2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592276
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 伸子 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80332609)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脂質 / 神経科学 / 疼痛学 |
Research Abstract |
生体内で刺激により瞬時に産生される生理活性脂質の中でも強力な白血球活性化作用を持つロイコトリエンB4(LTB4)とその高親和性受容体BLT1が、急性痛に対してどのように関与しているのか、BLT1遺伝子欠損マウスとその野生型マウスを用いて研究を進めた。 ホルマリン及びカプサイシン足底注入による急性痛モデルでの行動解析により、BLT1遺伝子欠損マウスは野生型と比較して有意に疼痛行動が減弱していたことから、急性痛での脊髄内反応分子にどのような変化があるかを免疫染色により解析した。ホルマリン注入15分及び60分後に麻酔下にパラホルムアルデヒドによる灌流固定を行い、脊髄を取り出し、凍結切片を作成した。急性期反応分子として、cFos、 pCAMK(リン酸化カルシウムカルモジュリンキナーゼ)、 pCREB(リン酸化cAMP応答配列結合タンパク)についてそれぞれの特異的抗体を用いて、免疫染色を行った。cFos pCAMK pCREBともに、ホルマリン足底注入後の脊髄後角にて陽性シグナルが増加していた。中でも、pCREB陽性シグナルは野生型と比較しBLT1遺伝子欠損マウス脊髄にて増強作用が減弱していた。カプサイシン足底注入にても同様に、腰部脊髄後角におけるpCREB陽性シグナルの増加作用が、野生型と比較しBLT1遺伝子欠損マウスにて減弱しており、LTB4-BLT1シグナルが脊髄において急性期反応分子に影響していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
急性痛における脊髄の免疫学的解析は進行しているが、損傷部位及び脊髄における脂質メデイエーターの同定と定量についての解析が、網羅的解析が可能である最新の質量分析施設が混んでいるため未施行である。
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Strategy for Future Research Activity |
損傷部位、脊髄神経におけるLTB4の定量をすすめ、さらに他の脂質メデイエーターについても急性痛及び神経因性疼痛について同定と定量を質量分析により進める。LTB4による白血球活性化にともない増加するサイトカインについても、様々な病態形成に関与していることがわかっている。痛覚過敏状態の病態形成についてもLTB4-BLT1シグナルと各種サイトカインの動態が関わっているかについて、RT-PCRやELISAを用いて解析を進める。これまでの成果を国内外の学会にて発表し、論文投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、免疫染色、Western blot、ELISA、RT-PCRのための試薬の購入と、スライドグラス等の消耗品の購入に使用する。
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