2011 Fiscal Year Research-status Report
献腎移植における移植腎予後と心機能を評価するバイオマーカーの確立
Project/Area Number |
23592385
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
日下 守 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40309141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星長 清隆 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30229174)
白木 良一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70226330)
河合 昭浩 藤田保健衛生大学, 医学部, 研究生 (00617144)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 献腎移植 / バイオマーカー / 虚血再潅流障害 |
Research Abstract |
献腎移植における移植腎予後と心機能を評価するバイオマーカーの開発を行う目的で、本年度は現在まで研究室にて保存した血清と尿を用い、解析を進めた。対象は研究開始時と比較し、症例が増加し、心停止下献腎移植30例、脳死下献腎移植4例、脳死下膵腎同時移植5例と生体腎移植50例、ならびに生体膵腎同時移植2例となった。移植腎予後を評価するバイオマーカーの開発を目的とし、移植前と周術期の各タイムポイントで、血清L-FABPとKim-1について検討した。血清L-FABPについては、移植後いわゆるdelayed graft function群(DGF)、DGFで移植後1週間以上透析を要する群(DGF long)、移植後直ちに腎機能を発現する群(immediate function (IF))に分けて検討したところ移植後早期でDGF, DGF longは血清L-FABPの有意な上昇を認めた。一方、Kim-1については症例毎に移植前から高値を示す症例があり、今後変化率などの検討を、各臨床経過で再検討する予定である。一方心機能を評価するバイオマーカーとして高感度トロポニンT、NT-proBNPに関して検討するべく準備を進めている。基礎実験は既に終了したものの、内シャント閉鎖や心血管イベントの発症した症例の検体蓄積が不十分であり、検討は次年度に持ち越す予定である。一方当初次年度で行う予定の移植腎生検に関するmiRNA arrayを用いた検討では、症例の蓄積があり、一部の遺伝子発現解析を開始し、終了した。今後次年度に向けて継続解析の予定である。血清L-FABPに関する研究内容は、プレリミナリーデータを本年度の臓器保存生物医学会で発表した。意見交換をもとに追加して解析を加え、抄録を日本泌尿器科学会総会、米国泌尿器科学会、米国移植学会に送り、いずれも演題が採択された。今後論文化を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
献腎移植における移植腎予後を評価するバイオマーカーの開発に関する研究では、血清L-FABPとKim-1に関する検討を既に終了した。L-FABPについては興味深い結果を得て、学会発表に加え今後論文化を進めている。Kim-1については、今後検討項目追加を予定し、近日中に検討を終了する予定である。献腎移植における心機能を評価するバイオマーカーの開発に関しては、基礎研究は終了したものの、内シャント閉鎖や心血管イベントの発症した症例の検体蓄積が不十分であり、実際の検討については次年度に持ち越す予定である。一方次年度に開始予定であった移植腎1時間生検を用いたmiRNAに関する発現解析では、献腎移植16例と生体腎移植20例脳死腎移植4例が保存され、一部の解析を開始した。移植腎1時間生検は、ドナー側の摘出前の要素(特に死戦期の変化や摘出までの虚血状態)と、移植後に虚血再灌流障害によって引き起こされる新たな変化の両者を含み、graftのviabilityを判断する新しいツールとして使用できる可能性があり、既にmiRNA arrayを用いた解析を行いデータ解析を進めている。全体としての進捗状況として、血清、尿を用いた解析は、献腎移植における心機能を評価するバイオマーカーの検討がやや遅れているものの、移植腎1時間生検を用いたmiRNA arrayによる解析は次年度予定であったが一部解析を既に進めており、おおむね順調に研究計画が順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
献腎移植における移植腎予後を評価するバイオマーカーに関する研究では、L-FABP, Kim-1の解析を終了し、論文化を進める。新たなバイオマーカーに関する検討としては、当院の腎臓内科との共同研究計画が現在進行中であり、血清解析は当科、尿解析は新たに腎臓内科へと発展を見せている。新たな検討項目に関しては開発中の内容を含むため、公表を差し控えるが、日本発の新たなバイオマーカーとして発展する可能性がある。献腎移植における心機能を評価するバイオマーカーの開発に関しては、基礎研究は終了したものの、内シャント閉鎖や心血管イベントの発症した症例の検体蓄積が不十分であり、実際の検討については次年度に持ちこととなった。患者の臨床パラメーターとして、心エコーによる評価を追加予定しており、当院循環器内科の協力を得て、今後症例検体の蓄積とともに推進していく予定である。一方次年度に開始予定であった移植腎1時間生検を用いたmiRNAに関する発現解析は、献腎移植16例と生体腎移植20例脳死腎移植4例が保存され、一部の解析を予定に先行して開始した。移植腎1時間生検は、ドナー側の摘出前の要素(特に死戦期の変化や摘出までの虚血状態)と、移植後に虚血再灌流障害によって引き起こされる新たな変化の両者を含み、graftのviabilityを判断する新しいツールとして使用できる可能性があり興味深い。既にmiRNA arrayを用いた解析を行いデータ解析をGene Springを用いて進めている。Targetとなる遺伝子についてはtarget scanを用いて解析する。我々は既に既存の2万遺伝子に関する遺伝子解析を行い、(Kusaka et al, Cell Transplantation 2009)この結果と、今回のmiRNA遺伝子解析のフュージョン化が行えることを確認した。次年度はこの解析を中心に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の主な費用は、血清と尿に関する研究に関しては保存とこれに伴う消耗物品、検体管理を行うネットワークから独立した研究室パソコン使用維持、ならびにデータ解析に必要なコンピュータソフト(SPSS, Excel)などの使用維持にかかわる費用がある。本年度は血清を用いた検体については、引き続き症例数の増加とともに従来行ったNGAL, L-FABP, Kim-1に加えて、昨年度行えていない心機能を評価する目的で高感度トロポニンT、NT-proBNPに関する血清解析を行う予定である。予備実験を含めてELISAを含む消耗品購入と解析に対する費用が発生すると考えられる。本年度は研究の中心を腎移植1時間生検を用いたmiRNA遺伝子の発現解析とする。マイクロアレイに関してはRNA抽出に伴う費用と、アレイ購入ならびにハイブリダイゼーションにかかわる費用、スキャン装置ならびに実際に解析を行うソフト(Gene Spring)に関する使用維持費が必要となる。アレイ解析に関しては精度維持のため、一部を受託で賄う可能性もある。また、研究成果に関しては、論文作成の際に必要な英文校正費用や論文投稿費用が発生する。昨年度は心停止下献腎移植における血清NGALの変化についての論文がJ Urol. に採択されたが、本年度はL-FABP, Kim-1に関して同様の費用支出が見込まれる。研究成果発表については、昨年度中に投稿した抄録が、既に米国移植学会、米国泌尿器科学会ならびに、日本泌尿器科学会に採択された。昨年度臓器保存生物医学会における発表と同様、研究過程での発表に対しては、質問等研究推進に関して貴重な意見を得る機会となった。実際血清L-FABPについての研究は、上記学会以降、意見を参考に研究を継続し、新たな展開を見せている。次年度への研究発展に向けて上記を含む学会参加、発表、意見交換に関して費用を計上している。
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