラップ法 / 骨軟骨代謝 / モデルマウス / スクリーニング / マウスライブラリー / ロコモティブシンドローム / EGTC |
Research Abstract |
近年、日本整形外科学会から『ロコモティブシンドローム』という新しい疾患概念が提唱され一般社会にも浸透しつつある。これは「運動器の障害」によって「要介護」になるリスクの高い状態であり、本邦では4700万人以上の罹患が推定されている。その中で骨粗鬆症の患者は1700万人を超え、高齢化社会が進むにつれてその数は増加の一途をたどると予想される。昨今、骨粗鬆症の病因病態解明のための様々な研究が行われているが、その発症原因はいまだ不明であり、ゲノム遺伝子の異常などは未だ十分に解明されていない。 現在我々は、骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームの病因病態解明のために、骨軟骨代謝に異常をきたす疾患モデルマウスライブラリーを世界に先駆けて構築する目的で、『可変型遺伝子トラップ法』により樹立した変異マウス系統を用いて、骨軟骨代謝に関与する新規遺伝子探索の効率的なスクリーニングを実施している。我々はそれらトラップクローンデータをデータベース『EGTC』(Database for the Exchangeable Gene Trap Clones, http://egtc.jp)に公開している。 現在この『EGTC』に登録したクローンにおいて骨軟骨にトラップした遺伝子の発現のみられるクローンを選別し、ホモ・ヘテロマウスを作製し骨軟骨における表現型異常をスクリーニングしている。現在までに1028クローンを単離し384ラインのトラップ系統を樹立している。既に23ラインのスクリーニングを施行し14ラインに骨の異常を認めており、効率の良いスクリーニング法として学会等で発表を行っている。現在これらのトラップされた遺伝子群の骨軟骨代謝における表現型解析を行っている。骨軟骨に異常をきたす個々の遺伝子トラップマウスラインの解析により、ロコモティブシンドロームの病態解明や治療法の確立に大きく貢献できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本邦における変形性関節症、骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームの近年の未曽有の増加にもかかわらず、いまだそれらの原因タンパクならびにゲノム遺伝子の異常、遺伝性などは十分に解明されていない。現在我々は、骨軟骨代謝に異常をきたす疾患モデルマウスライブラリーを世界に先駆けて構築する目的で、変異マウス系統における骨軟骨表現型のスクリーニングを実施している。 現在我々は可変型遺伝子トラップ法によって樹立されたトラップマウスを用いて骨軟骨代謝に関与する遺伝子の効率的なスクリーニングに取り組んでいる。スクリーニングの内容はマイクロCT、骨形態計測、骨力学試験、病理組織学的検査、血液生化学検査を行っている。現在までに1028クローンを単離し、384ラインのトラップ系統を樹立している。これまで樹立したトラップマウスラインは、胚及び精子凍結保存している。現在までに骨軟骨にトラップした遺伝子の発現のみられる23の候補遺伝子についてトラップクローンマウスを作製し、1次スクリーニングを施行したところ、Lima1、Nedd4、Pkig、Tmem161A 遺伝子など14のトラップマウスに骨軟骨表現型の異常を認めた。現在これらのトラップされた遺伝子群の骨軟骨代謝における表現型解析を行っている。このように可変型遺伝子トラップ法により樹立されたトラップクローンマウスを用いた骨軟骨代謝に関与する新規遺伝子のスクリーニングは非常に効率が高い。この手法によって作製された骨軟骨代謝異常モデルマウスは、骨粗鬆症などの骨軟骨疾患の病態解明や治療法の確立について有力な手段となりうると考える。