2011 Fiscal Year Research-status Report
低酸素・内分泌環境における子宮内膜の血管新生因子の発現調整
Project/Area Number |
23592426
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
神崎 秀陽 関西医科大学, 医学部, 教授 (80135566)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生殖医学 |
Research Abstract |
月経周期の過程において子宮内膜機能調節の要となるのは血管新生であり、これを制御する血管新生因子の調節機構や役割を解明する必要がある。血管新生因子として血管新生の中心的な役割を担っている血管内皮細胞増殖因子(VEGF)がある。さらに、VEGFと共に重要な血管新生因子として、ケモカインであるstromal cell-derived factor 1 (SDF-1/CXCL12)が知られている。SDF-1は、臓器特異的な血管形成に必須であり、VEGFと共に骨髄に由来する血管内皮前駆細胞を動員して血管形成を促している。ヒト子宮内膜において低酸素刺激によるVEGF、SDF-1の遺伝子発現および分泌能の変化を明らかとすることを目的とした。研究材料は、患者の同意のもとに、各種良性病変に対して行われる子宮摘出手術、不妊検査の一環として行う子宮内膜組織(日付)診、子宮内容掻爬術などで得られた組織を採取した。分子生物学的機能解析のために、内膜組織を機械的およびコラゲネースを用いて酵素的に融解して、ヒト子宮内膜間質細胞の分離培養を行った。間質細胞を異なる酸素条件下(低酸素の2%、通常酸素の20%)で48時間培養した後に、細胞からRNAを抽出・精製し、cDNAを作成してリアルタイムPCR法を行った。低酸素刺激は、VEGF mRNA発現を誘導したが、SDF-1 mRNA発現を抑制することが判明した。さらに低酸素と通常酸素下で2、6、24、48時間培養して回収した培養液中のVEGFとSDF-1をELISAで測定して、時間依存的な血管新生因子の分泌動態を検討した。低酸素刺激はVEGF分泌能を亢進し、SDF-1分泌能を抑制することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト子宮内膜で低酸素刺激によるVEGF、SDF-1の遺伝子発現および分泌能の変化を明らかとすることを目的としている。低酸素刺激はVEGF mRNA発現を誘導したが、SDF-1発現を抑制するという知見を得ている。さらに血管新生因子の分泌能についても確認しつつあり、計画は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素誘導因子(HIF)αの発現とその阻害剤による血管新生因子への影響を検討する。低酸素環境で間質細胞からVEGF分泌が誘導されることが判明した。VEGFの転写を促進する蛋白で転写因子として知られているHIFαの発現変化を同定し、その阻害剤による血管新生因子の分泌能への影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の実験を継続しつつ、低酸素環境で間質細胞からVEGF分泌が誘導されることが判明したため、VEGFの転写を促進する蛋白で転写因子として知られているHIFαの発現変化を明らかにする。低酸素環境で培養された間質細胞から蛋白を抽出して、HIFαのモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロット法にて発現するHIFαのバンドを確認する。HIFαが直接的に血管新生因子を制御するかを、HIFα阻害剤を同時添加して検討する。セレコキシブ(COX-2抑制剤)、エキノマイシン、17-AAGなどの各種HIFα阻害剤による血管新生因子の変化を解析を行う予定である
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