2012 Fiscal Year Research-status Report
脊髄における5HTレセプターの疼痛修飾機能の役割を明らかにする
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23592289
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
二階 哲朗 島根大学, 医学部, 講師 (20314643)
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Keywords | 5HT1 / 癌性疼痛 / 脊髄 / スマトリプタン / 侵害受容 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き5HT1レセプターのサブタイプである1B・1D・1Fの脊髄における抗侵害受容にかかわる役割をマウスを用いたホルマリンテストにおける動物行動学実験において解明した。臨床使用されている1B・1D・1Fのアゴニストであるスマトリプタンのくも膜下投与により発揮される抗侵害受容作用ははそれぞれのアンタゴニストにおいて部分的に拮抗されるが同時投与により完全に拮抗される。また選択的1Bアゴニスト(CGS12066)の抗侵害受容作用は選択的1Bアンタゴニスト(SB224289)には拮抗されるが選択的1Dアンタゴニスト(BRL15572)では拮抗されない。選択的1Dアゴニスト(PNU142633)の抗侵害受容作用もまた1Dアンタゴニストでは拮抗されるが1Bアンタゴニストでは拮抗されなかった。また選択的1Fアゴニスと(LY344864)を投与した場合も容量依存性に抗侵害受容作用を発揮される。またこれらの1B・1D・1Fのアゴニストを同時投与した場合はそれら単独より抗侵害受容作用は増強した。これらの結果を2012年8月にイタリア・ミラノで開催された国際疼痛学会において成果を発表し、現在論文投稿を行っている。また現在はスマトリプタンの片頭痛以外の臨床使用拡大にむけて実験を行うため、骨癌性モデルを作成しその疼痛関連の動物行動を詳細に検討している。マウスの大腿骨に骨肉腫の細胞を注入し癌性モデルを作成した。これらのモデル作成後2週間目より von Freyフィラメントを用いた機械刺激によるアロディニアの確認および自発痛(flinching, weight bearing distribution test)また情動に与える影響としてopen field testを実施した。またモルヒネをこれらのモデル、行動学実験において使用し疼痛行動に改善することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた術後痛モデルのスマトリプタンの効果を見る実験ややシナプス前後での効果を見る実験の進行が遅れている。しかし上記に述べたよう癌性モデルの作成および詳細な動物行動学の検討を行うこともでできたため、他のモデルを用いたスマトリプタンの薬剤効果を見る準備は十分できていると考える。臨床において癌性疼痛のコントロールは予後およびADLの改善のためには大変重要であるが、オピオイドのみを使用したコントロールは副作用の問題からも十分とは言えない。補助鎮痛として他の薬剤の効果を見ることは大変興味深いと考える。その候補としてスマトリプタンをあげ、単独の効果または相乗効果を見ていく予定である。すでにモルヒネ全身投与について癌性疼痛モデルにおける効果を確認したため、スマトリプタン単独の効果・またモルヒネと混合投与することでの増強効果など確認することはできると考えている。また術後疼痛モデルについては足切開モデルを作成しスマトリプタンのモノフィラメントを用いた機械刺激におけるアロディニアの効果を確認する実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはこれまでの薬理学的実験により明らかとした5HT1レセプターのサブタイプの抗侵害受容作用について論文投稿を行う。 また上記に述べたよう癌性疼痛モデルにおける5HT1レセプターの役割、特に臨床使用可能なスマトリプタンの効果について実験を進める。この中で単に抗侵害受容作用を調査するだけでなく、疼痛関連行動に着目し自発痛・不安などの情動・また行動力についての効果を詳細に調査する予定である。単独の効果を確認したのちはモルヒネとのコンビネーションにて薬剤の効果増強の有無を調査する。また術後痛モデル(皮膚切開モデル)を作成し癌性疼痛同様、詳細に行動解析を行いスマトリプタンの効果を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度には成果発表として466303円、実験諸費用として239730円計上し使用した。総額706033円使用し、今年度予算600000円を超えた。2011年度の予算の残高があるため今年度は計画的に使用する予定である。2013年度の研究費の使用については主にマウスの購入・管理費用・薬剤の購入にあてる予定(600000円)である。行動学の評価における自動計測のソフトを購入する予定(100000円)である。また2013年10月に開かれる米国麻酔学会(米国サンフランシスコ)に癌性疼痛モデルにおける詳細な疼痛関連行動についての成果(300000円)を発表する予定である。その旅費について予算を計上する。その他2012年度に終了した薬理学実験の結果を投稿するため論文校正・統計ソフトなどの予算に本研究費(100000円)を使用する予定となっている。
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Research Products
(3 results)