2012 Fiscal Year Research-status Report
神経幹細胞による虚血性内耳障害抑制効果の機序解明の研究
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23592486
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
白馬 伸洋 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70304623)
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Keywords | 内耳虚血 / 内有毛細胞 / 活性酸素 / free radical / therapeutic time window / 神経幹細胞 / 神経栄養因子 / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
突発性難聴の原因は未だ不明であるが、多くの症例では背景に内耳虚血が関与すると考えられる。我々は長期生存可能な一過性内耳虚血の動物モデルを作成し、虚血・再灌流による内耳障害メカニズムやその防御法について研究を進めてきた。その結果、内耳虚血により難聴が生じ外リンパ中グルタミン酸濃度が著明に上昇すること、虚血後3日目までに有毛細胞にアポトーシスが生じ脱落が起こることを明らかにした。さらに、活性酸素による内耳障害との関連としては、虚血によりiNOSが誘導され、誘導されたiNOSによって蝸牛外リンパ液中にNOxが発生することや、free radicalが障害の増悪因子であることを解明してきた。また、内耳における再生治療として、神経幹細胞をスナネズミ一過性虚血モデルの内耳に虚血後注入し、虚血障害後に生じる内耳障害について生理的・組織的検討を行った結果、進行する内有毛細胞の脱落変性を抑制し、その治療効果についても明らかにしてきた。しかし、神経幹細胞がどのようにして障害を抑制する機序についての詳細不明である。もし神経幹細胞移植による、虚血障害発生のメカニズムが明らかとなれば、内耳虚血が関与する高度感性難聴疾患すべての治療が可能になる。 今回の研究として、神経幹細胞が内耳虚血障害後に生じるNOxやアポトーシス関連蛋白などの障害増悪因子と、GDNF,bFGF,IGFなどの障害を抑制する神経栄養因子の誘導に影響を及ぼすかを検討するため、スナネズミ胎児の海馬・線条体より採取・培養した神経幹細胞をスナネズミ一過性虚血モデルの内耳に虚血後注入し、虚血障害後に生じるNOx、アポトーシス関連蛋白、GDNF,bFGF,IGFなどの神経栄養因子の誘導について測定を行い、虚血性内耳障害に対する神経幹細胞の有効性を分子生物学的手法を用いて解明するこを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度にはスナネズミの一過性内耳虚血モデルを用いて、スナネズミ胎児の海馬・線条体より採取・培養した神経幹細胞をスナネズミ一過性虚血モデルの内耳に虚血後注入し、虚血障害後に生じる内耳障害についてそのメカニズムについて分子生物学的に検討する、を行うことを計画していたが、以下の実験方法にておおむね計画通りに進行している。 内耳に発現する神経栄養因子蛋白を測定:分子生物学的検討では、虚血障害に伴って内耳に発現する様々な神経栄養因子蛋白量変化を測定する。神経幹細胞を投与した群としていない群の虚血後においてそれぞれ蝸牛を摘出し、摘出した蝸牛を10倍量のlysis bufferに浸漬し、細切後ホモジナイズ、超音波破砕して、遠心分離機により得られた上清の可溶性蛋白質をサンプルとした。サンプル中の蛋白濃度は、BCAプロテインアッセイキット(Pierce)を用いて測定した。Sample bufferで1mg/mlに溶解後、95℃5分間、熱処理し、12.5%SDSポリアクリルアミド電気泳動を行い、ニトロセルロース膜へ転写した。この膜を2.5%スキムミルクでブロッキングし、一次抗体として抗GDNF(sc-328),抗BDNF (sc-546), 抗FGF1(sc-7910),抗FGF2 (sc-79), 抗Ang1 (sc-8357), 抗NT3(sc-547)そして抗EPO (sc-7956) ラビットポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)と反応させ、二次抗体以後はECL Western Blotting Kit(Amersham pharmacia Biotech,Bucks,UK)によって可視化した。画像解析ソフト(NIH Image)を用いて発現バンドの定量的評価を行ない、これら代表的な神経栄養因子の蛋白発現量を比較検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、神経幹細胞の内耳虚血障害に対する抑制効果のメカニズムを分子レベルで解析するためさらに以下の項目について検討予定である。 ① コルチ器おけるiNOS発現の組織学的検討:コルチ器におけるiNOSの発現を観察することで、神経幹細胞非投与と比較検討し、NOx測定後の蝸牛コルチ器切片をウサギiNOS抗体で染色、その発現と活性の局在を観察する予定である。 ② 神経幹細胞の障害抑制効果が認められる期間について検討:難聴防御に関連して、therapeutic time window;治療効果が期待できる期間を考慮して、虚血性内耳障害に対する神経幹細胞の障害抑制効果が認められる期間についても検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費については各計画について以下のように使用する計画である。 ① コルチ器おけるiNOS発現の組織学的検討:コルチ器におけるiNOSの発現を観察のため、免疫染色を行う予定であるが、染色のための抗体、試薬に研究費を使用する予定である。 ② 神経幹細胞の障害抑制効果が認められる期間について検討:内耳虚血後、正円窓から鼓室階に特製のガラス毛細管を用いて神経幹細胞を注入するが、神経幹細胞を採取するための試薬、動物に研究費を使用する予定である。
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