2012 Fiscal Year Research-status Report
発現タンパクの機能制御に基づいた婦人がんの分子標的治療戦略
Project/Area Number |
23592409
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
古川 直人 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50347556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
吉田 昭三 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40347555)
成瀬 勝彦 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70453165)
重富 洋志 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20433336)
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Keywords | 卵巣癌 / 転写因子 / 細胞周期 |
Research Abstract |
1.卵巣癌細胞を用いたノックダウン実験: 安定した再現性のあるデータを得るため婦人科癌細胞株(子宮内膜癌、卵巣明細胞腺癌と卵巣漿液性腺癌培養細胞株)を用いた。P-LAP以外にも目的とするターゲット遺伝子候補としてHNF-1betaが抽出されたので、培養細胞を用いてsiRNA法によりP-LAPを含めた候補遺伝子をノックアウトした。HNF-1beta遺伝子ノックアウト実験により抗アポトーシス経路、解毒酵素経路、細胞生存、グリコーゲン産生酵素群の著明な変化を確認することができた。それぞれの因子についてはRT-PCRを行いその発現変化を確認した。 2.卵巣癌細胞を用いたノックイン実験: 卵巣癌細胞にHNF-1beta遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクターを用いて遺伝子導入した。その結果、HNF-1beta遺伝子導入によりG2期における細胞周期停止を確認した。ブレオマイシン添加によりDNA障害が起こるとATRが活性化され、その下流のChk1がリン酸化されたが、持続的にリン酸化され、細胞周期がG2停止したままになった。この時点で遺伝子不安定性が上昇し、細胞の悪性度が増した。Chk1のリン酸化が抑制されない理由としてClaspinが浮上した。ClaspinはChk1と結合し不活性化するはずであるが、それがユビキチン化されない状態であった。HNF-1betaとClaspinのユビキチン化に焦点を当てた研究を行っている。 3.抗癌剤耐性への影響を検索: 培養細胞にHNF-1betaを導入してCPT-11、CDDPおよびPaclitaxelに対する抗癌剤感受性を比較検討した結果、HNF-1betaが薬剤耐性に関与していた。現在、培養細胞に抗アポトーシス遺伝子(ACE2)などを導入し、P-LAP・HNF-1beta導入の有無による細胞周期停止への影響を検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣癌細胞に対する遺伝子導入やノックアウト実験は定常的に可能となり、細胞ごとのマイクロアレイ等のgenome-wide gene expression profilingおよびpathway解析も定常的に行えるようになった。今回の新規発見はHNF-1beta過剰発現している予後不良の明細胞腺癌ほど細胞周期回転が遅く、抗癌剤耐性を示すと言われているが、その原因がHNF-1betaによる抗アポトーシス経路、解毒酵素経路、細胞生存、グリコーゲン産生酵素群の過剰発現であることが確認できた。その上流にはDNA修復遺伝子であるATR、Chk1の活性化が存在しており、Chk1のリン酸化が持続するため細胞周期がG2に停止したままとなり、この間遺伝子不安定性が惹起され蓄積され癌の悪性度が高まることが判明した。主に、PIK3CAの異常等が付加されることにより細胞生存へのシグナルが加速された。もともと、明細胞腺癌と類内膜腺癌は子宮内膜症をベースとして発癌することが知られている。月経により、血液中のヘモグロビンに含まれる鉄がフェントン反応を介して強力な酸化ストレスを発生すると考えられる。そのため、Guanine残基に修飾が起こり8-OHdGに変化してしまい、転写がうまく起こらず、例えばARID1Aの遺伝子変異が起こる。その結果、ヒストンH2のユビキチン化が阻害されクロマチン再構築に異常をもたらすことが、癌化の初期反応として考えられた。次に高エストロゲン環境下で発がんするのが類内膜腺癌であり、エストロゲン受容体の過剰発現が関与している一方、明細胞腺癌はエストロゲン受容体が低下しており、エストロゲン依存性の発癌ではない。その原因も鉄による酸化ストレスがエストロゲン受容体のメチル化を惹起させることを確認した。今後は酸化ストレスと発癌に実際に関与するタンパクの機能制御に基づいた分子標的治療を検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.抗アポトーシス遺伝子やChk1, Claspinノックアウトによる細胞増殖への影響:培養細胞を用いてsiRNA法によりACE2, Ferritin, Chk1, Claspinをノックアウトして、P-LAP導入の有無による細胞増殖能、TUNNEL法によるアポトーシスへの影響を検討。 2.P-LAPあるいはChk1, Claspin遺伝子導入による癌細胞の増殖・転移能に関する評価:P-LAPあるいはChk1, Claspin遺伝子導入した培養癌細胞をマウスに移植し、細胞周期・増殖能・転移能について検討。 3.プロテオミクスによるP-LAPあるいはChk1, Claspin下流の特異的蛋白発現解析:我々が予備実験の結果得た予後不良卵巣癌組織に過剰発現しているP-LAP、DPPIV、Osteopontin、ACE2、解毒酵素について、2次元電気泳動と質量分析法を駆使したタンパク質の大規模解析を追加実施して、マイクロアレイによる結果の妥当性を検証。 また、予後不良卵巣癌組織に、P-LAP、DPPIV、Osteopontin、ACE2、解毒酵素あるいはChk1, Claspinを免疫組織染色して、過剰発現しているか確認する。 4.P-LAPあるいはChk1, Claspinおよび関連因子測定キットの開発:健常者20名、正常妊婦20名、良性婦人科疾患50例、卵巣癌50例を対象に、免疫比濁法・ELISAキットを用いて、血中P-LAP、DPPIV、Osteopontin、ACE2あるいはChk1, Claspinを測定し、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を求める。さらに、卵巣癌の中で予後不良と良好でこれらのマーカーが反映するかを測定する。 5.新規マーカーとCA125との比較検討:新規マーカーとCA125を比較して予後との相関を比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に遺伝子導入関連実験に約40万円を使用する予定である。学会発表やまとめたデータの論文投稿などにも約20万円使用する予定である。
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[Journal Article] Modulation of estrogenic action in clear cell carcinoma of the ovary (Review).2012
Author(s)
Tanase Y, Yamada Y, Shigetomi H, Kajihara H, Oonogi A, Yoshizawa Y, Furukawa N, Haruta S, Yoshida S, Sado T, Oi H, Kobayashi H.
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Journal Title
Exp Ther Med.
Volume: 3
Pages: 18-24
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Evaluation of BRCA1 Gene Expression as a Prognostic Marker Peritoneal Cancer.2012
Author(s)
Furukawa N, Nagai A, Kasai T, Ohno S, Shigemitsu Y, Tanase Y, Haruta S, Kawaguchi R, Yoshida S, Oi H, Kobayashi H.
Organizer
14th Biennial Meeting of the International Gynecologic Cancer Society
Place of Presentation
Canada
Year and Date
20121013-20121016
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