2012 Fiscal Year Research-status Report
心筋虚血再灌流時のプログラム細胞死モニタリングと麻酔薬による制御
Project/Area Number |
23592285
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
山崎 登自 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20116122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (50252391)
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Keywords | マイクロダイアリシス / アポトーシス / 虚血再灌流傷害 / ミオグロビン |
Research Abstract |
研究開始2年目の本年も昨年と同様に冠動脈閉塞開放時に生じるアポトーシスのマーカーがマイクロダイアリシス法で測定できるかどうか確かめた。ラットの拍動下左室心筋にマイクロダイアリシスファイバーを植え込み、一方よりリンゲル液を灌流し他方より透析液をサンプリングした。冠動脈閉塞開放時の心筋透析液のヌクレオソームとチトクロームC濃度の測定を行った。さらに同様のプロトコールを用いてオンコ-シスのマーカーであるミオグロビン・トロポニン・CK-MB・ AST濃度も測定した。透析液ヌクレオソーム、チトクロームC濃度は実測できず、その理由として透析液への回収率が低いか、あるいは測定感度が低いことが考えられた。そこでリンゲル液の灌流速度を遅くし、ダイアリシスファイバーを延長して再測定しているところである。また、我々が以前より行なっていた30分の冠動脈閉塞と60分間の開放による虚血再灌流に伴うオンコ-シス誘導法をアポトーシス誘導に使用したが、誘導強度が不十分である可能性もある。我々は灌流速度、ファイバー延長で実測できなかった際には、さらに冠動脈閉塞時間を段階的に延長して実測可能となるまで繰り返す予定である。一方、オンコ-シスのマーカーであるミオグロビン・トロポニン・CK-MB・ ASTの透析液濃度は冠動脈閉塞開放により上昇が認められた。とくに透析液ミオグロビン濃度は冠動脈閉塞開始直後より上昇し、その後の開放によりさらに急峻に上昇した後に漸減した。この応答は他のマーカーよりも鋭敏であることから、本研究におけるオンコ-シスの指標となりうることが判明した。現在はアポトーシスを誘導するサイトカインや薬剤によるオンコーシスへの影響を透析液ミオグロビンの測定により検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初より2年間かけて、アポトーシスのマーカーであるヌクレオソームとチトクロームCの心筋透析液濃度測定を可能にすることを目指している。この点をクリアするのに時間がかかるのは織り込み済みである。現時点ではマーカーの産生量が少ないか、透析液の回収率が低いか、あるいは測定感度が低いかのいずれかで実測できていない。そのため灌流速度を遅くすること、ダイアリシスファイバーを延長することで回収率を上昇させ、さらに虚血時間を長くすることで実測可能となるよう取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年と同様に虚血再灌流傷害強度およびヌクレオソームとチトクロームCの最大発現時間に合わせたサンプリングや透析液の回収率を変化させることで安定して測定できる方法を確立する。また、同時に虚血再灌流時のオンコーシスの指標である透析液ミオグロビン濃度応答を測定して、アポトーシス濃度応答と比較観察する予定である。まずは次年度もヌクレオソーム・チトクロームC をマイクロダイアリシス法で検出することを試みる。具体的には透析液中の濃度を高めるため、灌流速度を1, 2, 5μl/minに変化させてその濃度応答を調べる(灌流速度を遅くすれば回収率は上がるが、時間分解能が下がるため、どの程度にすればよいか決定する必要がある)。その後、冠動脈閉塞時の心筋ヌクレオソーム・チトクロームC濃度応答と組織切片をTUNEL法により測定し、その応答をマイクロダイアリシス法と比較する。また、ラット心筋にマイクロダイアリシス法を適応し、サイトカイン(TNFα 、IL8)薬剤(シスプラチン、アドリアマイシン) を用いてアポトーシスを強く誘導し、血清および心筋間質ヌクレオソーム、チトクロームC 濃度応答を測定する。可能であればその容量作用曲線を得る。また、上記アポトーシスの検討と並行してオンコーシスも測定する。特にアポトーシス誘導に用いた条件に合わせた心筋間質ミオグロビン、トロポニンTを測定して、オンコーシス、アポトーシスの経時的変化を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画は現有設備で概ね遂行出来る。また、次年度の計画は基本的には前年度の方法の繰り返しのなかで、工夫して測定可能なレベルまで引き上げることを予定しているため、既存のマイクロダイアリシスシステムをそのまま使用出来る。そのため経費の主たる配分は実験動物、実験の試薬など消耗品の購入に割り当てるが、ヌクレオソーム、チトクロームCの測定キットが高額のため、それ以外の経費は出来る限り切り詰めて、実験を進める予定である。
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