2012 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌における間質細胞・間葉系幹細胞による免疫抑制機構の解明と克服法の開発
Project/Area Number |
23592464
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩田 卓 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30296652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 知信 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20199334)
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Keywords | 骨髄由来間葉系幹細胞 / 婦人科癌 |
Research Abstract |
本研究では、癌間質の由来の一つとされる骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)に着目し、間質細胞と免疫細胞、癌細胞の三者の相互作用を分子・細胞レベルで解析し、癌微少環境における間質細胞の意義を腫瘍免疫学的見地から解明することを目的とする。MSCとしては、PDGFR+, Sca1+細胞(PαS細胞)を用いて解析を行った。本年度は、昨年度樹立したマウスモデルを用いて、腫瘍浸潤MSC (Tumor infiltrating PαS (Ti-PαS))を単離し解析した。癌細胞をdsRED遺伝子で蛍光で標識し、この腫瘍をGFPマウスに皮下移植すると、腫瘍組織内より、GFP+, dsRED-, CD45-, TER119-, PDGFR+, Sca1+細胞をとしてTi-PαSが単離できた。GFP+, dsRED-, CD45-, TER119-で、PDGFR+, Sca1+以外の分画をTi-nonPαSとしてTi-PαSと性質を比較した。Ti-PαSはTi-nonPαSに比べ、増殖が速く、一細胞からのクローン樹立効率が、有意に優っていた。また、培養をしていない新鮮な状態での、両者の遺伝子発現をRT-PCRで解析した。その結果、いくつかの免疫抑制因子の発現がTi-PαSでTi-nonPαSに比べ数倍高発現していることが分かった。以上より、がん組織の間質にあるPαS細胞は、免疫抑制分子の産生を通して、免疫抑制的な腫瘍微小環境の構築に関与している可能性が示唆された。また、本マウスモデルにおいて、腫瘍の所属リンパ節でもPαS細胞の存在が確認できたことから、PαS細胞はがん免疫応答を惹起するのに重要なセンチネルリンパ節においても何らかの免疫抑制を誘導している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、昨年度確立したマウスモデルで、実際に腫瘍中のMSC(Ti-PαS細胞)をがん細胞のコンタミネーションがほとんどない状態で単離し、解析することに成功した。単離したTi-PαSは、培養を経ない新鮮な状態でも、培養した状態でも解析可能であり、今後このモデルを用いて、がん局所のMSCの性質をさらに解明、がんの悪性形質にどのように影響を与えるかが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降の研究は、樹立したマウスモデルにおいて、分離した腫瘍浸潤MSCの性質を以下の実験を行い解析していく予定である。 1.Ti-PαS細胞または、所属リンパ節のPαS細胞の発現遺伝子をGene Chipを用いて網羅的に解析し、骨髄MSCもしくは、Ti-nonPαS細胞集団、または他のリンパ節のPαS細胞と比較することにより、腫瘍組織におけるPαSの性質を解析する。また、Ti-PαSのMSCとしての多分化能も検討する。 2.Ti-PαSが免疫細胞に与える影響をin vitroで解析する。両者を共培養し、免疫細胞が受ける影響を免疫細胞の表面マーカー発現、サイトカイン産生、抑制性のDC(regulatory DC: DCreg)や制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)誘導能により評価する。 3.Ti-PαSが抗腫瘍免疫に与える影響をin vivoで評価する。上記マウスモデルにおいて分離した腫瘍浸潤MSCとマウス卵巣癌細胞株を混合してマウスに皮下移植し、Ti-PαSが癌細胞の増殖、及び、抗腫瘍免疫応答に与える影響を評価する。 4.ヒトでの評価。ヒト卵巣がん組織または、卵巣がん患者の末梢血より二つのマーカーで腫瘍浸潤MSCを分離し、その性質を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果で有り、平成25年度の研究費と合わせて消耗品に使用する。 平成25年度の研究費は主に消耗品、旅費、論文投稿料などに使用予定である。消耗品としては、MSCの染色に必要な抗体の購入、各種免疫細胞の染色に必要な抗体の購入、Gene Chipの購入、動物実験のための動物購入と飼育費、シャーレなどの一般的な培養の為の試薬と器具の購入、プライマーなどの一般的な分子生物学的実験の為の試薬と器具の購入に使用する。旅費は、本研究の成果発表の為、がん免疫学会、産婦人科学会などの学会の参加のために使用する。
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