2011 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫を制御するToll様受容体シグナルによる骨軟骨破壊機序の解明
Project/Area Number |
23592233
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
中島 新 東邦大学, 医学部, 講師 (60583995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 晃一 東邦大学, 医学部, 教授 (30400823)
青木 保親 東邦大学, 医学部, 講師 (70584001)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 関節リウマチ |
Research Abstract |
本研究はRA患者の関節手術時に得られる滑膜、関節軟骨、軟骨下骨を用いて、TLRシグナルの活性化による炎症誘発、骨軟骨破壊のメカニズムを解明し、RAに対してTLRを標的にした分子治療へと展開するための研究基盤を確立するのが目的である。本年度はRA手術症例からの滑膜組織の収集、細胞培養、保存など実験材料の確保に当初計画していたよりも時間と経費を要した。サンプル数が少ないため、確立されたデータはまだ得られていないが、以下にプレリミナリーなデータを示す。滑膜組織の免疫組織学的な検討では、TLR-2, TLR-4の発現を認めたが、TLR-3, -7, -8, -9の明らかな発現は認められなかった。また、ウェスタンブロットでも同様の結果であった。滑膜組織から抽出したRNAをもとに、TaqMan probeを用いたPCRによってTNF-α,IL-17の発現を検討したところ、TNF-αは疾患活動性の高低に関わらず全般的に発現が認められる一方、IL-17は症例による発現量の差が非常に大きい(10-20倍の開きが存在する)ことが分かった。初代培養後に液体窒素内で保存していた滑膜細胞を培養し、非血清存在下でTLR-2, TLR-4の合成リガンドであるペプチドグリカン(PGN)とリポポリサッカライド(LPS)で刺激し、細胞内シグナル伝達系の活性化をウェスタンブロットにて検討したところ、p38, ERKのリン酸化と NF-kBの活性化が認められた。興味深いことにこれらのシグナル伝達系の活性化は、RAの実臨床において使用されているインフリキシマブなどのTNF阻害剤によって減弱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画はRA患者の手術時に切除される骨軟骨、滑膜を実験材料に用いるものであるが、当初計画していたよりも手術症例が少なく、実験材料の入手が思うように進まなかった。このため、達成度は「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は手術材料の不足から研究計画に遅延が生じたため、今後は多施設から手術材料を入手できるような体制を構築する予定である。同時に、手術材料の保存方法、収集手段を十分に検討しなければならない。また、多施設からの手術材料収集に当たっては、患者個人情報が尊守されるよう、十分な配慮がなされるような対策を講じていく。研究内容に関しては、研究計画に沿って培養滑膜細胞を用いたin vitroの実験を中心に行う予定である。IL-17とToll-like receptor(TLR)を介したシグナル伝達系の活性化について、プレリミナリーなデータではあるが興味深い結果を得ているので、当初の研究計画に加えて、滑膜細胞におけるIL-17とTLRシグナルのクロストークについても解析を進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画通り、細胞培養、遺伝子解析、生化学的解析に必要な試薬、器具を中心に研究費を使用する予定である。また、一部はデータ解析に必要なソフトウェア、研究成果発表のための学会準備・出張費に使用する予定である。
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