2011 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチにおけるIL-17の役割と部位特異的な関節破壊機序の解明
Project/Area Number |
23592234
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
園部 正人 東邦大学, 医学部, 助教 (60459774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 新 東邦大学, 医学部, 講師 (60583995)
中川 晃一 東邦大学, 医学部, 教授 (30400823)
青木 保親 東邦大学, 医学部, 講師 (70584001)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 関節リウマチ |
Research Abstract |
近年、関節リウマチ(RA)の関節破壊におけるTh17およびIL-17の役割が注目されている。しかしながら、RAの病態に中心的な役割を果たすT細胞サブセットや炎症性サイトカインについては一定の見解が得られていない。本年度は、RA滑膜におけるIL-17, IFN-γ, TNF-αの発現を解析し、TNF阻害薬がこれらの炎症性サイトカインの発現プロファイルに及ぼす影響を検討した。実験にはRA患者25例25関節から手術時に採取した滑膜を用いた。TNF阻害薬(TNFI)使用は13例、非使用は12例であった。RNA抽出後cDNAを作成し、IL-17, IFN-γ, TNF-αに対するTaqMan probeを用いてリアルタイムPCRを行った。また、IL-17, IFN-γ, TNF-αによる関節破壊効果を調べるために、初代培養後の滑膜細胞をこれらの炎症性サイトカインで刺激し、培養上清中のMMP3濃度をELISAにて測定した。IL-17の発現は、画像的寛解が得られていた症例やTNFI使用下にDAS28で臨床的寛解が達成されていた症例では低下していた。IL-17の発現が寛解群に比して10倍以上の増加を示した症例では、1)中等度以上の疾患活動性でTNFI非使用、2)TNFI使用下でも局所腫脹が残存、3)IFN-γの発現が低下、などの特徴を認めた。TNF-αは全例で発現を認めたが、寛解群の2倍以上の高値を示した症例はなかった。滑膜細胞を用いたin vitroでのMMP3産生効果はTNF-α>>IL-17であり、IFN-γ単独刺激による変化は認めなかった。多くの症例でTNFIによるIL-17発現抑制効果が示された。IFN-γは骨吸収を抑制することが報告されており、IL-17増加とIFN-γ低下がRAにおける関節破壊進行の基盤となっている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画はRA患者の手術時に切除される滑膜を実験材料に用いるものであるが、当施設の症例に加えて、他施設からの症例もいくつか加えることができ、ほぼ予定していた数の実験材料を確保することができた。滑膜組織よりRNAを抽出し標的遺伝子のPCRや、培養細胞を用いた実験では目的タンパクのELISAを行い、一定の結果を得た。これらの結果を基にいくつかの国内学会で研究成果を発表することができた。このため、達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き多施設から手術材料を安定して入手できるよう、手術材料の提供を共同研究施設に呼びかけていく。同時に、手術材料の保存方法、収集手段を十分に検討しなければならない。また、多施設からの手術材料収集に当たっては、患者個人情報が尊守されるよう、十分な配慮がなされるような対策を講じていく。研究内容に関しては、研究計画に沿って培養滑膜細胞を用いたin vitroの実験を中心に行う予定である。できるだけ臨床にフィードバックできる情報を得るために、IL-17で刺激した滑膜細胞の細胞応答(細胞基質分解酵素の産生など)が現在の実臨床で使用可能な生物学的製剤の処理によって抑制されるかどうか、特に検討を加えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画通り、細胞培養、遺伝子解析、生化学的解析に必要な試薬、器具を中心に研究費を使用する予定である。また、一部はデータ解析に必要なソフトウェア、研究成果発表のための学会準備・出張費に使用する予定である。
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