2012 Fiscal Year Research-status Report
癌幹細胞を標的とした婦人科癌治療ならびに腫瘍細胞イメージングシステムの構築
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23592439
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高倉 正博 金沢大学, 大学病院, 助教 (20313661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
京 哲 金沢大学, 医学系, 講師 (50272969)
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Keywords | がん幹細胞 / ウイルス療法 / 末梢血中腫瘍細胞 |
Research Abstract |
本研究ではテロメラーゼが活性化された細胞でのみ増殖可能な改変型アデノウイルス(Telomerase-specific replication adenovirus: TRAD)を用いた難治性婦人科癌の治療、特に癌幹細胞をターゲットとした治療の開発を第一の目的としている。我々はTRADのマウス卵巣癌腹膜播種モデルにおける有用性を示してきたが(Cancer Gene Ther. 2010; 17:11-9)、本研究ではさらに癌幹細胞に対する有効性にフォーカスして抗腫瘍効果の解析と臨床応用に向けた検討を行った。平成24年度は種々の卵巣癌細胞株においてCD117陽性かつCD44陽性細胞の細胞群をがん幹細胞候補として同定し、これを対象とした検討を行った。CD117+/CD44+細胞群は他に比してより高い増殖能と造腫瘍能を認めた。また抗癌剤シスプラチンに対して抵抗性を示した。これに対しTRADはCD117+/CD44+細胞群に対して他分画に比べて高い殺細胞効果を示した。 第二の目的はTRADを応用したGFP発現型TRADを用いた癌細胞イメージング技術の確立と実用化に向けた臨床的意義の解明である。具体的には末梢血中の極少数の腫瘍細胞(circulating tumor cells: CTC)を GFP発現型TRADを感染させることで発光させ可視化するものである。平成24年度は婦人科癌症例に対して行なってきたCTC検出実験の結果を英文誌に報告した(Br J Cancer. 2012; 107(3): 448-54)。子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌などの初発・再発を含む婦人科癌症例53例での検討において約40%の症例でCTCが認められた。CTCは臨床進行期や病理組織型といった既存の臨床病理学的因子との間には相関は認められなかったが、治療開始後もCTCが存在し続ける症例は予後不良であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①TRADの婦人科癌幹細胞に対する効果の検討 In vitroの実験系において卵巣がん幹細胞に対するTRADの有効性が示唆された。現在、また免疫不全マウスへの皮下への腫瘍細胞の移植によるin vivo実験系でも有効性がしめされつつあことから研究は概ね順調に進行していると考えられる。 ②TRAD-GFPを用いた末梢血中腫瘍細胞 (CTC) の検出 CD45染色を応用したCTC検出法を用いることで婦人科癌患者の血液を用いたCTC検出研究を学術誌に報告することができた(本学倫理委員会の承認ならびに個々の症例におけるインフォームド・コンセント取得済み)。CTCは臨床進行期や病理組織型といった既存の因子とは独立した治療効果の鋭敏なマーカーとなりうる可能性が示された。現在も症例を重ねると同時に追跡データを蓄積しており、研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基にして、下記のような実験を予定している。 ①TRADの婦人科癌幹細胞に対する多剤併用効果の検討。婦人科癌幹細胞を用いてTRADの効果を増強する併用薬剤を検討する。分子標的薬にて併用効果が認められればTARDの効果発現に寄与する分子メカニズムの解明にも近づけるものと考えられる。 ②TRAD-GFPを用いた末梢血中腫瘍細胞(CTC)の検出 婦人科癌患者の血液を用いたCTC検出実験をさらに継続する。治療効果マーカーとして有用であることが示されたCTCが予後マーカーともなりうるのかという点に着目して解析を進める
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究においては実験動物の購入ならびに細胞表面抗原を認識するための抗体、細胞培養に必要な培地・プラスチック器具類等の消耗品の購入等の消耗品を主に研究費を使用する予定である。また平成24年度に予定していた動物実験の一部は次年度に行う予定としたため、それに伴う費用は繰り越しとした。必要に応じてDNAシークエンシングやDNAマイクロアレイなどの実験も追加する予定であるが、これらに関しては外注となるため、それに関する費用も追加される可能性がある。また研究結果の報告のための学会発表あるいは論文発表に関する経費も計上する(旅費、英文チェック、論文掲載料等)。なお、本研究に使用するウイルス(TRADおよびTRAD-GFP)はオンコリス・バイオファーマ(株)との共同研究契約(締結済み)に基づき同社より供給される。
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[Journal Article] Circulating tumour cells detected by a novel adenovirus-mediated system may be a potent therapeutic marker in gynaecological cancers.2012
Author(s)
Takakura M, Kyo S, Nakamura M, Maida Y, Mizumoto Y, Bono Y, Zhang X, Hashimoto Y, Urata Y, Fujiwara T, Inoue M.
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Journal Title
Br J Cancer
Volume: 107
Pages: 448-454
DOI
Peer Reviewed
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