2012 Fiscal Year Research-status Report
新しい遺伝病の原因となる亜鉛トランスポーターZip13:その構造と機能を解明する
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23592239
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
深田 俊幸 独立行政法人理化学研究所, サイトカイン制御研究グループ, 上級研究員 (70373363)
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Keywords | 亜鉛 / 骨 / 歯 / 皮膚 / 亜鉛トランスポーター / 亜鉛シグナル |
Research Abstract |
申請者は、亜鉛トランスポーターZIP13が硬組織と結合組織の形成とBMP/TGF-βのシグナル伝達の制御に関与し、その機能不全が新規エーラス・ダンロス症候群の原因になることを見出した。本申請研究は、亜鉛トランスポーターZIP13がどのように健康と病気に関わるのか、ZIP13が制御する生命現象の機序について生化学的・分子生物学的・構造学的解析から解明するものである。昨年度までに、ヒトZIP13蛋白質はホモ2量体を形成すること、ZIP13蛋白質は亜鉛を輸送する細胞内亜鉛トランスポーターであることを初めとする、ヒトZIP13蛋白質の基礎的な生化学的特徴付けに成功した。糖鎖が付加されていないZIP13は膜蛋白質としては分子量が小さく、結晶化を目的とする真核生物の膜蛋白質としての優位性を有しており、これらの結果は原著論文(Bin,J.Biol.Chem.2011)、総説論文(Fukada,J.Biol.Inor.Chem.2011; Fukada, J.Bone.Miner.Meta.2013)、およびプレスリリースによって発表した(平成24年RIKEN RESEARCH「Moving a mandatory mineral」)。現在は、ヒトZIP13蛋白質の特徴のさらなる解明とともに、新規エーラス・ダンロス症候群の病原性変異型ZIP13(G74D型ZIP13)蛋白質の分子基盤の解明を進めている。この1年間の研究によって、G74D型ZIP13蛋白質はプロテオソーム依存的な経路によって分解を受けることが判明し、詳細な解析を進めている。一方で、申請者らは骨代謝に関わる別の亜鉛トランスポーターZIP14が鉄代謝を制御していることを見出し(Nam, Haematologica 2013)、トランスポーターの基質特異性が亜鉛シグナルの特異性の決定に関わる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZIP13が骨・歯・結合組織関連の遺伝性疾患の原因遺伝子として同定されたことは、ZIP13の整形外科領域・歯科領域・皮膚科領域の研究対象としての重要性を示すものである。本申請研究では、ZIP13タンパク質の特徴と構造解析とZIP13病原性変異型(G74D型ZIP13) 蛋白質の特徴解明を研究目標に掲げており、この1年間で申請者らはG74D型ZIP13蛋白質がプロテオソーム依存的な経路によって分解を受けること、この分解によってG74D型ZIP13蛋白質の発現量が顕著に減少すること、細胞内の亜鉛動態が変化することを見出した。さらに、G74D型とは異なる病原性変異型ZIP13である3アミノ酸欠損型ZIP13(ΔFLA型ZIP13)蛋白質の解析も並行して行っており、ΔFLA型ZIP13蛋白質もプロテオソーム依存的な経路によって分解を受けること、この分解によってΔFLA型ZIP13蛋白質の発現量が顕著に減少することが明らかになった。昨年度までに、「ヒトZIP13リコンビナント蛋白質の産生系と精製系の構築」と「ヒトZIP13蛋白質はホモ二量体を形成する」ことを初めとするヒトZIP13蛋白質の基本的な特徴を見出した(Bin,J.Biol.Chem. 2011)。一般的に膜蛋白質の立体構造解析には技術上の多くの困難が存在するが、ヒトZIP13蛋白質の安定化を誘導するモノクローナル抗体の作製が進行中であり、優秀な抗体が取得できればヒトZIP13蛋白質の構造解析を進めるうえで大きなステップとなると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
病原性変異型蛋白質であるG74D型ZIP13やΔFLA型ZIP13の病原性機序については、プロテオソーム依存的な経路との関わりを中心に解析を進める。もし分解の機序が解明された場合は、その分解経路を干渉する薬剤を探索して機能回復実験を行い、治療薬の可能性について精査する。ヒトZIP13蛋白質の構造解析については、現在作成中のZIP13蛋白質の安定化を誘導するモノクローナル抗体を用いて、蛋白質濃度/温度/塩濃度/界面活性剤の種類と濃度を調整した条件下で試行する。結晶が得られた場合は、X線構造解析によってヒトZIP13蛋白質の立体構造を解く。結晶化が計画通りに進まない場合は、上記の諸条件の再検討に加えてZIP13発現ベクターのコンストラクションのデザインを変更する。具体的には、ヒトZIP13蛋白質の欠失変異体や点変異体を作製して結晶化を行う。産生系の生物種や精製方法の変更も検討して、産生と精製に最適な条件を見つける。結晶構造条件が整った場合は、その方法と条件を病原性変異型ZIP13蛋白質の構造解析に応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
いくつかの学会の参加を見送ったため次年度使用額が発生した。この金額と合算させた次年度の研究費の使途として、研究に必要な分子生物学試薬と器具、生化学実験試薬と器具、免疫化学実験試薬、細胞培養試薬と器具を申請する。また、研究成果を学会で報告する経費として旅費を、誌上発表するための経費として外国語論文校閲費を予算に計上する。
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Research Products
(16 results)