2011 Fiscal Year Research-status Report
オーダーメード化学療法を目指した抗癌剤感受性検査の判定基準の策定
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23592434
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
沖 明典 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60334067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 裕之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40158415)
水口 剛雄 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40372396)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 癌 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
株同士で相対的に規定している場合がある。臨床的な薬剤「耐性」とは、実際に薬剤を投与した患者で奏功しなかった場合を指すが、基礎論文報告ではある細胞株に低濃度の抗癌剤を接触させて生存した細胞を経代することにより薬剤耐性株と称する場合がある。この場合は親株と比較して相対的に耐性となっただけであるが、耐性の言葉が一人歩きして絶対的な耐性と混同されているケースが良くある。一方、「感受性」に関しては報告が少なく、投与により腫瘍が縮小・消失した場合に後方視的に「感受性」だったと判定することがほとんどである。抗癌剤の薬物動態で求められる、最大血中濃度(PPC)で12―24時間接触させて細胞死が誘導された場合と定義としている報告があるが、実際にヒトに抗癌剤を投与した場合、血中濃度はPPCから急速に減少する通常二相性の濃度曲線を示す。我々が樹立した細胞株TXO203のようにその化学療法で腫瘍を消滅させ得たことが証明された腫瘍由来の細胞株はほとんど存在しないため、絶対的な臨床的「感受性」を示す細胞のin vitro感受性検査は皆無に等しく、絶対的な抗癌剤「感受性」基準が策定されなかった原因ではないかと思われる。 そこで、今回TXO203株で得られたin vitro感受性試験のデータを「感受性」の絶対的な基準として、臨床的に化学療法が行れた症例由来の新規樹立細胞株をその臨床奏功程度ごとに評価することによって、臨床的に意味のある抗癌剤「感受性」・「耐性」の判定基準を策定することを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災により、実験室内への立ち入り禁止期間と既存の実験機器の再整備に時間を要したことと、同時期に臨床施設の異動があり、そこでの臨床活動への集中と震災復旧活動、また、臨床研究再開や研究申請の遅れにより計画がやや遅くなっている。 現在ではほぼ復旧しており、今後実験を再開していける目処が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
実臨床でパクリタキセルが奏功したことが確認されている、卵巣癌IV期症例由来の細胞株TXO203を研究の中心とする。このパクリタキセル「絶対感受性」株のin vitro感受性検査値を様々な角度から分析し、実際のパクリタキセル投与量の薬物動態学的な測定値をパクリタキセルのinformation formから入手、PPCや体内での薬物濃度の半減期、AUC値を基に、in vivoにできるだけ近い薬剤接触状況を設定する。その状況でのin vitro感受性検査の値を確認する。これまでに臨床検体から樹立され、抗癌剤の感受性が確認でき得る細胞株を用いて、TXO203株と同様の感受性検査を行い、臨床成績との比較からパクリタキセル「感受性」、「耐性」の判定を行う。また、初代細胞培養を実施して更なる感受性を検討できる細胞株の蓄積を図る。これらのことは昨年の予定であったが、震災により研究施設や研究システムの立て直しに時間を要したため本年もこの研究項目を継続する。なお、実験がはかどった場合はさまざまな薬剤に感受性であることがわかっているTXO203の基準を用いてパクリタキセル以外の抗癌剤に対しても同様の基準が策定できないかを実験して検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養用の培地やフラスコなどの消耗品を主な使途となる。実験の進捗状況によっては抗癌剤の購入や新規樹立細胞株の性状検査の費用が必要となることが見込まれる。
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