2011 Fiscal Year Research-status Report
脂肪乳剤による局所麻酔薬中毒治療メカニズムの解明-脳内薬物動態の観点から
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23592261
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小田 裕 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 登録医 (70214145)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 局所麻酔薬 / 脂肪乳剤 / ブピバカイン / 脳波 / 中枢神経毒性 |
Research Abstract |
局所麻酔薬の定量に関して、以下に示す実験結果の再確認を行なった。ラットに対して脂肪乳剤 (20% Intralipid) を3 ml/kg/min で5分間投与後にブピバカインを投与した。動脈血を採取し、通常速度 (3,000 rpm) で10分間遠心したところ、脂肪と血漿が同一層内で分離せず、ブピバカイン濃度の定量が困難であることが判明した。次に脂肪の除去のため、同ラットより得られた全血0.1 mlにブピバカインを加えた上で2段階の抽出を試みた。炭酸ナトリウム (1 mol/l) によりアルカリ化を行い、酢酸エチルを加えて撹拌・遠心した。上層 (有機層) を採取し、硫酸を入れた試験管に移して撹拌・遠心し、有機層から再度水層への抽出を行なった。その後上層 (有機層) を除き、残った層に水酸化ナトリウムを加え、減圧下で蒸発乾固した。得られた固体を高速液体クロマトグラフ-質量分析装置用移動相 (5 mM 炭酸アンモニウム (pH 5.0) とアセトニトリルを容量比1:1で混合) に溶解したところ、脂肪が完全に除去されていないことが判明した。そこで脂肪乳剤を含んだ血液を、高速遠心装置を用いて15,000 x gで10分間遠心を行なったところ脂肪層と血漿が分離され、上述の方法でブピバカインを抽出した結果脂肪を含まず、定量が可能であった。高速液体クロマトグラフ-質量分析装置により、リドカインと同様の分析条件で定量が可能で、さらに本法はヒト血漿に対しても応用が可能であることが判明した。ラットを用いた以下のin vivo の実験結果を再検した。定位脳固定装置を用いてラット脳内に留置した電極で脳波を測定したところ、ブピバカインの持続投与により徐波化が生じ、その後痙攣波が出現した。以上の結果について学会発表予定であるとともに、今年度中に論文の投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高速液体クロマトグラフ-質量分析装置を用いた、ブピバカイン、レボブピバカインの定量方法がほぼ確立し、全血、血漿ともほぼ同じ方法で定量できることが明らかになった。またこれらの方法は脂肪乳剤を含んだ血液に対しても応用が可能であるため、今後の定量に有用であると考えられる。臨床症例において局所麻酔薬中毒の治療目的で脂肪乳剤を用いる場合は、ラットに比べて体重あたりの投与量がはるかに少いため血液中の脂肪の含量が少なく、ほぼ同じ方法を用いた定量が可能であると考えられる。実際に局所麻酔薬の投与後に興奮・筋攣縮といった中毒症状を生じた症例に対して脂肪乳剤を投与して血漿中のロピバカインの濃度を測定したところ、とくに蛋白非結合分画の濃度が急速に低下し、lipid rescue の効果が発現することが明らかになり、症例報告として発表した (Mizutani K, Oda Y, et al. J Anesth 2011: 25: 442-445)。覚醒状態のラットを用いた研究では、脂肪乳剤 (20% Intralipid) を3 ml/kg/min で5分間投与すると、ブピバカイン、レボブピバカインによる痙攣や心停止を生ずる際の総血中濃度(蛋白結合分画と非結合分画の和)が上昇することが明らかになった。なお中枢神経毒性の発現には血液ガスや血液pHが大きな影響を及ぼすため、脂肪乳剤の効果を検討するには血液ガス、特に二酸化炭素分圧を一定に保つことが必要である。血液ガスデータを再検討したところ、脂肪乳剤の投与後も呼吸・循環データは投与前とほとんど変化が無いことが明らかになった。これらの結果から、設定条件を用いて中枢神経系に対する局所麻酔薬や脂肪乳剤の効果を適切に検討することが可能であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験動物として従来同様、8-9週齢のSprague-Dawley系雄ラットを用いる。実験数日前にケタミン麻酔下で定位脳固定装置に固定し、側座核 (nucleus accumbens) に双極貼合せ電極(ユニークメディカル)を留置、歯科用セメントで固定の後に覚醒させる。実験当日、セボフルラン麻酔下で頸動静脈および大腿静脈にカテーテルを留置した後に覚醒させ、ポリコーダを用いて血圧・心拍数の持続測定を行う。循環動態が安定し、血液ガスが正常範囲にあることを確認後にPower Lab (AD instrumentsジャパン) を用いて脳波測定を開始する。血液ガスの測定は、I-stat(扶桑薬品)を用いて行う。生食または脂肪乳剤(Intralipid, フレゼニウス・カービ)を3 ml/kg/minで5分間投与する。投与終了後、ブピバカイン、レボブピバカインまたはロピバカインを0.1 mg/kg/minで10分間投与し、その後5 - 360分後迄経時的に0.5 mlずつ採血を行い、うちの 0.1 ml を用いて全血中の局所麻酔薬の濃度を求める。残りの0.4 ml は遠心分離の後、血漿を凍結保存し、血漿中の局所麻酔薬の濃度を求める。採血に伴う循環動態の変動を避けるために別のラットから採血を行い、採血量と同量の輸血を行う。脳波はコンピューター内にデジタル保存し、解析は専用ソフトウェアー (BIMUTAS II、キッセイコムテック) を用いてoff-line で行う。脂肪乳剤の有無での局所麻酔薬の血中濃度の変化および脳波の変化を求める。次に局所麻酔薬の投与速度を0.5 mg/kg/min とし、脳波上での痙攣や徐脈が生じた時点で採血および脳・心臓を摘出し、各々における局所麻酔薬の濃度を求め、脂肪乳剤による中枢神経毒性・心毒性誘発閾値の変化を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費に次年度使用額が生じた理由として、当初購入予定であった脳波のデジタル変換-解析ソフトウェアー (Vital Recorder, キッセイコムテック) について、従来使用してきたソフトウェアーを継続使用できる可能性が高いため購入を見合わせたことが挙げられる。また従来から局所麻酔薬の定量に使用してきた、共同研究室に設置の高速液体クロマトグラフ-質量分析装置 (Agilent systems, 4000 QTRAP, ABSciex) について、検体の分離に用いる高速液体クロマトグラフがより低流量の装置 (micropump) に入れ替えられたため、今後蛋白非結合分画や組織内濃度の変化などを検討するに際し、現在用いている移動相の流量 (0.2 ml/min) や分離用カラム (ODS-120Z, Toso) では困難を生ずる可能性がある。その場合、高速液体クロマトグラフの条件の変更のみで測定出来る場合は現有の機器で問題無いが、測定が困難な場合は新たに備品として、従来の実験方法に適合する高速液体クロマトグラフを購入する必要が生ずる可能性がある。また薬物動態を解析し、半減期やクリアランス、分布容量等のパラメータ-を求める際には、基本的な線形モデルについては汎用のソフトウェアーで解析可能であるが、持続静注途中および投与終了後の血中濃度の変化を併せて解析するには、より高性能なソフトウェアー (WinNonlin, Pharsight等) を備品として購入する必要が生ずる可能性がある。その他の購入予定物品として、実験動物や薬剤に加え、脳波測定用脳内電極 (ユニークメディカル社製)、血液ガス測定用消耗品 (i-stat analyzer, EC8+, 扶桑薬品) が挙げられる。
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Research Products
(25 results)