2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592296
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
外 須美夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60150447)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 忠和 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10163891)
山浦 健 九州大学, 大学病院, 講師 (70264041)
塩川 浩輝 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30572490)
大庭 由宇吾 九州大学, 大学病院, 助教 (30567368)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 和温療法 / 慢性疼痛 / 神経障害性疼痛 / 複合性局所疼痛症候群 |
Research Abstract |
本研究は、和温療法の疼痛治療における効果を検討するものである。疼痛の中でも難治性といわれる神経障害性疼痛の患者を対象にしている。これまで神経障害性疼痛に対しては、様々な治療が行われているが、効果も一定でなく、依然として治療法は確立されていない。一方、和温療法は、分担研究者(鹿児島大学循環器内科教授、鄭忠和氏)が開発した治療法であり、治療抵抗性の難治性疾患でその有効性が多数報告されている。 まず、初年度である今年度は、当施設ペインクリニックに「和温療法器」を装備し、装置の安全性の確認と操作への習熟を行った。研究を遂行するに際し、和温療法の正しい実施法を学ぶため、実施前に研究代表者と研究協力者が鹿児島大学病院の和温療法施設で見学と体験を行った。和温療法器は、60℃の乾式低温サウナ装置であるが、ペインクリニックの診療室1室に装備された本治療器の加温効果と諸装置の安全チェック、とくに熱刺激の安全性等のチェックを実施した。また、ボランティアによる加温体験により安全性の確認を行った。さらに、和温療法の実施に協力してもらう看護師に和温療法の手順、介助法、安全確認事項、観察項目などの教育を行った。 装置の安全性の確認と看護師への教育等が終了した後、患者への和温療法を試みた。まず、九州大学病院ペインクリニック受診患者のうち、4ヶ月以上疼痛を有し、薬物治療や神経ブロック治療などで十分な治療効果を得られない慢性疼痛患者に対して、治療法の内容を説明し、同意を得た4名に和温療法を実施した。内訳は、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群、腰痛症、外傷性神経障害性疼痛の患者であった。これまでの観察期間は最大6ヶ月であり、まだ十分な検討はできていないが、疼痛スコアーの比較では、不変2例、やや改善2例である。和温療法による副作用、有害事象は発生していない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体的な目的は、(1)「難治性の神経障害性疼痛患者に対する新しい治療法として和温療法を試み、その鎮痛効果と社会生活への復帰度を検討すること」、(2)「神経障害性疼痛のうち交感神経系が痛みの発症と維持に関与する疼痛とそれ以外の疼痛を比較し、和温療法の効果の違いを検討すること」、(3)「和温療法の効果の機序として酸化ストレスに注目し、神経障害性疼痛患者の酸化ストレス状態とそれに対する和温療法の影響を検討すること」であった。まず、初年度である今年度は、設備の整備と装置の安全性の確認と操作への習熟を行った。研究を遂行するに際し、和温療法の正しい実施法を学ぶため、鹿児島大学病院の和温療法施設で見学と体験を行う必要があった。そこで研究代表者と研究協力者が使用方法等を学習した。また、ペインクリニックの診療室1室に装備された本治療器の加温効果と諸装置の安全チェック、とくに熱刺激の安全性等のチェックを実施した。さらに、ボランティアによる加温体験を繰り返した。研究実施前に、和温療法の実施に協力してくれる看護師に和温療法の手順、介助法、安全確認事項、観察項目などの教育を行った。その後、九州大学病院ペインクリニック受診患者のうち、4ヶ月以上疼痛を有し、薬物治療や神経ブロック治療などで十分な治療効果を得られない慢性疼痛患者に対して、治療法の内容を説明し、同意を得た4名に和温療法を実施した。内訳は、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群、腰痛症、外傷性神経障害性疼痛の患者であった。現時点での本研究の達成度は、当初の計画に沿ったものではあるが、和温療法装備の設置、準備、安全性のチェック等に時間を要したため、患者への導入と情報収集に課題が残っており、今後、症例数を増やし、効果の判定と機序の解明を行っていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
九州大学病院ペインクリニック受診患者のうち、4ヶ月以上疼痛を有し、薬物治療や神経ブロック治療などで十分な治療効果を得られない神経障害性疼痛患者に対して和温療法を実施する。すべての神経障害性疼痛患者が対象となるが、とくに難治性の疾患である帯状疱疹後神経痛、虚血性ニューロパチー、糖尿病性ニューロパチー、および複合性局所疼痛症候群(CRPS)に焦点を当てて、治療効果を検討する。痛みの評価はVAS(Visual Analogue Scale)を用い、日常生活の支障度の評価、満足度評価も同時に実施する。急性期の患者を除外し、最近1ヶ月間の疼痛状況、治療状況に変化のない慢性疼痛患者を2群に分け、和温療法実施群と非実施群に分けて、和温療法の効果を検討する。 交感神経系の関与が大きい帯状疱疹後神経痛や虚血性ニューロパチーと交感神経系の関与が少ない疾患に分け和温療法の効果を比較する。 痛みの評価はVAS(Visual Analogue Scale)を用いて行う。また、慢性痛では心理的な要因が大きく関与することから、矢田部・ギルフォ-ド性格検査、Cornel Medical Index、Self-Rating Depression Scale(SDS)State Trait Anxiety Inventory(STAI)などを用いて心理的評価を実施する。また、日常生活の支障度の評価、満足度評価も同時に実施する。日常生活支障度の評価は、頭痛患者で用いられているMDIS法やHIS-6評価表を修正して用いる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、物品費と旅費および謝金に充てる予定である。次年度は、以下の実施計画に基づき、臨床研究を遂行していく予定である。次年度の研究対象は神経障害性疼痛患者であるが、とくに難治性の疾患である帯状疱疹後神経痛、虚血性ニューロパチー、糖尿病性ニューロパチー、に焦点を当てて、和温療法の治療効果を検討する。とくに、CRPSは難治性であり、患者の支障度も大きいことから、CRPS患者における和温療法の効果について検討する。 物品費としては、和温療法に付随する消耗品の購入が主である。また、旅費に関しては、和温療法関連の学会、すなわち、ペインクリニック学会、疼痛学会、東洋医学会を予定している。また、アメリカ麻酔学会で、米国や世界中での東洋医学的疼痛治療アプローチに関する議論を深めていきたい。 謝金は、患者情報の収集と解析および事務作業のための謝金を予定している。
|
Research Products
(12 results)