2011 Fiscal Year Research-status Report
前立腺肥大症に対する新規分子標的治療法開発のためのKIT陽性間質細胞の機能解明
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23592376
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
佐々木 昌一 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50225869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 祥敬 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60305539)
窪田 泰江 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00381830)
高田 麻沙 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60468254)
郡 健二郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30122047)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | KIT陽性細胞 / 前立腺 / JAK-STATシグナル伝達 |
Research Abstract |
前立腺肥大症に対する薬物療法は前立腺平滑筋の過緊張を緩和させるα1受容体阻害剤および前立腺容量を縮小させる5α還元酵素阻害剤が主に用いられている。しかし、前立腺の収縮機構および増殖機構に関しては未だ詳細に解明されておらず、これらの解明が新規治療薬の開発につながると考えている。 消化管にはカハールの介在細胞が存在しており、消化管の自動運動の源であることがわかっている。この細胞は細胞膜にc-kit遺伝子によりコードされるKit(受容体型チロシンキナーゼ)を発現しており、細胞増殖にも関与していると言われている。近年、ヒト前立腺においても平滑筋の自発収縮が報告され、Kit陽性間質細胞が存在することから、前立腺肥大症の病態生理において、Kit陽性細胞が主要な役割を担っているのではないかと推察した。そこで本研究では前立腺におけるKit陽性細胞の役割を明らかにし、前立腺肥大症に対する新規分子標的治療の開発につなげたい。 当該年度に実施した研究の成果について記載する。実験動物(モルモット)およびヒト前立腺におけるKit陽性細胞の確認するため、免疫組織化学染色および分子生物学的解析(PCR、Western blotting)を用いることにより、ヒトおよびモルモット前立腺においてKit陽性細胞を同定した。 前立腺自動運動に対するKit陽性細胞の役割を検討するため、まず等尺性収縮法を用いてモルモット前立腺の自動運動を確認した。Kitに対する抑制因子であるメシル酸イマチニブの投与により、前立腺自動運動は濃度依存的に抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した、研究計画は次の4項目である。(1)ヒトおよび実験動物の前立腺におけるKit陽性細胞・c-kit発現の確認:ヒト正常前立腺、前立腺肥大組織、および前立腺間質細胞を用い以下の検討を行った。定量RT-PCR法、Western blotting法、免疫組織化学染色を用い、前立腺におけるKITおよび SCFの発現と局在を検討した。ヒト前立腺およびヒト前立腺間質細胞など、すべてのサンプルにおいてKIT・SCF mRNAおよび蛋白の発現を確認した。KITは間質細胞に、SCFは基底膜細胞に発現を認めた。(2)前立腺自動運動に対するKit陽性細胞の役割を検討:Whole organ bath studyによりモルモット前立腺の自動運動を確認し、自動運動に対するKIT阻害薬(imatinib)の効果を検討した。Imatinibは濃度依存的にモルモット前立腺の自発収縮の振幅を減少させた。(3)前立腺肥大症モデルラットの作成:妊娠20日目の雌SDラットから胎仔を採取。雄のみを選定し、顕微鏡下に胎仔の泌尿生殖洞を摘除。10%fetal bovine serum入りのRPMI1670溶液中で泌尿生殖洞を十分に洗浄したのち、7週齢の雄SDラットの前立腺腹側被膜下に顕微鏡下に移植することにより、前立腺肥大症モデルラットを作成した。(4)前立腺における細胞増殖機構の解明:ヒト正常前立腺間質細胞にKIT阻害薬(Imatinib)およびSCFを投与し、WST-1 assayにより細胞増殖能の変化を解析した。さらにKIT下流蛋白であるJAK2とSTAT1の発現変化を検討した。Imatinibはヒト正常前立腺間質細胞の増殖能およびJAK2・STAT1の発現を抑制した。一方、SCFはヒト正常前立腺間質細胞の増殖能およびJAK2・STAT1の発現を亢進させた。上記のように研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果から、KITリガンドであるSCFは基底膜細胞より分泌され、間質細胞に発現するKITと結合し、JAK-STAT経路を介して細胞内情報伝達を活性化し、前立腺の細胞増殖を促進することが考えられた。今年度は、ヒト正常前立腺と前立腺肥大症の免疫組織染色を行い、KIT陽性細胞数/間質細胞数を比較する。また分子生物学的解析(定量RT-PCR、Western blotting法)を用いることにより、ヒト正常前立腺と前立腺肥大症におけるKITの発現を比較する。KITに対する抑制因子であるメシル酸イマチニブのモデル動物に対する作用を検討する。今年度の研究で作成した前立腺肥大症モデルラットにメシル酸イマチニブを投与し、前立腺重量の変化を投与前後で比較検討する。また、前立腺肥大症モデルラットを用い、コントロール群、メシル酸イマチニブ投与群を設定し、各群間で排尿記録のパターン、KIT陽性細胞の分布、平滑筋機能などを比較検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)実験動物購入費:実験動物としては、ラット(妊娠20日目の雌SDラットおよび7週齢の雄SDラット)を用いる。ラットは前立腺肥大症モデルを作成するために必要である。(2)試薬類:主にいわゆる分子生物学的解析(PCR、RT-PCR、ウエスタンブロット、免疫組織染色、遺伝子発現の定量など)を行う際に使用する。(3)実験器具:実験器具は、実験に用いるピペットマン、ビーカー類など分子生物学的解析を行う際に用いるもののことを指す。(4)国内旅費:日本泌尿器科学会総会、日本排尿機能学会、日本泌尿器科学会中部総会等など国内の関連学会で研究成果を発表するため、その旅費、滞在費および学会参加費の一部に用いる。(5)外国旅費:米国泌尿器科学会、国際尿禁制学会など国外の関連学会で研究成果を発表するため、その旅費、滞在費および学会参加費の一部に用いる。(6)謝金等:分子生物学的解析を行う研究助手を雇うために一定の謝金が必要である。(7)委託費:組織標本作成やプライマー作成は委託して行う予定である。(8)印刷費:成果発表冊子作成の印刷費が必要である。
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Research Products
(2 results)