2011 Fiscal Year Research-status Report
生殖・産科異常におけるリラキシンと免疫異常の関連解明
Project/Area Number |
23592403
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山田 秀人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40220397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 幸士 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80362789)
牧原 夏子 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (30593991)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生殖 / 免疫 / リラキシン |
Research Abstract |
本研究では、生殖・産科異常におけるリラキシンと免疫異常の関連を解明することを目的とした。平成23年度は、ヒトリコンビナントリラキシン(rH2)を用いて、ヒト培養子宮筋および子宮筋腫細胞における増殖能とアポトーシスに及ぼす影響を解析した。40~49歳までの9症例(増殖期3例、分泌期6例)について、ヒト培養子宮筋および子宮筋腫細胞を作成し、rH2を添加した。培養細胞におけるLGR7の発現を、免疫染色を用いて確認した。細胞増殖能に及ぼす影響は、MTS法や、PCNAの発現を免疫染色することで解析した。アポトーシスに及ぼす影響は、TUNEL法や、ウエスタンブロット法を用いてcaspase-3の発現を解析した。 その結果、MTS法では、ヒト培養子宮筋腫細胞において有意に生細胞数の増加を認めた。PCNA発現は、ヒト培養子宮筋腫細胞において有意に増加を認めた。TUNEL法では、ヒト培養子宮筋腫細胞において有意なアポトーシス細胞の減少を認めた。ウエスタンブロット法では、ヒト培養子宮筋腫細胞において有意なcaspase-3発現の低下を認めた。ヒト培養子宮筋細胞では、いずれも有意差を認めなかった。 我々は初めて、リラキシンが選択的にヒト培養子宮筋腫細胞においてcaspase-3発現を低下させることでアポトーシスを抑制し、PCNA発現を増加させることで細胞増殖を促進することを明らかにした。子宮筋腫の容量は妊娠初期に増大し、以後はほぼ不変であるという報告がある。妊娠中のリラキシン血中濃度は、妊娠初期に最高値をとり、以後は不変である。我々の研究結果により、リラキシンは子宮筋腫細胞に細胞特異的に作用することで、妊娠初期の子宮筋腫増大に関与することが示唆された(Fertil Steril 97:734-741,2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、解析検体を収集した後にリラキシン・リラキシン受容体(LGR7)発現の検討、プロゲステロンやhCGによる培養細胞における発現影響の検討、リラキシンのアポトーシスに及ぼす影響解析などを研究目標とした。 現在までの成果としては、ヒト培養子宮筋および子宮筋腫細胞におけるリラキシン受容体の発現を確認し、リラキシンは選択的にヒト培養子宮筋腫細胞においてcaspase-3発現を低下させることでアポトーシスを抑制することを明らかにした。したがって、子宮内膜組織、子宮内膜間質細胞、絨毛外トロホブラストを用いた研究の進捗は著しいとはいえないが、子宮筋と子宮筋腫におけるリラキシンの役割について、十分な成果を上げることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目の検討を進める。 1)子宮内膜上皮細胞と子宮内膜間質細胞でのリラキシン・リラキシン受容体(LGR7)発現の検討(牧原、中林)。2)プロゲステロン、hCGによる培養子宮内膜間質細胞でのリラキシン・リラキシン受容体(LGR7)発現に及ぼす影響の解析を行う(牧原、中林)。様々な濃度のプロゲステロンを培養子宮内膜間質細胞に添加し影響を検討する。RNAより作成したcDNAを増幅し定量解析する。抽出した蛋白は、ウェスタンブロット法で解析する。3)リラキシンのアポトーシスに及ぼす影響の解析(牧原、中林)。子宮内膜上皮細胞と間質細胞の無血清培養系にヒトリラキシンを添加し、viable cell numberをMTS法で経時的に調べる。4)培養妊娠初期絨毛外トロホブラストでの血管新生関連因子、増殖能・アポトーシスに及ぼす影響の解析(牧原、陌間、中林)。絨毛外トロホブラストの無血清培養系にトリラキシンを添加し、VEGF, PLGF, angiopoietinやそれら受容体などの血管新生関連因子の発現への影響を調べる。5)サイトカインやプロスタグランジン産生への影響を検討(牧原、中林)。6)免疫細胞・サイトカイン異常の解析とリラキシン・リラキシン受容体(LGR7)相互関連の検討(牧原、中林、山田)。不妊症、体外受精反復不成功、習慣流産、染色体正常胎児の自然流産、人工妊娠中絶、子宮内膜症患者、および正常女性から同意を得て,患者子宮内膜、脱落膜、絨毛、胎盤、子宮内膜症組織など取得する。これらの検体に対して、Mφ機能、DC、NK細胞 (NK1/2)、T-reg、Th1/2/3 や Tc1/2 をフローサイトメトリー法、免疫組織化学染色、in-situ-hybridization法、バイオアッセイ法などで解析する。内分泌・免疫系の相互関連を解析する。 得られた結果を取りまとめ、発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品は充足しているため、購入の予定はない。 プロゲステロン、hCG、rH2、細胞培養液、in-situ-hybridization法などに用いる試薬等消耗品に300,000円を見込んでいる。cDNA、ウェスタンブロット法、MTS法、バイオアッセイ法、アポトーシス関連のキット購入に、消耗品として300,000円を見込んでいる。ガラス、プラスティック器機の購入に、消耗品として100,000円を見込んでいる。フローサイトメトリー法、免疫組織化学染色などに用いる抗体検査消耗品におよそ300,000円を見込んでいる。 研究成果発表のための国内旅費を200,000円、および研究打ち合わせのために外国旅費を150,000円見込んでいる。研究成果リプリントの費用として50,000円が必要になる。 次年度使用額分については、平成24年度の研究費と合わせて使用する。
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