2011 Fiscal Year Research-status Report
羊水塞栓症の致死的原因における胎便の役割を解明する
Project/Area Number |
23592410
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
大井 豪一 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10283368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
野口 武俊 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10464661)
常見 泰平 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20599831)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 胎便 / 羊水 / 分娩時出血量 / 羊水塞栓症 |
Research Abstract |
羊水や胎便は凝固関連物質を含むため、これらの母体血中への流入は出血量の増加に繋がる可能性が示唆される。一方、この重篤な症状出現が羊水塞栓症である可能性も否定できない。そこで、羊水が母体血中に流入した時のマーカーとして母体血中SCC値を、胎便流入マーカーとしてSTNを用いて、分娩時の羊水や胎便の流入により分娩時の出血が増量するか否かを捉えるべく、以下の3項目を検討した。1. 産褥期における血中SCCとSTN値、2. 胎便混濁と清澄羊水分娩時における母体出血量の差、3. 出血量と血中SCCとSTN値の関連性である。結果1. 血中SCC値の平均±標準偏差値は5.3±1.9ng/mlであり、一般の正常閾値である1.5 ng/mlより高値を示した。また、血中STN値の平均±標準偏差値は19.3±7.1ng/mlであり、一般の正常閾値45.0 IU/mlに比して上昇を認めなかった。分娩時に羊水が母体血中に流入する可能性が示唆された。結果2. 羊水混濁時と清澄羊水時の分娩時出血量を以下の2項目において比較すると、1)直後の出血量:混濁453±182ml, 清澄76±324ml(平均出血量±標準偏差)2)総出血量:混濁525±241ml, 3清澄451±335mlであった。Mann-Whitney U-testによると、分娩直後の出血量においてP=0.0381と有意差を認めた。結果3. 出血量500ml以上と未満における、各マーカー1)SCCと2)STN値を比較すると1)500ml以上5.5±2.3 IU/ml, 500ml未満5.1±1.8 IU/ml(平均値±標準偏差)、2)500ml以上17.1±5.0 IU/ml, 500ml未満19.2±8.0 IU/mlであり、Mann-Whitney U-testにおいて両マーカーとも有意差を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
羊水中に多く含まれているSCCが、分娩時に母体血中に入ったために分娩後2時間以内の産褥期採血において、異常高値を示したものと思われる。また、胎便混濁時の分娩直後における出血は、清澄羊水時のそれに比較して有意差を認めるほど多かった。これは、胎便が混入した場合に、出血量が多いことを意味する結果かもしれない。しかし、母体血中のSTN値は胎便混濁時であっても高値となっておらず、本当に分娩時に羊水や胎便が流入しているかを先ずは証明しなければならない。そのためには、現時点において経時的にこれらのマーカー値を測定する以外に、現在この疑問に対する解答を導ける手段が存在しない。今後、陣痛発来入院時、分娩2時間以内の産褥期、産褥期3-4日目の3回において同採血をし、経時的にこれらマーカー値がどのように変動するかを観察しなければならない。当初一年目にこの結果を出した後に、胎便中の凝固活性物質の有無をELISAにより測定する計画であったため、多少の遅れを示していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 羊水や胎便成分が分娩時に流入しているかを、陣痛発来入院時、分娩2時間以内の産褥期、産褥期3-4日目の3回で経時的採血することにより答えを導く。2. 各マーカーの経時的な差を比較し、再度羊水や胎便が母体血中に流入した時の分娩時の出血量がどうなるかを検討する。3. 羊水中に凝固活性化能力が存在することは、いくつかの既存論文において証明されている。この同じ凝固活性が胎便中にも存在するか否かをELISA法にて測定することにより検討する。4. アナフィラキシー様反応が羊水塞栓症の原因の一つとして考えられているため、アレルギー誘発のエフェクターであるIL-13が、羊水及び胎便中に存在しないかをELISA法を用いて測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 物品費1)母体血中のSCC, STN,C3,C4,FDP-DDを経時的に測定し、羊水や胎便の流入が正常分娩時に起こっているのかを確認する。N=30-40 金額 370,000円2) 凝固活性およびアナフィラキシー様反応関連物質の測定ELISAキットの購入対象:(1)MMP-2/MMP-9/TIMP-1/TIMP-2、(2)MCP-1、(3)IL-1β/IL-6/IL-8/IL-13、(4)IGFBP-1、(5)Midkine、(6)PAPP-A、(7)Tissue Factor, (8)Tissue factor pathway inhibitor (TFPI), (9)過酸化脂質, (10)Prothrombin fragment F1+2, (11)Factor Xa活性, (12)Thromboxane B2 N=4-8 金額870,000円2. 旅費 金額100,000円 3. その他 110,000円 1-3. 合計金額:154,000円
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