2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592223
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
射場 浩介 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (60363686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 敏彦 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70244366)
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Keywords | 骨粗鬆症 / 疼痛 / ビスホスホネート |
Research Abstract |
H23年度の研究結果で、卵巣摘除(ovx)マウスは偽手術(sham)マウスと比較して、 ①足底部刺激や熱刺激に対する反応やrota-rod testを用いた疼痛行動学的評価で術後4から6週より有意な疼痛閾値低下を認めたこと。②組織学的評価で疼痛関連蛋白であるc-fosの脊髄における発現が有意に増強していたこと。③術後4週でのレントゲン写真、骨密度、骨代謝マーカー値の評価で高骨代謝回転型を呈する骨粗鬆症変化(閉経後骨粗鬆症モデル)を呈していることを確認した。以上より、仮説として骨粗鬆症に伴う痛みが高骨代謝回転状態と関連する可能性があることを考えた。また、骨吸収抑制剤であるビスホスホネート(BP)を投与することで骨代謝回転抑制とそれに伴い低下した疼痛閾値の改善を認めた。このことは、高骨代謝回転状態に伴う骨性の疼痛発症メカニズムとして破骨細胞が関与していることを示唆している。 今回は以上の結果に基づき、破骨細胞が骨吸収時に形成する酸性環境が骨組織内で神経終末にある侵害受容器を刺激して疼痛を誘発することを考えた。 研究結果では骨組織内の破骨細胞活性化マーカーとしてTRAPとCahepsinKを、酸性環境形成に関与するマーカーとしてcarbonic anhydrase IIとV型ATPaseD3の免疫染色を行い、いずれのマーカーもOVXマウスで発現上昇を認め、BP投与によりsham群(コントロール)レベルまで発現が低下した。以上より、破骨細胞の形成する酸性環境が骨粗鬆症に伴う疼痛発生に大きく関与していると考えられた。一方、現段階で、骨組織内の神経線維や侵害受容器の免疫組織学的評価はできていない。さらに、侵害受容器の1つであるTRPV1に対する拮抗薬を用いて、疼痛行動評価を検討したところ、OVXマウスの疼痛行動の改善を認めた。しかし、疼痛改善効果の程度はBPと比較して弱かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
閉経後骨粗鬆症モデルの疼痛域値低下を破骨細胞の活性化に伴う骨組織内の酸性環境が関与していることを示すことができた。さらに、酸受容体拮抗薬を用いた研究でも疼痛行動の改善を認め、上記のメカニズムを裏づける研究結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では、骨組織内に存在するはずの疼痛発症に関与する神経線維や侵害受容器を免疫組織学的に検出することができていない。今後、実験方法に改良を加えて、これらの組織染色を可能にすることを目標とする。また、酸受容体拮抗薬のみではBPと同等の疼痛行動抑制効果を得ることができなかったため、その他の疼痛発症経路についても検討を勧める。さらに、研究結果を英語論文にまとめて発表することを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を勧める上で必要な消耗品や試薬の購入、論文をまとめるために諸経費や学会発表に伴う(特に海外での発表)旅費などに使用する予定である。残額が生じた理由として学会発表が少なく、予定していた海外での発表を行わなかったこと。予定していた最低限の研究内容については比較的スムースに進んだことと、可能であれば今年度行うことを予定していた研究内容が次年度に延期したことなどの理由により消耗品や試薬の購入量が少なかったためと考える。今年度はそれらの研究内容に残金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)