2011 Fiscal Year Research-status Report
発現タンパクの機能制御に基づいた婦人がんの分子標的治療戦略
Project/Area Number |
23592409
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
古川 直人 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50347556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
吉田 昭三 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40347555)
成瀬 勝彦 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70453165)
重富 洋志 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20433336)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 酸化ストレス / 転写因子 |
Research Abstract |
研究目的胎盤性アミノペプチダーゼ(P-LAP)は、主として胎盤に存在するオキシトシン分解酵素であり、子宮内膜癌や卵巣癌でもその癌細胞に発現している。我々のグループは、オキシトシンは癌増殖抑制作用があり、P-LAPが過剰に発現している状況下においては、P-LAPによりオキシトシンが分解されてしまうため予後不良となることを、子宮内膜癌と卵巣癌において報告した。今回、このP-LAPの発現を制御することにより癌増殖や転移を制御して予後改善に寄与できるかどうかの基礎検討を行った。高い再現性を有するアフィメトリックス社GeneChipアレイを用いて遺伝子解析を実施、婦人科癌に過剰発現する遺伝子群の抽出を行った。我々の予備実験によりP-LAPと予後に関してすでに論文で報告しているが、今回症例数を増やして再現性を検討した。次に、これらの遺伝子群(P-LAPおよびその下流遺伝子群を含む)の関連性をインシリコ実験によりコンピュータ上で仮想組み立て実験を行い,遺伝子発現動態などを予測して,転写因子として作用するターゲット遺伝子を抽出した。その結果、卵巣癌の中で明細胞腺癌にのみ、酸化ストレス関連遺伝子の過剰発現を認めた。また、P-LAPの下流遺伝子にはGLUTなど等の取り込みに関する遺伝子群の作用が関連していること、糖代謝に関連してhepatocyte nuclear factor (HNF)転写因子が過剰発現することにより、P-LAPの発現変化はHNF-1betaの変化と密接に関連することを発見した。そこで、蓄積した卵巣癌検体の遺伝子解析を実施し、明細胞腺癌に過剰発現する遺伝子群のpathway解析を行った。その結果、HNF-1beta遺伝子下流にはP-LAP遺伝子群が存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P-LAP遺伝子群は糖代謝転写因子であるHNF-1betaと関連していた。HNF-1betaの過剰発現・ノックアウトによる癌細胞の性格を検討した結果、細胞周期調節因子のリン酸化により細胞周期停止が起こるが、チェックポイント機能不全により細胞死が起こらないことが確認できた。この結果により、我々が以前に報告した、卵巣癌においてP-LAP過剰に発現下では予後不良となる機序は、P-LAPの上流遺伝子であるHNF-1betaの過剰発現によって細胞周期停止は起こるが細胞死は起こらないため引き起こされることが、判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は遺伝子導入関連実験として以下を行う。1.卵巣癌細胞を用いたノックダウン実験: 安定した再現性のあるデータを得るため婦人科癌細胞株(子宮内膜癌、卵巣明細胞腺癌と卵巣漿液性腺癌培養細胞株)を用いる。P-LAP以外にも目的とするターゲット遺伝子候補としてHNF-1betaが抽出されたので、培養細胞を用いて、siRNA法によりP-LAPを含めた候補遺伝子をノックアウトする。その結果、最も発現変動が大きかった遺伝子群のなかで代表的な転写因子を探索する。2.卵巣癌細胞を用いたノックイン実験: 卵巣癌に上記で抽出された目的とするHNF-1beta遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクターを用いて遺伝子導入する。その結果、細胞増殖能、浸潤能が最も促進される転写因子を探索する。遺伝子導入細胞と野生株についてマイクロアレイを行い、どのような遺伝子変化が起こったのか調査する。3.抗癌剤耐性への影響を検索: 培養細胞にP-LAPおよび解毒遺伝子(UGT1A1, ANXA4, ASK1, GPX3, GLRX, SOD2)を導入してCPT-11、CDDPおよびPaclitaxelに対する抗癌剤感受性を比較検討、siRNA法により上記解毒遺伝子をノックアウトし、CPT-11、CDDPおよびPaclitaxelに対する抗癌剤感受性を検討する。4. 抗アポトーシス遺伝子導入による細胞増殖への影響: 培養細胞に抗アポトーシス遺伝子(ACE2)を導入し、P-LAP・HNF-1beta導入の有無による細胞増殖能、TUNEL法によるアポトーシスへの影響を検討、癌培養細胞を用いて、siRNA法により解毒遺伝子(ACE2, Ferritin)をノックアウトし、P-LAP・HNF-1beta導入の有無による細胞増殖能、TUNEL法によるアポトーシスへの影響を検討。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に遺伝子導入関連実験にその費用を当てる。それに伴い、細胞培養、PCR、ウエスタンブロットなどの消耗品に研究費として50万円ほど使用する予定である。学会発表やまとめたデータの論文投稿などにも約20万円使用する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Redox-active iron-induced oxidative stress in the pathogenesis of clear cell carcinoma of the ovary.2011
Author(s)
Yamada Y, Shigetomi H, Onogi A, Haruta S, Kawaguchi R, Yoshida S, Furukawa N, Nagai A, Tanase Y, Tsunemi T, Oi H, Kobayashi H.
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Journal Title
Int J Gynecol Cancer.
Volume: 21
Pages: 1200-7
DOI
Peer Reviewed
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