2012 Fiscal Year Research-status Report
mTORを介した末梢神経プロテオームの変化による疼痛発症のメカニズム解析
Project/Area Number |
23592306
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
天谷 文昌 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (60347466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐和 貞治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10206013)
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Keywords | mTOR / 痛覚過敏 / 一次知覚神経 |
Research Abstract |
本研究は、タンパク合成を調節する機能を持つmTORの機能変化が痛覚過敏の発現に果たす役割を解析することを目的としている。すでに我々は、mTORが一次知覚神経に発現し、その発現量は急性痛や慢性痛のモデル動物において増加することを明らかにした。 当該年度においては、mTORが痛覚過敏に果たす機能を解析した。mTORの阻害剤ラパマイシンを急性痛モデルの一種術後痛モデルを施したラットに投与し、痛覚過敏の程度がどのように変化するかを行動解析を用いて明らかにした。その結果、ラパマイシンを術後痛モデル作成後に投与した場合は痛覚過敏の程度は変化しないが、モデル作成前に投与した場合、痛覚過敏は減弱することが明らかとなった。すなわち、mTORは術後痛モデルにおいて痛覚過敏の成立に関与していることが明らかとなった。 次に我々は、一次知覚神経におけるmTOR発現にかかわる因子について解析した。非神経組織において、インスリン様成長因子IGFはmTORの発現量を増加させることが知られている。また我々はすでに、IGFが術後痛モデルの創組織において増加し、痛覚過敏の成立に関与していることを明らかにしている。そこで我々は、創組織において増加したIGFが一次知覚神経のmTORの発現を増加させると仮定して実験を行った。mTORの阻害剤ラパマイシンを術後痛モデルラットに投与し、mTORの発現を観察したところ、ラパマイシン投与によりmTORの発現増加は抑制された。また、IGFをラット足底に注入して一次知覚神経のmTORを調べると、その発現量がIGFにより増加することも明らかとなった。 これらの結果から、創組織で増加したIGFが一次知覚神経を刺激しmTORを発現させ、これが引き金となって術後痛が成立することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
mTORが痛覚過敏発現に果たす役割の解明に関しては、ラット術後痛モデルを用いて、mTOR阻害剤ラパマイシンを投与し、手術後の痛覚過敏の程度がどのように変化するかを行動解析を用いて解明した。 一次知覚神経におけるmTOR発現を制御する因子の同定については、IGF阻害剤PPPがラット術後痛モデルにおけるmTORの発現増加を抑制することを示し、IGFがmTORの発現を調節していることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、痛覚過敏発現時にmTORの働きにより増加するタンパク質の同定を行いたい。未処置群、術後痛モデル群、術後痛モデルにラパマイシンを投与した群の3群の一次知覚神経におけるタンパク発現を、二次元電気泳動、ウェスタンブロッティングや免疫組織化学などで解析する。また、急性痛モデルでは鎮痛効果の証明されたmTOR阻害剤ラパマイシンが慢性痛にも効果があるかを組織炎症モデルや神経損傷モデルを用いて検証したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モデル動物作成のための動物購入、タンパクアッセイを行うための試薬、免疫反応を行うための一次抗体および二次抗体の購入、顕微鏡およびウエスタンブロッティングの画像解析用の器材購入にあてる。
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Research Products
(3 results)