2011 Fiscal Year Research-status Report
心筋虚血再灌流障害に対して高用量インスリン投与は有効か
Project/Area Number |
23592280
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
佐藤 宏明 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (20402026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小口 健史 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60201399)
松川 隆 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (80209519)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Insulin / preconditioning effect / rat heart / ischemia |
Research Abstract |
1. 高用量インスリン負荷実験の実施:高容量インスリン投与群(GIN群)のラット8匹に心臓摘出前にインスリンの持続投与(50mU/kg/min)を2時間行った。低血糖を防ぐため50%グルコースの持続投与を行い、血糖測定値から糖負荷を調節し正常血糖に保った。対照群(Control群)は生理食塩水を持続投与した(8匹)。2. 摘出心臓標本の作成:心臓灌流用システムを用いて、ラットから摘出した心臓(16匹分)にカニュレーションを行い、Langendorff 法により灌流した。3. 心機能測定・冠流量測定:肺静脈からバルーンカテーテルを左心室内へ挿入して左心室圧(LVP)を測定し、LVPから左室dP/dt maxを求めて、心収縮能の指標とした。肺動脈から流出する冠流液(coronary effluent)を経時的に採取した。4. 虚血再灌流実験:上記のラット摘出心臓標本において、Non-flow ischemia(虚血15分・ペーシング222bpm→再灌流30分)による虚血再灌流実験を行い、対照群とインスリン群の間で、心機能の回復について検討した。5. 実験結果:2群間で、心拍数、冠流量では差が無かった。心収縮能の指標である左室dP/dt max は対照群と比較して高用量インスリン群にて高値であった(GIN:3440±536 vs. Control:2333±985, p=0.05)。再灌流後の心室細動持続時間(秒)もインスリン群にて短かった (GIN 85±60 vs Control 240±146, p=0.04).6. 実験結果発表:アメリカ麻酔学会(ASA2011.Chicago) にて今回の結果をポスター発表した。(Abstract Number:A1490)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、心筋虚血再灌流障害に対する高用量インスリンの保護効果の検討は主に以下の構成になっている。Step1.高用量インスリン負荷後、虚血再灌流実験を行い心機能、冠流量測定を行う。また摘出心臓標本の作成も行う。Step2. スーパーオキサイド・心筋代謝物質測定。サイトカイン産生量の測定。現在までの段階でStep1の虚血再灌流実験、心機能、冠流量測定、摘出心臓標本の作成がラット16匹にて行われている。またこの結果はアメリカ麻酔学会(ASA2011.Chicago)に採択され発表を行うことが出来たこともあり初年度としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
目的:高用量インスリンの心筋保護効果の作用機序を解明する。1.初年度と同様に、Langendorff 法によるラット摘出心臓標本を作成する。この摘出心臓標本において、心機能指標の測定と、肺動脈から流出する冠流液(coronary effluent)の経時的採取を行う。また、灌流終了時に心臓を瞬間凍結して、心筋内TNF-α量もRat-ELISA Kitを用いて測定する。2.スーパーオキサイドがサリチル酸と反応してDHBAになることを利用して、液体クロマトグラフィーを用いてDHBAを測定し、スーパーオキサイドの発生量を測定する。3.Coronary effluent中のサイトカイン(TNF-α・IL-1・IL-6)濃度を Rat-ELISA Kitを用いて測定する。4.上記の実験系において、外部から投与したTNF-αの心抑制作用を高用量インスリンが保護できるか、抗TNF-α抗体・TNF-αレセプター阻害薬によって高用量インスリンの効果やスーパーオキサイドの発生量が変化するかを検討する。これらの結果から、高用量インスリンの作用機序が、TNF-α産生抑制によるのか、TNF-α自体への作用も関わっているのか解明する。また、高用量インスリンのスーパーオキサイドへの作用が、直接作用なのか、TNF-αを介するものなのかについても解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度、ラットの心臓を迅速に摘出し、大動脈、肺動脈にカニュレーションをするLangendorff 法による摘出心臓灌流標本の作成にあたり、一定の熟練した技術が必要であるため、安定したモデルを供給可能にするまでの期間が想定以上にかかり測定項目の物品購入が遅れ繰越金が生じた。次年度は、Rat ELISA Kitに関しては、測定値の信頼度を上げるために各検体をトリプルで測定する計画で、TNF-α・IL-1・IL-6の各項目で、4プレート(96 well/プレート)を購入する。またRat-TNF-αと抗TNF-α抗体は、各5μgx3本が必要であり購入する。液体クロマトグラフィー用カラムは、DHBAを測定するために3本購入する。過去の摘出心臓標本を用いた研究の経験から、その他の消耗品費として、実験動物・灌流用薬剤・測定用薬剤・記録用紙・ピペットチップを該当分購入する。また実験結果からのデータ分析のためのパソコン、統計ソフトも購入する。
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Research Products
(1 results)