2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592323
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河合 弘二 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90272195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 淳 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10550246)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | cell wall skeleton / BCG / 膀胱癌 / リポソーム / ミコール酸 |
Research Abstract |
リポソームBCGCWS製剤を用いた、ラットBBN発癌モデルにおいて、抗腫瘍効果を示すことができた。そこで、この製剤をより純化しロット間のばらつきをなくすように検討したが、BCGCWSはサイズが大きく、また堅固な物質であるため、滅菌化の問題を解決できず、製剤化が困難と思われた。しかしこれまでの基礎研究からBCGによる免疫反応は、菌の細胞壁の特徴的な物質すなわち、cell wall skelton(CWS)、ミコール酸、Lipomannan、lipoarabinomannanといった多数のワックス様脂質が、樹状細胞に貪食されても長期間細胞質内に生存し、宿主の免疫を刺激し続けるといった特有の性質に関連していることがわかっている。これらの中でミコール酸(MA)がCD1抗原として強力な細胞性免疫誘導を示すことが明らかとなってきた。そこでMAが、生菌に代わる抗腫瘍効果を示すのではないかと考え、北海道大学、BCG研究所とともに、細胞親和性を高め細胞質内にMAを効率的に輸送できるliposome vectorを開発した(リポソーム-MA)。このリポソーム-MAを用いて、新しい癌治療を提唱することを目標としている。リポソームMAが膀胱癌皮下接種マウスにおいて、強力な抗腫瘍効果をしめした。またリポソームMAは径が150nmほどであり、滅菌化もフィルター滅菌が可能となり、製剤化がより簡便に行える可能性がある。今後はミコール酸リポソーム製剤を第一の候補品として、GMP,GLP基準に達するような製剤へと発展させていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製剤の安定化:当初はBCGCWS製剤をリポソーム化する予定であったが、より純化し簡便な製剤化が可能となることを期待して、BCG細胞莢膜からミコール酸を抽出しこれをリポソーム化することとし、製剤を完成させることに成功した。これは、粒子径も小さく、安定的に製剤の調整が可能であり、今後は、この製剤を第一候補品として、商品化を目指す予定である。十分に製剤化可能な製品を調整することが可能になったため、今後の進展が期待される。マウス膀胱がん転移モデルを用いた製剤特性と抗腫瘍作用の評価膀胱がん細胞株(MBT-2)を担がんC3H/HeN マウスに尾静脈から静注して肺転移を作成する。静注する細胞数は1x10^4 を予定しており、静注後約2週で可視化肺転移形成、無治療の場合約3週で癌死に至る条件を設定する。この予備実験は病理学的に肺転移を確認することで必要最低限のマウスで行う予定であり、現時点で肺転移に関しては、病理学的に確認でき、安定して肺転移モデルを作成することが可能となった。今年度は、製剤の完成と共に、治療実験に移行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
製剤の製法方法が安定してきたため、前臨床試験に向けてロット間のばらつきをなくすように努める。さらに、マウスBBN発癌モデルを用いて、発癌抑制実験および、発癌治療実験を行う。マウス膀胱がん及び腎がん皮下腫瘍モデルを用いた製剤特性と抗腫瘍作用の評価<マウス皮下腫瘍モデル>膀胱がんモデル。皮下接種に使用する細胞株: C3H/HeN マウス由来の膀胱がん細胞株(MBT-2)を用いる。使用するマウス: C3H/HeN メス 7週齢。投与する細胞: マウス一匹あたり7x10^5 cells を100ul の溶液に懸濁して使用。皮下接種の方法: 23G の注射針を用いてマウスの背部皮下に接種腎がんモデル皮下接種に使用する細胞株: Balb/c マウス由来の腎がん細胞株(RenCa)。使用するマウス: Balb/c メス 7週齢。投与する細胞: マウス一匹あたり1x10^6 cells を100ul の溶液に懸濁して使用。腫瘍体積が約200mm^3(2-3週)になった時点でリポソームミコール酸を腫瘍及び腫瘍周辺皮下に注入する。リポソームミコール酸 の投与量は1mg, 0.1mg に設定し、これを100 ul の生理食塩水(生食)に懸濁し投与する。<結果から得られる情報>抗腫瘍効果を最大限に引き出す投与量及び投与回数を決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
腫瘍内リポソームミコール酸注入による転移巣へのリモート効果の検討<スケジュール>1. 予備実験(肺転移モデルの作成)。膀胱がん細胞株(MBT-2)担がんC3H/HeN マウスおよび、腎がん細胞株(RenCa)担がんBalb/cマウスに各々尾静脈から静注して肺転移を作成する。静注する細胞数は1x10^5 を予定しており、静注後約2-3 週で可視化肺転移形成、無治療の場合約4-5 週で癌死に至る条件を設定する。2.腫瘍内リポソームミコール酸注入による転移巣へのリモート効果の検討。先の実験の条件で皮下接種を行い、2-3 週後に腫瘍形成を確認した後に膀胱がん細胞株(MBT-2)を担がんC3H/HeN マウスに、腎がん細胞株(RenCa)を担がんBalb/c マウスに各々尾静脈から静注する。注入細胞数は予備実験で確定したものを用いる。<治療方法と期間>MBT-2 及びRenCa 腫瘍の各々についてリポソームミコール酸投与群及び無治療群各20 匹(全80 匹)のマウスを使用する。がん細胞静注の3 日後より、実験1で確定した抗腫瘍効果を最大限に引き出す投与量及び投与回数を用いてリポソームミコール酸を腫瘍及び腫瘍周辺皮下に注入する。<治療効果判定>肺転移数:がん細胞静注後3 週の時点でMBT-2 及びRenCa 腫瘍の各々についてリポソームミコール酸投与群及び無治療群各10 匹を安楽死させ、肺重量及び可視的肺転移数を評価し、さらに肺転移の病理学的検討を行う。またこの際に採取した心臓血(各群5 匹)を用いてTh1/Th2 サイトカインを測定する。Th1/Th2 サイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-2の測定を行う。生存期間:6 週後に生存マウスを安楽死させ、この時点までの生存期間、生存率を各群で評価する。
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Research Products
(1 results)