2012 Fiscal Year Research-status Report
新規抗酸化物質ETS-GSを用いた敗血症時の副腎不全に対する新しいアプローチ
Project/Area Number |
23592300
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
松本 重清 大分大学, 医学部, 准教授 (90274761)
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Keywords | 酸化ストレス / 敗血症 / ビタミンC / 電子スピン共鳴 / 副腎不全 / ETS-GS |
Research Abstract |
敗血症などの重症病態に生じるcritical illness related-corticosteroid insufficiency(CIRCI)のメカニズムは不明であるが、我々は本病態に過剰な酸化ストレスが関与していると推測している。本研究では、ラット敗血症モデルに対し、抗酸化物質のビタミンC(VC)や、新規ビタミンE 誘導体で強力な臓器保護効果を有するETS-GSを投与することにより、炎症反応や酸化ストレスが制御され、予後の改善につながるということを証明し、CIRCIと酸化ストレスの関係を明らかにする。我々はすでに電子スピン共鳴装置で測定したVCラジカル/DMSO(VCR/DMSO)により、リアルタイムでVCを評価する方法を確立しているが、ラットにおいてもヒトと同様に評価可能であった。またラットはヒトと異なりVCを体内で合成できるため、酸化ストレスが誘導されても、VC合成量を増やすことによって血清VC濃度は変化しない可能性も懸念されたが、過剰な酸化ストレスが誘導されるラット敗血症モデルにおいて、モデル作成後24時間で血清VCR/DMSOは著減し、過剰な酸化ストレス状態に陥っていることが確認された。 本年度はラット敗血症モデル作成後1、3、6、12、18、24時間の血清VCR/DMSOと炎症性サイトカイン(IL-6)の関係を調べたところ、VCR/DMSOはIL-6と同様に、6時間後をピークに増加し、以後、減少するということが明らかとなった。さらに、より軽度な敗血症モデルにおいては、6時間後をピークに増加した後も、高値が遷延した。すなわち、酸化ストレスに対して増加したVCによって、炎症や酸化ストレスが完全に制御された場合、VCは6時間以降も高値が遷延するが、炎症や酸化ストレスが制御できなかった場合、VCは著減するのではないかということが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究では、ラットにおいても、ヒトと同様に、電子スピン共鳴装置により短時間で測定可能な血清ビタミンCラジカル/DMSO(VCR/DMSO)と高速液体クロマトグラフィーで測定された血清ビタミンC(VC)は正の相関を示した。前年度の研究では、敗血症ラットモデルにおいて、モデル作成後24時間で血清VCR/DMSOは著減し、過剰な酸化ストレス状態に陥っていたことが確認された。 しかし、本年度の研究では、24時間後の血清VCR/DMSO値が減少しなかったり、逆に増加するモデルも認めたため、より短時間でのVCR/DMSOの変化を調べたところ、VCR/DMSOはモデル作成前よりも作成後1時間、3時間で有意に増加し、6時間でピークとなった。以後、12時間、18時間、24時間で減少傾向となったが、中には、ピークが遷延するモデルも認められた。これまでの研究では、24時間後の評価しか行っていなかったため、6時間をピークに増加する時期があるということは予想外であった。このVCR/DMSOの変化は同時に測定した炎症性サイトカイン(IL-6)の経時的変化と同様であった。ここまでの確認に時間を要したため、現在までの達成度はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化ストレスを生じる敗血症モデルの作成が安定したため、血清VCR/DMSO以外の酸化ストレスの指標(8-OHdGやmalonaldehydeなど)を測定する。同時に、視床下部-下垂体-副腎(HPA)系に関与する各種ホルモン(コルチゾール、バソプレシン、ノルエピネフリンなど)も測定し、酸化ストレスとHPA系の各種ホルモンとの関係を明らかにする。 また敗血症導入6時間後に抗酸化力もピークに達することが確認されたため、この時間の前後でETS-GSやVCを投与して各種ホルモンや酸化ストレスの指標がどのように変化するか、また各種臓器の組織学的変化や24時間生存率についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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