2011 Fiscal Year Research-status Report
前庭神経系の可塑性における抗うつ薬の役割に関する研究
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23592484
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
下郡 博明 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70226273)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 抗うつ薬 / 前庭眼反射 / CREB |
Research Abstract |
CREBとはcAMP応答配列結合ともいわれる脳細胞の核の中に存在する可塑性の分子として注目されている。現在使用されている抗うつ薬の作用機序にはCREBの活性化を引き起こすことでBDNFの産生を促進して神経細胞再生に寄与することが分かっており、このような作用は海馬では確認されている。我々は過去の研究においてモルモットの一側前庭障害を作成すると一過性に前庭神経節細胞にリン酸化CREBが発現することを認めている。また、ラット迷路破壊後の前庭神経核にリン酸化CREBが発現する報告もある。このようなことから、前庭神経系もCREBのレギュレーションを受けている系であることは間違いなく、これを応用して前庭神経機能回復に寄与できる可能性もある。このたびはモルモットを用いて抗うつ薬全身投与が前庭神経系に与える影響を検討した。用いた抗うつ薬はミルナシプランである。ミルナシプランは、抗うつ薬の作用としては弱いが使用しやすい薬剤である。ハートレイ系白色モルモットを用いた。まずヒトに対するミルナシプランの極量の2~3倍量を連日腹腔内投与し、前庭眼反射に与える影響を観察したところ、特に前庭眼反射への影響は認めず、また行動学的にも異常をきたさないことが分かった。次にミルナシプラン通常使用量3群(1日投与量が25mg錠の1/2錠量、1錠量、2錠量の3群)を作成し、30日間連日腹腔内投与を行った。その後、海馬、前庭神経節、前庭神経核のリン酸化CREBを免疫染色で検討した。海馬領域ではリン酸化CREBを同定できたが前庭神経節、前庭神経核では同定できなかった。ミルナシプラン以外の抗うつ薬が適切なのか、免疫染色の感度では同定できないリン酸化CREBのup regulationが生じているのかを確認することが今後の課題であると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミルナシプランの慢性投与で海馬領域でのリン酸化CREBが発現するという一つの新たな知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
抗うつ薬、を実臨床上で強力なセルトラリンに変更して同様の実験を行ってみる予定である。また、前庭神経節、前庭神経核からmRNAを抽出してmRNAレベルでのリン酸化CREBのup regulationを生じる可能性を確認することを検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モルモット、モルモット飼料、セルトラリンの購入費に用いる。
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Research Products
(1 results)