2011 Fiscal Year Research-status Report
去勢抵抗性前立腺癌におけるDkk-1の機能解析及びその治療への応用
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23592339
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
河野 吉昭 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (30593793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江藤 正俊 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (90315078)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 前立腺癌 |
Research Abstract |
当教室で保有するヒトDkk-1 cDNAを用いて、TetR制御下においてテトラサイクリン依存性に発現誘導が可能となる発現プラスミドを作成(pcDNA4/TO-hDkk1-Flag)し、lipofecionによるLNCaP/TR2細胞への導入とブラストサイディン及びゼオシンによる二重選択を行うことによって、Dkk-1蛋白の誘導発現クローンを樹立した(LNCaP/TR-hDkk-1-Flag)。同時にcDNAを有さないempty plasmidを用いて、同様にコントロールのクローンも樹立した(LNCaP/TR2-empty)。LNCaP/TR2-hDkk-1-Flagのテトラサイクリン依存性Dkk-1発現はウェスタンブロット法にて確認した。さらに、活性炭処理済み胎児ウシ血清とDihydrotestosterone(DHT)を用いて、これらの細胞がテトラサイクリン無添加(Dkk-1発現非誘導下)の条件ではアンドロゲン依存性増殖をすることを確認、さらにMMTV-luciferaseを使用したレポーターアッセイによってアンドロゲン受容体の活性が保持されていることを確認した。一方、ヒトアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株であるPC-3がDkk-1を発現していることを、市販のヒトDkk-1抗体(R&D systems社製)を用いて確認した。現在Dkk-1を標的としたsiRNA(SMARTpool、Thermo Scientific社製)を用いて、同細胞の発現するDkk-1のノックダウンを確認する実験を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度において、(1)LNCaPを用いたDkk-1のテトラサイクリン誘導発現株の樹立、(2)PC-3を用いたDkk-1誘導ノックダウン株の樹立、を当初の目標としていた。前者においては、lipofection法を用いてLNCaP/TR2細胞に遺伝子導入し、ブラストサイディン及びゼオシンによる二重選択によって、上記の細胞を計画通りに樹立することができた。後者に関しては、テトラサイクリン誘導発現系に必要であるTetRをコードした発現プラスミド(pcDNA6/TR)のlipofection後のブラストサイディン選択の過程において、発現プラスミドが導入されていない細胞が死滅しないという想定外の結果となった。しかしながらin vitroの実験ではsiRNAを用いた手法でもshRNAの定常発現細胞と遜色ない効果が得られる事、さらに特に近年nude miceの皮下に形成したxenograft transplantにおいてもsiRNAの導入が可能であることが報告され、in vivoの系においてもsiRNAによる手法を使用できるという技術的なブレークスルーがなされた。従って、本研究計画でも同様の方法を採用することにより、in vivoの系でもPC-3細胞におけるDkk-1ノックダウンの効果を評価可能と考えられるため、本年度の研究計画が遂行できると考えられる。したがって、現時点において本研究は当初の計画通りおおむね遂行できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載されている研究計画通り、今年度は上述した新規樹立細胞及びsiRNAによるノックダウンの手法を用いて、Dkk-1の前立腺癌細胞のアンドロゲン非依存性増殖やその他の生物学的意義について解析を進めていく予定である。具体的には、1. 活性炭処理済み胎児ウシ血清含有培地を用いた培養条件(生化学的去勢状態)における細胞増殖及び細胞生存に対するDkk-1誘導発現の影響を評価する、2.運動・浸潤能に対するDkk-1誘導発現の影響をscratch assayやMatrigel chamberを用いたinvasion assayによってそれぞれ評価し、さらに蛍光標識 phallodinを用いたF-アクチンの免疫蛍光染色によって細胞形態の変化を評価する、という2つの方針にて研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画において、LNCaP/TR-hDkk-1-Flag、LNCaP/TR2-emptyそしてPC-3といった細胞の培養は不可欠であるため、培地及びウシ胎児血清の購入が必要である。また前二者の培養では、導入プラスミドにコードされているTetR並びにhDkk-1の発現を担保するために、二重選択に用いた選択マーカーであるブラストサイディンとゼオシンを必要とするため、これらの購入が必要である。siRNAを用いたノックダウンの実験には、Dkk-1を標的とするsiRNAとそのコントロール、そしてトランスフェクション試薬が必要であるため、これらの購入が必要である。さらに前項で記載した実験を進めていくためには、細胞増殖評価のためのWST-1(Roche Diagnostics)、浸潤能評価のためのMatrigel chamber(BD Bioscience)、運動能評価のためのLabTek Chamber(Nunc)、F-アクチン染色のためのAlexa488-標識Phalloidin(Invitrogen)が必要であるため、これらの購入が必要である。従って、本年度に使用予定の研究費はこれらの試薬並びに物品の購入に充てられる予定である。さらに情報収集目的にて適宜学会・研究会への出席も行うため、これらの旅費にも充てられる予定である。
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