2012 Fiscal Year Research-status Report
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23592491
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
坂口 博史 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00515223)
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Keywords | 内耳 / 有毛細胞 / II型ミオシン / サルコメア / 上皮細胞 / 細胞間結合 / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
聴覚の成立に必須である有毛細胞の特徴的形態の形成に関わる分子機構を解明することを目指して研究を行った。有毛細胞頂側面の輪郭は他の上皮細胞に類をみない円形の形状を示すが、この形成メカニズムについて非筋II型ミオシンに着目して組織学的に検討した。方法としてマウス蝸牛コルチ器を用いて、1)非筋II型ミオシン(NMII)分子の局在解析、2)ミオシンのモーター活性阻害による機能的解析、を行った。 結果1)内耳の免疫組織化学ならびに蛍光標識したNMIICを発現するトランスジェニックマウスを用いてNMIIの各サブタイプの内耳での発現、細胞内局在、および分子配列の極性について調べた。免疫染色によりNMIIの3種のサブタイプ(NMIIA, IIB, IIC)のうち、NMIIBとNMIICが内耳に高発現することが分かった。これらのNMIIは頂側結合に沿う周期的な点として分布し、このNMIIの点状局在はアクチンやα-アクチニンと交互に配置することが分かった。さらにNMIIの頭部と尾部を免疫染色と蛍光標識したNMIIとで二重染色することにより、各々のNMII重合体は筋細胞サルコメアと同様の双極性フィラメントを形成していることが判明した。このことから、NMIIは上皮細胞の頂側結合において重合体を形成し、細胞頂側に存在するアクチン環と結合して筋細胞におけるサルコメアに類似した構造をとることが示唆された。 結果2)NMIIの活性を阻害すると、内耳コルチ器の有毛細胞、支持細胞の頂側面輪郭の周囲長と面積が増大し、また有毛細胞の輪郭が円形性を失うことが判明した。さらに、NMII阻害により形態が変化した細胞に対して阻害を解除すると、正常な形態に回復することが確認された。このことから、NMIIは蝸牛有毛細胞ならびに支持細胞の形態およびサイズを動的に制御していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目標であった1)非筋II型ミオシン(NMII)分子の局在解析、2)ミオシンのモーター活性阻害による機能的解析、に関しては予定した成果を達成でき、英文学術誌に報告済みである。現在はミオシンのモーター活性に関わる上流の因子に関してさらに研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、内耳における非筋II型ミオシンの局在とその機能に関する概要が判明してきた。今後は以下の項目についてさらに研究を進める予定である。 (1)発生期(胎生後期~生後早期)のマウス蝸牛組織を用いて、有毛細胞の頂側面の輪郭が一般的な上皮細胞と同様の多角形から円形へと変化する過程でNMIIの局在と機能がどのように変化するか調べる。特に有毛細胞内側部に生じる陥凹の形成にNMIIが関わっている可能性が示唆されており、同部でのNMIIの極性と分布に関する詳細を調べる予定である。 (2)細胞間相互作用に関与すると予想される各種細胞間接着分子に関して、発生期における細胞内局在の変化を観察し、NMIIとの協調的な作用に関して調べる。上記の細胞形態変化との相関から、これらの分子が形態変化に及ぼす力学的な影響を把握する。 (3)電子顕微鏡により細胞骨格と細胞間結合の微細構造を観察し、NMIIと細胞間結合との機能的関連に関する研究を行う。特に、NMII活性阻害後の蝸牛上皮を透過型電子顕微鏡で観察することにより、NMIIの機能を超微細構造の変化として確認し、かつ形態変化の原因となる細胞骨格の変化をとらえる。この研究により、ミオシンの収縮力の低下から頂側面輪郭周囲のアクチン繊維の密度や方向性に変化が見られると予測している。さらに、細胞内のNMIIの分布についても、免疫電顕の手法で検討し、頂側面からどの程度基底側までNMIIを基盤とするアクチン収縮輪が機能しているのか調べる。 (4)NMII活性を制御する因子としてRhoGTPaseが知られており、上皮におけるアクチン環の収縮にも関わっている可能性が示唆されている。内耳組織におけるNMIIの機能にRhoGTPaseが関与することを、NMII活性阻害実験と同様の実験系を用いて確認し、そのメカニズムの解析を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費も概ね実験動物、研究に必要な各種消耗品を購入するために使用する。それぞれの研究項目に体する研究費の使用計画の詳細は以下の通りである。また、以下の実験の結果を英文学術誌に報告するため、英文校正ならびに投稿費にも一部の研究費を充てる予定である。 (1)発生期(胎生後期~生後早期)のマウス蝸牛組織を用いて、有毛細胞の頂側面の輪郭が一般的な上皮細胞と同様の多角形から円形へと変化する過程を、画像解析からフーリエ級数展開を用いて輪郭各部位の曲面パラメーターを算出し、定量的に解析する。研究費はマウスならびに各種抗体、および画像解析ソフトウェア等の購入に使用する予定である。 (2)細胞間相互作用に関与すると予想される各種細胞間接着分子の局在を免疫染色で同定し、マウス蝸牛感覚上皮の器官培養系を用いてカルシウムのキレ―ションによりアドへレンス結合を阻害して細胞形態の変化を観察する。研究費用はマウスと培養用器具(ディッシュ、ピペット等)および免疫染色用試薬、阻害剤(カルシウムキレーター:BAPTA等)などの購入に充てる予定である。 (3)NMII阻害後の細胞骨格と細胞間結合の微細構造の変化を電子顕微鏡を用いて観察する。研究費はNMII阻害用の試薬、透過型電子顕微鏡のサンプル作成のための試薬(エポン樹脂、固定剤、免疫電顕用の抗体)や各種消耗品(セッシ、グリッド等)などに使用する予定である。 (4)RhoGTPase活性およびMLCK活性が細胞形態に及ぼす影響についてNMII活性阻害実験と同様の培養実験系を用いて確認する。各種のRhoGTPase阻害剤とMLCK阻害剤の購入ならびに培養、染色用の試薬と消耗品に研究費を使用する予定である。
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[Journal Article] NMII Forms a Contractile Transcellular Sarcomeric Network to Regulate Apical Cell Junctions and Tissue Geometry.2013
Author(s)
Ebrahim S, Fujita T, Millis BA, Kozin E, Ma X, Kawamoto S, Baird MA, Davidson M, Yonemura S, Hisa Y, Conti MA, Adelstein RS, Sakaguchi H, Kachar B
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Journal Title
Current Biology
Volume: 23(8)
Pages: 731-6
DOI
Peer Reviewed
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