2012 Fiscal Year Research-status Report
妊娠における免疫介入脂質メディエーターの生理的・病理的意義に関する研究
Project/Area Number |
23592394
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 知行 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40209010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川名 敬 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60311627)
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Keywords | 脂質メディエータ / オートタキシン / リゾリン酸 / 妊娠 / 胎盤 / 妊娠高血圧症候群 / オメガ3脂肪酸 / 早産 |
Research Abstract |
今年度は、妊娠の生理と病理における脂質メディエータの意義に関する研究の中で、オートタキシン(ATX)/リゾリン酸(LPA)系の研究においては以下の成果を挙げた。まず、正常妊娠における母体血中LPA濃度の推移を検討したところ、妊娠週数の増加と共に上昇し、血中ATX抗原量の推移と一致していた。また、正常妊娠と妊娠高血圧症候群(PIH)の胎盤におけるATXの発現を検討したところ、胎児発育不全を伴うPIHでは正常妊娠に比べ、有意にATXの発現が低いことがわかった。PIH患者では血中ATX濃度が正常妊娠に比べて低いことが報告されており、この現象が胎盤における発現低下によることがわかった。ATXにより合成されるLPAは細胞の増殖、浸潤を調節することが知られており、ATXの低下がLPA産生の低下を招き、胎盤形成期におけるトロホブラストの増殖、浸潤を障害して、胎盤形成不全を起こし、PIHを発症させていると示唆された。また、オメガ3/オメガ6脂肪酸系の研究においては、体内でオメガ3脂肪酸を大量に合成するトランスジェニックマウス:fat1マウスを用いて、オメガ3脂肪酸の早産予防効果の発現機序に関する検討を行った。その結果、ワイルドタイプマウス(WT)に比べ、fat1マウスの妊娠子宮では、エイコサペンタエン酸(EPA)の代謝産物が上昇していた。そこでマウスの早産モデル実験を行い、EPAの代謝産物であるレゾルビンE3をWTに静脈注射したところ、対照群に比べ、早産率が減少した。この結果から、オメガ3脂肪酸の代謝産物は新規の早産予防薬になりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、妊娠における免疫介入脂質メディエーターの生理的・病理的意義に関する研究である。本研究は、脂質メディエーターとして、オメガ3/オメガ6脂肪酸系とlysophosphatidic acid(LPA)/オートタキシン(ATX)系を取り上げている。今年度はlysophosphatidic acid(LPA)/オートタキシン(ATX)系の研究では、妊娠高血圧症候群の発症機序に脂質メディエーターが関与している可能性を示した。また、オメガ3/オメガ6脂肪酸系については、早産との関連性について、その作用機序を詳細に検討し、オメガ3脂肪酸代謝産物が新規の早産予防薬となりうることを示した。いずれの脂質メディエーターの研究もおおむね順調に成果を挙げることができた。次年度にはデータの蓄積により、高品質の成果がまとめられると見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、lysophosphatidic acid(LPA)/オートタキシン(ATX)系の意義については、今年度の実績をもとに、さらにその作用機序の解明をめざして研究を進め、細胞培養実験やLPA受容体に関する実験を通じて、LPAの妊娠局所における作用機序の解析を行う予定である。また、オメガ3/オメガ6の研究については、データを積み上げ、早産における作用機序の詳細な解明を行う予定である。最終年度であり、いずれの研究も論文化を目指す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)