2011 Fiscal Year Research-status Report
非侵襲的脳内グルタミン酸、GABA測定による痛みの脳機能評価法の確立
Project/Area Number |
23592284
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
福井 聖 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80303783)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | MR Spectroscopy / 前帯状回 / NAA / GABA / Glutamate / 慢性痛 / VBM / 局所脳神経機能 |
Research Abstract |
難治性の慢性疼痛患者(脊椎手術後腰痛、脊椎手術後頸部痛、慢性腰痛、CRPS2、幻肢痛1)を対象に、前帯状回におけるグルタミン酸(Glu)濃度、GABA濃度およびNAA濃度を3T MR装置を用いて測定し、健常人(N=27)と比較した。T2強調画像上で前帯状回の領域を決定し、磁気共鳴スペクトルをLC model、Mega‐Press法を用いて解析した。 1:慢性疼痛患者では、 健常人と比較して前帯状回において、 左右平均NAA(N-アスパラギン産)濃度 (NAA:正常神経の密度、神経機能の指標)は、有意に低下していた。 2:前帯状回領域において3T MRI装置を 用いることで、1.5T装置では測定不可能な、 グルタミン酸濃度、GABA濃度の測定が可能 になった。健常被験者(N=27)において、いずれの濃度も年齢や 性別に関わらず、ほぼ一定の値であった。3:難治性の慢性疼痛患者では、健常群と比較して、有意にGABA濃度及びNAA濃度が低下していた。一方、グルタミン酸濃度は両者間において有意差がなかった。 慢性疼痛患者では、健常群と比較して、有意にGABA濃度及びNAA濃度が低下していたことから、慢性疼痛では、前帯状回における抑制系の神経機能低下が病態の成立や遷延化に関与する可能性があると考えられる。MRSは、患者にタスクをかけることなく、脳内の神経伝達物質濃度を測定できるので、慢性の痛みの客観的な評価法として臨床応用できる可能性が示唆された。 また治療前後で測定すれば、治療成果を判定できる評価法にさらに発展していく可能性があると考えられる。 MRS 測定時に、同時にVBM(voxel-based morphometry)で前帯状回、島、視床、海馬、扁桃体、海馬傍回、等の局所脳の委縮状態を測定できるように設定した。今後は両者の結果を合わせて評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前帯状回領域において3T MRI装置を 用いることで、1.5T装置では測定不可能な、グルタミン酸濃度、GABA濃度の測定が可能 になった。慢性疼痛患者では、健常群と比較して、有意にGABA濃度及びNAA濃度が低下していたことから、慢性疼痛では、前帯状回における抑制系の神経機能低下が病態の成立や遷延化に関与する可能性があると考えられる。 得られた結果は動物実験の先行結果と一致しており、MRSは、実際の臨床現場で患者にタスクをかけることなく、脳内の神経伝達物質濃度を測定できるので、慢性の痛みの客観的な評価法として臨床応用できる可能性があると考えられた。 また治療前後で測定すれば、治療成果を判定できる評価法にさらに発展していく可能性があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、精神科的治療、心療内科的治療を必要とする慢性疼痛患者群で、局所脳神経機能の評価、興奮性、抑制系ニューロンの機能評価を行う。治療に伴う興奮性、抑制系ニューロンの機能変化、局所脳神経機能変化の変化について評価する。痛みが軽減しないものに比較して痛みが緩和する患者では、痛みが正常化するに伴い、前帯状回の興奮性、抑制系ニューロンの機能、局所脳神経機能の指標がどのように変化するか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の成果を国際学会に発表し、国際雑誌に投稿するための経費に使用していく。また前年度同様の研究をすすめていくために、MRI、MR医学、統計学に精通した研究補助者に研究補助してもらいながら、研究をすすめていくための謝金に使用していく。VBM(voxel-based morphometry)で前帯状回、島、視床、海馬、扁桃体、海馬傍回、等の脳全体の局所脳の委縮状態を測定できるように設定したので、解析ソフト、コンピューターが必要になれば購入して、今後は両者の結果を合わせて評価していく予定である。
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