2011 Fiscal Year Research-status Report
難治性膀胱癌に対するキメラ型細胞融解性ベクターを用いた新規治療法の開発
Project/Area Number |
23592354
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
後藤 章暢 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70283885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長屋 寿雄 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60464343)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / 膀胱癌 / アデノウイルスベクター |
Research Abstract |
本研究では、再発率が高く、予後不良である浸潤性膀胱癌に対する QOL を重視した新規治療法として純国産の遺伝子治療薬の開発を目指す。 まず、5型アデノウイルスのファイバー・ノブ領域を35型アデノウイルスベクターのファイバー・ノブ領域で置換したアデノウイルスベクターと5型アデノウイルスに、ヒト膀胱癌細胞株に対する腫瘍特異性プロモーターであるミドカインプロモーターとそのプロモーターにより発現を制御されるE1遺伝子を組み込み、キメラ型細胞融解性アデノウイルスベクター(Ad5F35/MKp-E1, Ad5/MKp-E1)を作製した。Ad5F35/MKp-E1、Ad5/MKp-E1はそれぞれ、対象となる細胞の表面に局在するタンパク質CD46、CAR量に依存して細胞に感染することから、CD46,CARのタンパク質の発現量についてヒト膀胱癌細胞株について調べたところ、CD46は全ての細胞株で発現を確認することができたが、CARは一部の細胞でその発現を確認することができなかった。そこで、それらの細胞株を用いて、Ad5F35/MKp-E1、Ad5/MKp-E1の抗腫瘍効果について調べたところ、Ad5F35/MKp-E1では全ての細胞株で殺細胞効果を確認することができたが、Ad5/MKp-E1ではCAR非発現細胞株では殺細胞効果をほとんど確認することができなかった。 これらの結果は、35型アデノウイルスベクターのファイバー・ノブ領域を持つアデノウイルスベクターがより広範囲の膀胱癌細胞に抗腫瘍効果を表すことを示唆しており、今後の研究の進展において非常に重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画では、膀胱癌に対する腫瘍特異性プロモーターとして有用である MK プロモーターを組み込み、かつAd5のファイバー・ノブ領域をAd35のファイバー・ノブ領域で置換したCAR非依存性の感染能を有するキメラ型細胞融解性アデノウイルスベクター(Ad5F35/MK-E1)を作製する予定であった。現在、キメラ型細胞融解性アデノウイルスベクターであるAd5F35/MK-E1を作製し、平成24年度の課題であるCAR低発現である各種難治性ヒト膀胱癌細胞株に対する本ベクターのin vitroでの抗腫瘍効果の検討を既に行なっている。in vitroの抗腫瘍効果の検討について、CAR発現依存的に細胞に感染する従来のAd5/MKp-E1と比較して、Ad5F35/MK-E1は優れた抗腫瘍効果を示すことも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、in vitro及びin vivoでの抗腫瘍効果の検討を行う計画であった。「現在までの達成度」にあるように平成23年度に既にヒト膀胱癌細胞株に対するアデノウイルスベクターAd5F35/MKp-E1の抗腫瘍効果について、in vitroでの検討を行なっており、in vivo実験で使用するヒト膀胱癌細胞株も既に決定している。そこで、その細胞株を用いて、in vivoにおける抗腫瘍効果の検討を行う。in vivoの検討では、Balb/C nu/nu マウスの背側皮下に該当する細胞株を移植し、マウス膀胱癌皮下腫瘍モデルを形成する。腫瘍径が5mmに到達した時点で、1.0×10^7 plaque-forming unit(PFU)のアデノウイルスベクターを皮下腫瘍内に投与する(1クール)。初回ベクター投与から1週間後に、さらに1クールの治療を行う(2クール目)。 本実験は、非治療群(PBS投与)、Ad5/MKp-E1投与群、およびAd5F35/MKp-E1投与群に振り分け、各群 6 匹のマウスを使用する。治療前より1日おきに腫瘍体積などを測定し、アデノウイルスベクターの抗腫瘍効果を検討する。また、非治療群の最大腫瘍体積が4000立方ミリメートルに到達した時点でマウスを兵庫医科大学での動物実験規程に従って屠殺し、治療部位の病理組織学的検討を行う予定である。in vivoでの抗腫瘍効果の検討を終了後、平成25年度に予定しているキメラ型細胞融解性アデノウイルスベクターの前臨床試験(毒性試験・安全性試験)を行い、その後、臨床研究申請書の作成およびGMPグレードのベクター作製を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は平成23年度に選定したin vivo実験で使用するヒト膀胱癌細胞株を用いて抗腫瘍効果の検討を行う予定である。そのため、研究計画の予定通りに、Balb/C nu/nu マウス、アデノウイルスベクターの調製を行うための試薬の購入費及び治療部位の病理組織学的検査のために研究費を使用する予定である。 また、in vivoでの抗腫瘍効果の検討を終了後は、平成25年度に予定しているキメラ型細胞融解性アデノウイルスベクターの前臨床試験(毒性試験・安全性試験)、臨床研究申請書の作成およびGMPグレードのベクター作製などを行うために、研究費を使用する予定である。
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