2011 Fiscal Year Research-status Report
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23592279
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高松 美砂子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (80432087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生駒 美穂 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30432082)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / ケタミン / 脊髄後角 |
Research Abstract |
神経障害性疼痛にケタミン少量投与が劇的な効果を示す機序を明らかにするために、神経障害性疼痛モデルラット脊髄スライスを用いた電気生理学的実験を行った。 今年度は、吸入麻酔下に脛骨神経と総腓骨神経を結紮し遠位端で切断した坐骨神経部分損傷モデルラットを作製し、その後根付き横断脊髄スライス標本の後角II層ニューロンからパッチクランプ記録を行った。スライス標本の後根を電気刺激すると、記録細胞には刺激誘起の興奮性シナプス後電流(e-EPSC)が観察された。刺激強度によって非侵害情報を伝えるAβ線維と侵害情報を伝えるAδ、C線維を刺激し分けたところ、神経障害性疼痛モデルラットではAδ線維を介して誘起される多シナプス性応答がほとんどの記録細胞で観察され、発現率は正常ラットより有意に増加していた。このことは、神経障害性モデルラット脊髄において、可塑性変化が生じたことを示す重要な所見であると考える。 さらに、このAδ線維誘起の多シナプス性EPSC波形はケタミン投与およびNMDA受容体阻害薬APV投与により振幅・面積ともに可逆的に抑制された。正常ラット脊髄におけるAδ線維誘起の多シナプス性EPSC波形でもケタミンおよびAPV投与により振幅・面積ともに抑制されたが、抑制率は神経障害性ラット脊髄で有意に高かった。 つまり、神経障害性モデルラット脊髄後角では痛覚伝達においてNMDA受容体がより大きく関与していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は当初予定の神経障害性モデルラット作製、パッチクランプ記録、正常ラットとの比較検討について概ね予定通り達成できたと考えるが、それと並行して24年度に向けて準備していたin vivo パッチクランプ記録のための記録装置のセットアップが難航しており、今後の遅れが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
神経障害性疼痛モデルラットでは、脊髄後角II層ニューロンでのシナプス応答が正常ラットとは異なり、NMDA受容体の関与が増大していることが明らかとなった。 今後は、in vivo脊髄標本を用いて、下降性抑制系が保たれた状態で、触刺激や痛み刺激を与えた場合の脊髄後角ニューロンでのシナプス応答と、ケタミンの静脈投与が脊髄後角ニューロンでのシナプス応答に与える影響について、正常ラットと神経障害性モデルラットで比較・検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度にpCLAMPの買い替えを予定していたが、in vivoパッチクランプ記録に必要な機材のいくつかが調子が悪く買い替えが必要である可能性がでてきたため、24年度に繰り越してそれらの機材を購入することを検討している。マイクロマニピュレーターやパッチクランプ用増幅器(AxonInstruments, Axopatch200)などが候補に挙がっている。
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