2012 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌再燃機構の解明に向けたマイクロRNAネットワークの解析
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23592351
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小島 聡子 帝京大学, 医学部, 准教授 (10345019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
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Keywords | 前立腺癌 / マイクロRNA / 発現プロファイル |
Research Abstract |
進行前立腺癌と正常前立腺との臨床検体において発現するマイクロRNA (miRNA)のマイクロアレイの結果を参考に、前立腺癌miRNA発現プロファイルを完成し、前立腺癌におけるmiRNAの機能解析と、その標的遺伝子の同定、機能解析を行うことを目的に研究を行っている。平成24年度は、大きく分けて以下の3つの研究を行った。 1)前立腺癌miRNA発現プロファイルの完成:進行前立腺癌5例、正常前立腺癌5例についてmiRNA発現を、マイクロアレイを用いて発現解析を行った。その網羅的探索により、miR-133a, miR-31, miR-205, miR-1,miR-187, miR-224, miR-222などのマイクロRNAの発現が前立腺癌において有意に低下することが示された。以上から前立腺癌におけるmiRNAのプロファイルが完成された。 2)前立腺癌細胞株を用いたmiRNAの機能解析:今回は、ホルモン不応性の前立腺癌細胞株PC3とDU145を用いて発現プロファイルで、低下の率が最も高かったmiR-187, miR-205, miR-31, miR-222を遺伝子導入し、前立腺癌細胞の増殖能が著明に低下することを示した。また、浸潤能のいても抑制効果の強かった、miR-222, miR-31に関して、その標的遺伝子を以下の手法で解析した。 3)miRNAの標的遺伝子の同定:前立腺癌細胞株において強制的にmiR-222, miR-31を発現させた場合に、発現が変化する遺伝子を、マイクロアレイにて同定した。そのなかで、実際にヒト前立腺癌組織において発現が亢進しているものを、GEOデータと照らし合わせて選別することで、その発現する遺伝子群の機能をKEGG pathwayにあてはめたところ、miR-222, miR-31は前立腺癌において発現や癌の進展に強く関与する役割があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、最終目標であるmiRNAの標的遺伝子の同定まで研究が進んでいる。 これまで、miR-1とmiR-133aの共通の標的遺伝子がPNPであることを論文に報告し、またmiR-222, miR-31の標的を以下のように研究が進んでいる 実際にヒト前立腺癌組織において発現が亢進しているものを、GEOデータと照らし合わせて選別することで、実際のヒト前立腺癌において発現が上昇している遺伝子のなかで、miR-222, miR-31の標的となり得るものをリストアップすることができた。その発現する遺伝子群の機能をKEGG pathwayにあてはめたところ、miR-222, miR-31は前立腺癌において発現や癌の進展に強く関与する役割があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 前立腺癌の標的遺伝子のさらなる探索:これまで前立腺癌のプロファイルをもとに、miR-1とmiR-133aがPNPをtargetとして癌抑制遺伝子として働くこと、またmiR-222, miR-31がcytokeletonやfocal adhesion, cell cycleなどのpathwayにおいて関連する遺伝子に影響を与えていること、またそれが実際に前立腺がん細胞の増殖や浸潤に関与していることを示してきた。今後は、さらに前立腺癌におけるmicroRNAのプロファイルを用いて、さらに重要な役割をすると思われるmiRを同定し機能解析を行うことが第1の方針である。また、一つのmicroRNAが100以上の遺伝子をtargetとしていることから、最も重要な遺伝子やmicroRNAを同定することは困難であるため、遺伝子の網羅的を行うことが第2の方針である。 2) 下流遺伝子の網羅的解析:前立腺癌に発現するmiRのプロファイルから得られたmiRの下流の遺伝子の発現支配をバイオインフォマティクスの手法を用いて広く解析し、多数のmiRからコントロールされる、前立腺癌の発癌メカニズムを解明するのが第の目的である。現在、他癌でも注目されているmiR-145の下流の遺伝子を同定し、その機能解析を行っている。 3) 去勢抵抗性前立腺癌におけるmiRの発現解析:前立腺癌は再燃し、治療に抵抗性となり死に至る疾患である。再燃のメカニズムは未だあきらかでない。ヒトの未治療前立腺癌から同定された前立腺癌におけるmiRNAのプロファイルを基に前立腺癌において重要な役割を果たすmiRNAもしくはその標的遺伝子を同定してきた。今後は去勢抵抗性前立腺癌に進行するメカニズムや、去勢抵抗性前立腺癌において発現する遺伝子について検討を重ねる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイクロアレイを用いた発現解析は、1検体につき約50万円の費用がかかる。 今後、去勢抵抗性前立腺癌における発現解析を行うのに費用がかかるため、来年度に使用する予定の額は主に発現解析に使用する予定である。 その他、前立腺癌細胞株を用いた機能解析を行うために必要なmiRNAや遺伝子導入に必要な試薬、臨床検体からRNAを抽出するためのTRizolや保存液、mRNAの発現を測定する際に使用する試薬など、高価な実験試薬が多いため、それらに使用する予定である。 また、次年度も海外発表や論文投稿を予定している。英文校正や投稿費、海外学会参加費などにも使用する予定である。
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[Journal Article] Tumor suppressive microRNAs (miR-222 and miR-31) regulate molecular pathways based on microRNA expression signature in prostate cancer.2012
Author(s)
1) Miki Fuse, Satoko Kojima,Enokida H, Chiyomaru T, Yoshino H, Niziro Nohata, Takashi Kinoshita, Shinich Sakamoto, Yukio Naya, Masayuki Nakagawa, Tomohiko Ichikawa, Naohiko Seki.
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Journal Title
J Hum Genet.
Volume: 57(11)
Pages: 691-699
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Tumor suppressors miR-1 and miR-133a target the oncogenic function of purine nucleoside phosphorylase (PNP) in prostate cancer2012
Author(s)
2)Satoko Kojima, Takeshi Chiyomaru, Kazumori Kawakami, Hirofumi, Yoshino, Hideki Enokida, Nijiro Nohata, Miki Fuse, Tomohiko Ichikawa, Yukio Naya, Masayuki Nakagawa and Naohiko Seki.
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Journal Title
Brit. J. Can.
Volume: 106
Pages: 405-413
DOI
Peer Reviewed
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