2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592254
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 行雄 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60294063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上林 卓彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10273640)
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Keywords | 脳死 / 心機能 / フォスフォランバン |
Research Abstract |
昨年度は一昨年度の研究を継続した。ラット脳死モデルを用いて、脳死後の循環動態の変化をコンダクタンスカテーテルを用いて、詳細に検討した。一昨年度の実績で脳死ともないphosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)の下流にあるリン酸化酵素であるAktのリン酸化が進むこと、さらにPI3Kを阻害することで、脳死後の心機能の改善が見られたことから, 本年度はAktのリン酸化から心機能の低下を招く要因のひとつとして、心筋細胞内で細胞内Caの制御にかかわっているフォスフォランバンに注目して、脳死に伴う変化とPI3K阻害との関係について検討した。 結果として、ウエスタンブロッテングを用いたところ、脳死に伴いフォスフォランバンのリン酸化は抑制された。つまり、脳死に伴い心筋細胞内においてCaイオンの心筋小胞体への取り込みが阻害され、心不全を招く要因となっていることが示唆された。さらに、PI3Kの阻害薬であるワルトマニンは脳死に伴うフォスフォランバンのリン酸化は抑制を阻害した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではサバイバル蛋白といわれるAktのリン酸化(活性化)が脳死に伴う心機能低下を抑制できるとの仮説であったものの、これまでの結果はAktのリン酸化がむしろ心機能を悪化させるとのことであった。もともとの仮説とは結果的に逆の結果となったものの、PI3KおよびAktが脳死後の心機能低下の一翼を担っていることには変わりなく、研究の方向性の修正は必要だが、それも可能な範囲であると思われるので、おおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
脳死に伴うAktのリン酸化からフォスフォランバンのリン酸化抑制が脳死後心機能低下の一因であると考えられるので、それにいたる細胞内メカニズムの検討を進めたい。 脳死に伴う大量のカテコールアミンの流出が心機能低下の一因であるが、それがどのような経路を経て心機能の低下に至るかについて、その根本であるカテコールアミンがいかなる経路でPI3Kのリン酸化を招くかのについての検討を進める予定である。 カテコールアミンの作用が関与する受容体として心筋細胞に発現しているものとして、α1、β1、β2があげられるが、まずはその受容体メカニズムの検討から入る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物の購入、コンダクタンスカテーテルの購入、さらにはウエスタンブロットの抗体購入、成果発表のための交通費にあてる予定である。
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