2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592349
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菊地 栄次 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10286552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00213885)
宮嶋 哲 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90245572)
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60445244)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 尿路上皮癌 / 抗癌剤 / シグナル伝達 / 喫煙 |
Research Abstract |
尿路上皮癌におけるNF-kappaB、AP-1転写因子の発現頻度、臨床所見との関連、予後解析を臨床検体を用いて進めた。NF-kappaB、AP-1においておのおのp65、cFosのタンパク発現の有無と臨床所見との関連を検討したが、明らかな関連を認めなかった。そこで、接着因子であるcadherin、EMT関連因子であるsnailに注目し検討を行った。 腎盂尿管癌に対し手術療法を施行した212例を対象とし、免疫染色法にてE-,N-,P-cadherinの発現について検討した。E-,P-,N-カドヘリンの発現様式の異常はそれぞれ70.2%,19.5%,21.7%の症例に認められた。E-cadherin低発現はpT2 以上(p=0.001)、Grade 3(p=0.019)、壁内脈管浸潤陽性(p<0.001)症例に多く、P-cadherin高発現はpT2 以上(p=0.037)腫瘍に多く認められたが、N-cadherinの発現異常と臨床病理学的因子との関連は認めなかった。多変量解析でpT2 以上(p=0.018)および壁内脈管陽性(p<0.001)例が腫瘍の再発に関する独立した因子であった。 ついで腎盂尿管癌: 184例、浸潤性膀胱癌: 64例を対象としSnailの核内の発現を免疫組織化学的に検討し、各種の臨床パラメーターとの関連を解析した。腎盂尿管癌、 浸潤性膀胱癌においてSnailの発現は高Grade、高Stage、壁内脈管浸潤陽性例において有意に高かった。多変量解析では、Snail高発現 (p=0.013)はGrade、 壁内脈管浸潤と共に独立した予後規定因子であった。浸潤性膀胱癌でも同様の傾向で、Snail高発現群は低発現群に比して有意に予後不良であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尿路上皮癌における接着因子であるcadherin、EMT関連因子であるsnailの臨床所見との関連が確認された。尿路上皮癌においてはこれらの因子の制御が癌進展の抑制に働く可能性が示唆された。そこで現在遠隔転移と強く関連するとされるKiss-1に注目しその発現と尿路上皮癌の予後との関連を検討している。 転移性、再発性尿路上皮癌は予後不良であり、死因の原因は遠隔転移の存在である。転移・浸潤のメカニズムの解明、治療標的の同定、新規バイオマーカーの発見、新たな治療法の開発は我々に課せられた急務の課題である。Kiss-1に注目し転移予測マーカーの検討を開始した。 基礎研究ではPI3K-AKTシグナル伝達経路に注目し抗癌剤、喫煙によるこれらのシグナル伝達経路の変化、シグナル伝達系阻害剤を用いた治療効果検証を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
当大学理工学部において開発、合成された新たな分子化合物でAKTの活性を抑制するDTCMの治療効果の可能性の検証を開始する。まずは膀胱癌細胞株である5637、T24細胞を用いてその殺細胞効果を検証する。次いでシスプラチン耐性株である5637R、T24Rを用いてAKTの活性亢進の有無、DTCMの治療効果を検証する。in vitroの結果を踏まえて当教室で長年にわたり維持してきたマウス膀胱癌正所性モデルを用in vivoの検討を行う。 次いで喫煙の有無による膀胱癌細胞のシグナル伝達の変化を検証する。具体的にはMBT-2、KU-19-19細胞、T24細胞等highly aggressive bladder cell lineにタバコの主成分であるニコチン(1x10-6~10-8)を添加し、培養の後、PI3K-AKT経路を中心にニコチンによる細胞内のシグナル伝達の変化を検討する。その上で、シグナル伝達阻害剤を使用し、その治療効果の検討を行う。その検討結果を踏まえてタバコの成分であるニコチン(1mg/kg腹腔内投与、週3回)を直接マウスに投与し作成する直接喫煙モデルとタバコ煙中でマウスを飼育する受動喫煙モデル(自動喫煙機器を用いて)にMBT-2、KU-19-19、T24細胞を移植し、腫瘍増殖を経時的に観察し、シグナル伝達の発現の変化をin vivoで検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遠隔転移と強く関連するとされるKiss-1に注目した臨床検体を用いた検討に関しては、KiSS-1蛋白、さらにその受容体であるGPR54蛋白の発現を確認するため、それぞれの抗体の購入に研究費を使用する予定である。 新たな分子化合物でAKTの活性を抑制するDTCMは当大学理工学部より無償で分与される。in vitroの研究に関して費用は主にプラスチック器具(フラスコ,ピペット,96穴プレートなど)、細胞培養試薬、Western blot試薬など消耗品の購入に充てられる。 マウス同所性膀胱腫瘍モデル、ニコチンを使用した直接喫煙モデル、あるいはタバコ煙中でマウスを飼育する受動喫煙モデルの動物実験とその飼育費用にも研究費が充てられる。
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Research Products
(3 results)