2013 Fiscal Year Research-status Report
脊髄における5HTレセプターの疼痛修飾機能の役割を明らかにする
Project/Area Number |
23592289
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
二階 哲朗 島根大学, 医学部, 准教授 (20314643)
|
Keywords | 5HT / 癌性疼痛 / スマトリプタン / モルヒネ / 脊髄鎮痛 / 疼痛関連行動 / 自発痛 |
Research Abstract |
5HT1B/1Dアゴニストであるスマトリプタンを癌性疼痛モデル、および皮膚切開モデルに用いた。スマトリプタンは炎症モデルにおいて効果のあった0,06および0.6μgのくも膜下投与を行った。生食群と比較しモノフィラメントによる機械的閾値には変化なくアロディニアの抑制を認めなかった。癌性モデルにおいては骨肉腫細胞を大腿骨に移植し痛みを誘発した。本実験ではモノフィラメントや熱など誘発閾値の変化を見る以外に、侵害刺激だけでなく疼痛行動の評価を行った。自発痛の評価としてflinching、下肢にかかる体重差の測定(weight distribution test),また疼痛関連行動としてopen field test,明暗試験により不安行動、行動量の変化、またwheelに乗せ運動量の測定を行った。スマトリプタンの効果を見るための対象に、明らかに効果のあると予想されるモルヒネ1,3,10mg/kgの全身投与を行った。癌性疼痛モデル作成2週間後、モノフィラメントによる機械的閾値の低下、下肢のflinching, 体重差に有意な変化をもたらした。またopen field test では不安行動の増加、行動量の減少を認めた。wheel試験においては運動量は低下した。一方モルヒネはモノフィラメントによる機械閾値に有意に改善を認めた以外に、運動量や行動量の改善を認めたが、自発痛や体重差、不安行動などの自発行動には変化はなかった。これらの成果については2013年サンフランシスコで開催された米国麻酔学会にて発表を行った。スマトリプタンに関しては機械的閾値とflinchingの試験を行ったが有意な変化はなかった。現在他の試験についても進行している。またスマトリプタンがシナプス後の機序を介さないことを確認するため、スマトリプタン投与後NMDAを脊髄に注入し、疼痛行動を観察したが効果は認めなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スマトリプタンの癌性疼痛における効果を見る試験が遅れている。現在、我々は疼痛モデルにおける、鎮痛剤の効果の見直しを行っている。疼痛モデルには炎症や神経障害性疼痛、そしてその複合の機序が加わる、術後痛モデルや癌性疼痛モデルなど多岐にわたる。 今年度さまざまな角度から疼痛行動の観察を行い、マウスにおいても機械的刺激や熱刺激など誘発による侵害受容作用を認めるだけでなく、自発痛や情動や運動量、行動力など疼痛関連行動に変化を認めることを明らかにした。モルヒネを用いた実験では、予想と反してすべての動物行動に変化を認めるわけではないことも明らかになった。これらのことは鎮痛剤の評価は薬剤の特性が捉えれるように実験を慎重に進めていく必要性が示唆され、スマトリプタンに関してはまた一部の実験しか終了することができず、実験の進行としては遅れていると判断した。スマトリプタンはセロトニン受容体のアゴニストであり本来片頭痛に効果を認めることより、抗侵害受容作用として機械的閾値などに変化を認めるのではなく、自発痛行動や不安など情動を含めて、疼痛関連行動に効果がないか期待している。未だ、癌性疼痛は難治性でコントロールの難しい痛みの一つである。モルヒネなどオピオイドは臨床で広く使用されているが、副作用の面からもそれに代わるまたは、効果的な補助鎮痛剤の使用が望まれる。当初計画したように、オピオイドとスマトリプタンの相乗効果または相加作用を見る実験も必要であるが、現在そこまで到達できていないのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記に述べたよう、詳細な動物行動学実験を継続していく予定である。現在基礎実験においては薬剤の効果は熱や機械刺激などの閾値を見る実験が主流となっているが、実際それだけでは疼痛の評価、鎮痛の評価は十分でないと考えている。臨床同様、動物基礎実験においても鎮痛剤の評価は多方面から行うべきと考え実験を進行していく予定である。そのため、モルヒネだけでなくスマトリプタンをはじめ、他の鎮痛剤やその候補となる薬剤についても自発痛や不安情動などの変化、行動量や運動量の変化など多岐にわたり評価を行う予定である。実験にバイアスがかからないよう自動測定機器を用いた実験手法を取りえ入れていく予定である。このように動物基礎実験において、疼痛行動を詳細に評価することは、臨床においてもどのような状況において鎮痛剤が効果を発揮できるかどうかにつながり臨床的価値も高くなるものと考える。現在我々は疼痛に関する情動や認知機能についても注目しており、その実験も行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
癌性疼痛モデルにおけるスマトリプタンの実験が完成していないため実験を継続する。 また動物実験における疼痛モデルにおける総合的な痛み評価が可能かどうか、他の薬剤も用い評価を継続する予定である。 動物実験のためのマウス購入やマウス飼育にかかる費用にあてる予定。 残金は6月に開催される疼痛学会に参加するための費用にあてる。
|
Research Products
(1 results)