このように、可変型遺伝子トラップ法は、単なる遺伝子機能の解析だけでなく、ヒト骨軟骨疾患モデルマウスを作製する非常に有用で独創的な方法であり、ロコモティブシンドロームにおける病因病態解明や新規創薬などへの多大な貢献が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに骨軟骨にトラップした遺伝子の発現のみられる23の候補遺伝子についてトラップマウスを作製し、1次スクリーニングを施行したところ、Lima1、Nedd4、Pkig、Tmem161A 遺伝子など14のトラップマウスに骨軟骨表現型の異常を認めている。本研究における可変型遺伝子トラップマウスは、バイオリソースとして様々な研究分野での有効活用が期待される。 今後も、『EGTC』に登録しマウスラインを樹立した遺伝子トラップクローンについて、骨軟骨にトラップした遺伝子の発現がみられるクローンを選別し、ホモ・ヘテロ接合体マウスを作製する。そして骨軟骨代謝の異常を検出する為のスクリーニングを行い、その中で特に骨軟骨代謝に異常を呈するラインをできるだけ数多く確保する。骨軟骨代謝に異常が確認できたラインにおいては、ゲノム情報を利用してこれらの遺伝子の発現・機能プロフィールを解析し、骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームの原因となりうる候補遺伝子を絞り込む。さらに、生体での候補遺伝子および関連遺伝子の機能解析などの手法を駆使して、それら遺伝子変異と骨軟骨疾患や周辺疾患との関係を検討する。このようにして骨軟骨疾患モデルマウスライブラリーを充実させていく予定である。 本研究により、骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームに関与する新規感受性遺伝子群が同定され、それらの遺伝子群とヒト骨軟骨疾患との関連が明らかとなると考えられる。本研究の成果は、今後のロコモティブシンドロームの病態解明に寄与し、病因の本質的理解と分子を標的とした新たな治療法の開発にも貢献すると考えられる。我々は、既にデータベース『EGTC』を全世界に公開している。本研究で得られた成果についても、新たに骨軟骨疾患モデルマウスライブラリーを構築し、学会、論文などで発表するとともに、将来はデータベースとして全世界に公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度には、さらにこの骨軟骨疾患モデルマウスライブラリーを充実させ、骨軟骨代謝に異常を呈するラインをできるだけ数多く確保することを目的とする。 ホモ・ヘテロ接合体マウスに対する骨軟骨異常のスクリーニング:平成25年度も平成23・24年度と同様に、ホモ・ヘテロ接合体マウスに対する骨軟骨代謝異常のスクリーニングを実施していく。 骨軟骨代謝に異常をきたす疾患モデルマウスライブラリーの充実:骨粗鬆症やその周辺疾患の原因となりうる骨軟骨疾患候補遺伝子を単離するとともに、それら候補遺伝子上のゲノム異常を明らかにする。このようにして同定された骨軟骨疾患感受性遺伝子変異を含む、骨軟骨疾患モデルマウスライブラリーを充実させていく。 可変型遺伝子トラップマウスを用いた骨軟骨代謝異常の表現型解析:現在までに骨軟骨にトラップした遺伝子の発現のみられる23の候補遺伝子についてトラップクローンマウスを作製し、1次スクリーニングを施行したところ、Lima1、Nedd4、Pkig、Tmem161A 遺伝子など14のトラップマウスに骨軟骨表現型の異常を認めた。今後はそれらトラップした遺伝子のホモ・ヘテロ接合体マウスにおける骨軟骨代謝異常について表現型解析を進める。例えば、リアルタイムPCR、in situ hybridizationや免疫染色等により、生体でのトラップした遺伝子の発現解析や骨軟骨代謝関連遺伝子の骨軟骨組織中の発現パターンを網羅的に解析するなどの手法を駆使して、それら遺伝子変異と骨軟骨疾患や周辺疾患との関係を検討する。さらに我々の開発した骨折モデル(大腿骨骨折モデル、Funamoto T, 2011)を作製し、骨折治癒過程における骨軟骨組織の免染など各種染色、in situ hybridization、リアルタイムPCR、骨形態計測などを施行し、詳細にトラップした遺伝子の機能を解析する。
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Research Products
(4 results)