2012 Fiscal Year Research-status Report
羊水塞栓症の致死的原因における胎便の役割を解明する
Project/Area Number |
23592410
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
大井 豪一 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10283368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
野口 武俊 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10464661)
常見 泰平 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20599831)
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Keywords | 羊水塞栓症 / SCC / STN / 胎便 / 羊水 |
Research Abstract |
1. 羊水流入による母体出血量の変化 清澄羊水が母体血中に流入した時の母体出血量の変化を、羊水特異マーカーであるSCC (squamous cell carcinoma antigen)を用いて検討した。陣痛発来時と分娩後2時間以内の正常分娩であった妊婦の血清を用いSCCを測定した。SCC値を陣痛発来時と分娩後2時間以内で比較すると有意差をもって分娩後2時間以内の値が高値となった。また、SCC値の増加率と母体出血量を比較することで、羊水が母体血中に多く流入した場合の母体出血量の変化を統計学的に検討した。結果としては、羊水流入量と母体出血量に有意差を認めなかった。以上より、正常分娩時においても羊水は母体血中に流入しており、羊水流入量は母体分娩後出血量に影響が無いことが証明された。これにより母体血中へ胎便成分が流入した時の分娩時出血量の変化を検討するための基礎データが構築された。 2. 胎便流入による母体出血量の変化 分娩時に母体血中に羊水を含む胎児成分が流入していることが証明されたため、STN (Sialyl Tn)値を用い胎便流入による母体出血量の変化を検討した。胎便中にはムチンの糖鎖であるSTNが多く含まれているため、分娩後2時間以内のSTN値が陣痛発来時STN値に比較し高値となっていれば、母体血中に胎便が流入したことになる。これにより、胎便成分の母体血中への流入が母体とうい生体にどのような影響を及ぼすかを検討することが可能となる。 現在STN値が分娩2時間以内において高値となった症例は2症例のみであり、統計学的差を検定できない。症例数を増加し検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
胎便混濁を認めた症例において、陣痛発来入院時の母体血中STN値に比し分娩2時間以内のSTN値が高値となる症例を集積することに困難を要している。(研究の同意を得れて、更にこの基準に相当する分娩数が期待していた数字より極端に少ないため)
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Strategy for Future Research Activity |
1. 胎便中の凝固および線溶能をELISAによる測定をすることにより、胎便が母体血中に入った時の出血量の変化に対する生体反応の病態生理を確立する。 2. 分娩時胎便混濁があり、母体血中のSTN値が陣痛入院時の値に比し分娩2時間後以内の値において高値となる症例を集積すること。【胎便がalternative convertase C3bBbpの増加によって補体活性化第2経路を活性化するという報告があるため、胎便流入時における(血清中STN高値)母体血中C3濃度の低下を認めるかを、実際の分娩時症例より検討する。】 3. 2を集積し、母体血中の補体や分娩時出血量との関連性に関し統計学的に検討する。 4. 胎便が母体血中に流入した時の変化を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.物品費 1) 胎便中の凝固および線溶能を市販のELISA kitを用いて測定する。【胎便懸濁液を作製し以下の項目を測定する。①MMP-2/MMP-9/TIMP-1/TIMP-2、②MCP-1、③IL-1β/IL-6/IL-8/IL-13、④IGFBP-1、⑤Midkine、⑥PAPP-A、⑦Tissue Factor, ⑧Tissue factor pathway inhibitor (TFPI), ⑨過酸化脂質, ⑩Prothrombin fragment F1+2, ⑪Factor Xa活性, ⑫Thromboxane B2 N=4-8 金額1070,000円】 2) 症例数の集積を図るため従来通り、母体血中SCC, STN値、補体価、Dダイマーの測定をする。【BML㈱に測定依頼をする。N=60-80 金額 860,000円】 3) 分娩直後に摘出した子宮を用いて、胎児成分(胎便も含め)に対する抗体を用いた免疫染色を実施し、羊水塞栓症ではない分娩においても母体血中へ胎児成分(胎便も含め)が実際に流入していることを証明する。また、この時の、子宮間質における反応も同時に検討する。【TKH-2、ケラチン、C3a、C5a、マクロファージ、好中球の免疫染色 N=8 金額700,000円】 2. 旅費 金額100,000円 3. その他 110,000円 合計金額:2,840,000円
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