2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592491
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
坂口 博史 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00515223)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 内耳 / 蝸牛 / 難聴 / ミオシン / アクチン / 有毛細胞 / 支持細胞 / 上皮細胞 |
Research Abstract |
【概要】内耳感覚上皮細胞の特徴的な形態を維持する分子機構としてmyosin IIの役割に着目して研究を行っている。まずmyosin IIの免疫染色により同分子が細胞頂側面輪郭のアクチンリングに沿って局在していることを確認した。さらに内耳培養系を用いたmyosin IIの阻害実験により、myosin IIが有毛細胞の円形性と支持細胞の表面積の縮小に関与していることが判明した。【方法と結果】生後2日のマウスコルチ器を摘出し免疫染色によりmyosin IIの各アイソフォームの局在を調べた。その結果、myosin IIbとIIcは有毛細胞と支持細胞の頂側面輪郭を形成するアクチンリングに沿って点状に局在することが判明した。マウスコルチ器の培養系を用いてII型ミオシン特異的阻害剤であるBlebbistatinを添付し阻害実験を行ったところ、有毛細胞頂側面の円形性が失われ、支持細胞の面積が顕著に拡大した。さらに、このような変化は、myosin II阻害を解除すると2時間以内に完全に回復した。【考察と意義】今回の結果から、myosin IIは細胞頂側面輪郭のアクチンリングを収縮して有毛細胞の円形性と支持細胞の表面積を維持していることが示唆された。myosin IIの点状の局在から、非筋細胞においても筋細胞と同様にmyosin IIがサルコメア類似構造を形成してアクチンに収縮力を与えていることが示唆された。myosin II阻害による細胞形態変化が阻害を解除することで短時間に回復することから、myosin IIの細胞頂側面への影響は持続的かつ動的であることが判明した。今回の結果はmyosin IIの以上に起因する遺伝性難聴の病態を解明する手がかりになると考えられ、さらにmyosin IIの活性化の制御による有毛細胞形態と機能の回復を利用した新たな治療につながる可能性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の原点となった仮説、すなわちmyosin IIが内耳感覚上皮細胞の形態形成に関わるという点に関しては、阻害実験とその後の回復実験によって明らかに示すことができた。同実験は複数回施行して定量的な評価も済んでおり、研究の第一歩は既に終了している。定常状態でのmyosin IIの局在解析も免疫染色により示され、特徴的な点状の細胞輪郭に沿った局在が確認されたことで、myosin IIの機能について考える上で次のステップへの手がかりが得られた。研究結果の一部は既に2011年9月にポルトガルのリスボンで開催された第48回Inner Ear Biology Workshopにて報告している。以上より、本研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られたmyosin IIの局在は、同分子が非筋細胞でもサルコメア類似構造を形成してアクチンに収縮力を与えていることを示す結果である。myosin IIを阻害し細胞形態に変化が生じた際に、どのような分子局在の変化を示すか確認することで、myosin IIがどのような方向性で細胞輪郭のアクチンリングに力を及ぼしているか検討する予定である。さらに、myosin IIの活性化には軽鎖のリン酸化が大きく影響することが知られており、軽鎖のリン酸化にはRho結合蛋白キナーゼやミオシン軽鎖キナーゼを含む複数の経路が関与しているため、それぞれの経路が内耳においてどのように影響するか確認する予定である。具体的には今回と同様の細胞培養系を用いて、各酵素に対する阻害効果を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同様に、組織培養および染色に関する消耗品に大部分を用いる予定である。
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