2011 Fiscal Year Research-status Report
ストレス誘導性コンディショニングの探索:高炭酸ガス血症の効果
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23592257
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
原 哲也 長崎大学, 大学病院, 講師 (50304952)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心筋虚血再灌流傷害 / 心筋スタニング / 高炭酸ガス血症 / 虚血耐性 / プレコンディショニング / ポストコンディショニング / 周術期管理 |
Research Abstract |
研究の目的一側肺換気を用いた胸部外科手術あるいは重症呼吸器疾患患者などの周術期管理においては、高炭酸ガス血症を許容して呼吸管理を行う状況が生じる。一方、心筋虚血に対する予防・治療として虚血耐性の増強が注目されており、その形成には先行虚血をはじめとする種々のストレスが関与しているが、急性の高炭酸ガス血症によるストレスもまた心筋の虚血耐性を増強する可能性がある。心筋虚血の前後で急性高炭酸ガス血症によるストレスを与え、そのプレコンディショニング効果およびポストコンディショニング効果が心筋虚血再灌流傷害の一型である気絶心筋の回復に与える影響をブタの急性装置埋め込みモデルを用いて検討した。実験1 高炭酸ガス血症が気絶心筋の回復に与える影響実験群は(1)虚血前高炭酸ガス血症群、(2)再灌流時高炭酸ガス血症群、(3)虚血前後高炭酸ガス血症群、(12)対照群の4 群で、それぞれ7頭のブタを用いて検討した。高炭酸ガス血症はPaCO2 70 mmHg の二酸化炭素負荷で作製した。心筋虚血は内頚動脈から冠動脈へのバイパス回路を12 分間遮断して作製した。再灌流後90 分間観察した。ベースライン、虚血前、再灌流直前の動脈圧、心拍数、心拍出量、左前下行枝血流量、左室拡張終期圧、左室内圧上昇速度、体血管抵抗、冠血管抵抗、心筋局所短縮率、インターロイキンに、群間で有意差はなかった。再灌流90分の動脈圧、心拍出量、左室内圧上昇速度、心筋局所短縮率は、実験群(12)と比較して実験群(1)、(2)、(3)で有意に高く、インターロイキンは実験群(12)と比較して実験群(1)、(2)、(3)で低い傾向にあった。急性高炭酸ガス血症のプレコンディショニング効果およびポストコンディショニング効果により、気絶心筋の回復が促進された。この心筋保護効果におけるインターロイキンの関与は現時点では判定できないが、今後、実験個体数が増えることで、明らかになると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験施設の改修工事により、実験できない期間があったため、当初予定の40例の検討ができず、28例となってしまった。しかし、高炭酸ガス血症が気絶心筋の回復に与える保護効果を示すことができ、今後も実験の方向性を修正することなく、計画書にしたがって研究を進めることができる。インターロイキンの関与についても、有意差はないものの、傾向をつかむに至っており、問題はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も計画書にしたがって研究を進める。実験群(1)、(2)、(3)、(12)の不足分を実施した後に、ミトコンドリアアデノシン三リン酸感受性カリウムチャネルの関与を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画書のとおり、カテーテル・プローブ、実験用動物、一般試薬等の消耗品の購入、また研究成果を学会発表するための旅費が必要である。
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