2012 Fiscal Year Research-status Report
生殖・産科異常におけるリラキシンと免疫異常の関連解明
Project/Area Number |
23592403
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山田 秀人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40220397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 幸士 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80362789)
牧原 夏子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (30593991)
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Keywords | リラキシン |
Research Abstract |
本研究では、生殖・産科異常におけるリラキシンと免疫異常の関連を解明することを目的とした。平成24年度は、ヒトリコンビナントリラキシン(rH2)を用いて、ヒト培養子宮筋および子宮筋腫細胞における増殖能とアポトーシスに及ぼす影響を解析した。リラキシンが選択的にヒト培養子宮筋腫細胞においてcaspase-3発現を低下させることでアポトーシスを抑制し、PCNA発現を増加させることで細胞増殖を促進することを明らかにした。我々の研究結果により、リラキシンは子宮筋腫細胞に細胞特異的に作用することで、妊娠初期の子宮筋腫増大に関与することが示唆された(Fertil Steril 97:734-741,2012)。 次に、絨毛外栄養膜細胞のモデルとしてヒトトロホブラスト由来HTR-8/SV neo細胞株を用いて、リラキシンのアポトーシスに及ぼす影響を解析した。HTR-8/SV neo細胞にリラキシンレセプターであるRXFP1、RXFP2の発現があることをRT-PCRで確認した。rH2の添加によって、TUNEL法でアポトーシス細胞の減少を認め、ウエスタンブロット法でcaspase-3とcleaved PARP発現の低下を認めた。一方、Bcl-2発現は上昇した。したがって、リラキシンは絨毛外栄養膜細胞に対してアポトーシス抑制作用があることが明らかとなった。妊娠中のリラキシン血中濃度は妊娠初期に最高値をとり、以後は不変である。リラキシンには妊娠初期の胎盤形成に重要な生理学的役割があると考えられる(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの成果として、ヒト培養子宮筋、子宮筋腫細胞およびヒト絨毛外栄養膜細胞におけるリラキシン受容体の発現を確認し、リラキシンはヒト培養子宮筋腫細胞やヒト絨毛外栄養膜細胞においてcaspase-3発現を低下させることでアポトーシスを抑制することを明らかにした。子宮筋腫、胎盤形成におけるリラキシンの役割については、十分な成果を上げることが出来た。 しかし、当初予定していた、「リラキシン‐リラキシン受容体/免疫細胞の相互機構」、「プロゲステロン、hCGによる培養子宮内膜間質細胞でのリラキシン・リラキシン受容体(LGR7)発現に及ぼす影響」、「サイトカインやプロスタグランジン産生への影響」の解析については、成果は十分ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目の検討を進める。 1)プロゲステロン、hCGによる培養子宮内膜間質細胞でのリラキシン・リラキシン受容体(LGR7)発現に及ぼす影響の解析を行う(牧原、中林)。様々な濃度のプロゲステロンを培養子宮内膜間質細胞に添加し影響を検討する。RNAより作成したcDNAを増幅し定量解析する。抽出した蛋白は、ウェスタンブロット法で解析する。2)リラキシンのアポトーシスに及ぼす影響の解析(牧原、中林)。子宮内膜上皮細胞と間質細胞の無血清培養系にヒトリラキシンを添加し、viable cell numberをMTS法で経時的に調べる。3)サイトカインやプロスタグランジン産生への影響を検討(牧原、中林)。4)免疫細胞・サイトカイン異常の解析とリラキシン・リラキシン受容体(LGR7)相互関連の検討(牧原、中林、山田)。不妊症、体外受精反復不成功、習慣流産、染色体正常胎児の自然流産、人工妊娠中絶、子宮内膜症患者、および正常女性から同意を得て,患者子宮内膜、脱落膜、絨毛、胎盤、子宮内膜症組織など取得する。これらの検体に対して、Mφ機能、DC、NK細胞 (NK1/2)、T-reg、Th1/2/3 や Tc1/2 をフローサイトメトリー法、免疫組織化学染色、in-situ-hybridization法、バイオアッセイ法などで解析する。内分泌・免疫系の相互関連を解析する。 得られた結果を取りまとめ、発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品は充足しているため、購入の予定はない。 プロゲステロン、hCG、rH2、細胞培養液、in-situ-hybridization法などに用いる試薬等消耗品に300,000円を見込んでいる。cDNA、ウェスタンブロット法、MTS法、バイオアッセイ法、アポトーシス関連のキット購入に、消耗品として300,000円を見込んでいる。フローサイトメトリー法、免疫組織化学染色などに用いる抗体検査消耗品におよそ100,000円を見込んでいる。 研究成果発表のための国内旅費200,000円、外国旅費200,000円を見込んでいる。
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