2011 Fiscal Year Research-status Report
GnRHパルス頻度依存性特異的ゴナドトロピン発現機構の解明
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23592404
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
金崎 春彦 島根大学, 医学部, 講師 (10325053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折出 亜希 島根大学, 医学部, 助教 (00423278)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゴナドトロピン / GnRH / PACAP |
Research Abstract |
LH、FSHは視床下部ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)による制御をうけ、GnRH分泌パターンの違いにより2つのホルモンが特異的に制御されている。GnRHはその濃度を変化させながら律動的(パルス状)に分泌されているが、GnRHニューロンから高頻度パルス状に分泌されるGnRHはゴナドトロピン産生細胞からLHを優位に合成・分泌し、低頻度パルス状GnRH刺激下ではFSHが優位に合成・分泌される。パルス頻度の違いが何故LH、FSHを特異的に制御するのか未だ不明である。GnRHにより数々の細胞内伝達物質が活性化されるが、そのうちextracellular signal-regulated kinase (ERK)はゴナドトロピン発現に重要なプロテインキナーゼであるが、高頻度GnRHパルス刺激と低頻度GnRHパルス刺激ではその活性化パターンが異なる。また、活性化されたERKを脱リン酸化して不活性化させるMAP kinase phosphatase 1(MKP1)は低頻度GnRHパルス刺激特異的に発現する。GnRHによる細胞内cAMPの上昇は高頻度GnRHパルス特異的である。Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide(PACAP)は下垂体局所でゴナドトロピン産生を制御し、性殖機能調節に役割を持つことが明らかになってきたが、GnRHはゴナドトロピン産生細胞においてPACAPの局所産生を促進し、PACAPの受容体であるPAC1受容体発現を増加させる。またPACAP、PAC1受容体発現共に低頻度GnRHパルス刺激で高頻度パルス刺激に比べて有意にその発現量が増加する。PACAP自身も高頻度PACAP刺激ではLHが優位に発現し、低頻度刺激ではFSHが優位となるパルス頻度依存性ゴナドトロピン発現能を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GnRHパルス頻度依存的ゴナドトロピンLH, FSH発現調節機構について本研究を行ってきた。本年度はGnRHパルス特異的LH, FSH調節に関し、MAPキナーゼ脱リン酸化酵素であるMAP kinase phosphatase 1(MKP1)発現とGnRHパルス刺激の観点からの検討と、GnRHパルス頻度刺激によるPACAP及びその受容体であるPAC1受容体発現との関連に関する検討の2つの側面から研究を行った。MKP1に関する研究においては高頻度GnRHパルス刺激にのみ特異的に発現するといるGnRHパルス頻度依存性発現が認められ。MKP1とLH発現との関連が示唆された。一方PACAP及びPAC1受容体は、低頻度GnRH刺激で優位に増加することから、PACAP及びその受容体が、FSH産生機序に重要な役割を果たしているのではないかと推測された。GnRHパルス頻度依存性特異的LH, FSH発現を解明する本研究の目的に関し、概ね順調な進展がみられたと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
下垂体ゴナドトロピンであるLH, FSHは視床下部GnRHにより制御されており、更にGnRHはその分泌パターンでLH, FSHを特異的に制御する。つまり、高頻度GnRH刺激ではLHが優位に発現し、低頻度GnRH刺激ではFSHが優位に合成・分泌される。近年視床下部GnRHが視床下部キスペプチンにより直接制御されていることが徐々に明らかになってきた。キスペプチンはキスペプチンニューロンから放出され、GnRHニューロンに投射されることも分かっている。つまり、ゴナドトロピンを特異的に制御するGnRHパルスが、キスペプチンにより制御されている可能性があり、ゴナドトロピン特異的発言機構の解明にはキスペプチンによるGnRHニューロンへの作用機序を検討する必要がある。また、近年GnRHと全く反対の作用をもつ、Gonadotropin-inhibitory hormone (GNIH)が鳥類より分離・同定され、視床下部GnRH及び下垂体ゴナドトロピン産生細胞の両者に負の制御を加えていること明らかになりつつある。今後の研究においてキスペプチン及びGnIHの検討も行なっていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度残額が生じたが、既存の試薬等を有効に活用した結果である。今年度は新たにGnRHニューロン株をモデル細胞として用い、またGnIHに関する研究も始める予定である。研究費はH23年度分の残額とあわせ、抗体の購入やプライマー設定、ベクターの購入等、主に消耗品の購入にあてる予定である。具体的には以下の実験を予定する。1.GnRHニューロン細胞株におけるキスペプチンの役割についてキスペプチンがGnRHニューロンを制御している可能性が示唆されているが、単一GnRHニューロンにおけるキスペプチンの作用機序は依然不明である。GnRHニューロン細胞株であるGT1-7細胞を用いて、細胞内情報伝達様式について検討する。またキスペプチンはGnRH合成を直接制御するのかどうか、GnRHニューロンに存在するGnRH受容体に対する影響はどうか調べる。2.下垂体ゴナドトローフにおけるGnIHの作用についてGnIHはゴナドトロピン産生細胞へ直接作用を持つとされる。LH及びFSH合成がGnIH存在下で抑制されるかどうか。またGnRH刺激効果がどのように変化するのか検討したい。また、ゴナドトローフに対しGnRHパルス刺激を行い、高頻度、低頻度の違いでGnIH受容体発現に変化が生じるかどうか確認したい。
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Research Products
(6 results)