2012 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴う蝸牛血液-内耳関門の変化と加齢性難聴の臨床
Project/Area Number |
23592500
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
鈴木 光也 東邦大学, 医学部, 教授 (50302724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 幸士 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50323548)
樫尾 明憲 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20451809)
池宮城 慶寛 東邦大学, 医学部, 助教 (50439931)
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Keywords | C57BL/6 マウス / 加齢性難聴 / 血管条 / 毛細血管基底膜 / 免疫組織学 / IgG / ヘパラン硫酸プロテオグリカン |
Research Abstract |
はじめに)加齢性難聴の機序としては4つの型が考えられているがその中の1つに血管条型加齢性難聴がある。昨年度の研究において6カ月から12カ月のC57BL/6マウスでは血管条毛細血管基底膜の陰性荷電が減少することが明らかとなり、基底膜の細胞外マトリックスに変化が生じることが示唆されている。そこで免疫組織学的手法を用いて血管条およびラセン靭帯の毛細血管基底膜の細胞外マトリックスの構成を継時的に観察した。 方法)実験には血管条型加齢性難聴のモデルとして知られるC57BL/6マウスを使用し、生後 3 日, 8週, 12 週と15カ月目の4群に分けた。各群のマウスの側頭骨を摘出し、10%パラフォルムアルデヒドで浸漬固定した後にパラフィン包埋を行った。蝸牛軸に沿って5μm の切片を作成し、一次抗体として抗マウスIgG抗体および抗マウスヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)抗体を用いてABC法を施行し、血管条およびラセン靭帯の毛細血管基底膜を400倍光学顕微鏡で観察した。 結果)生後3日目群では血管条とラセン靭帯に抗マウスIgG抗体による反応は見られなかったが、生後8週では血管条の辺縁細胞に抗マウスIgG抗体による反応が認められた。生後12 週と15カ月目では血管条毛細血管基底膜において抗マウスIgG抗体による反応が確認できた。抗マウスヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)抗体による反応は生後3日目群では、血管条において強く認められたが、15カ月群では血管条の辺縁細胞にのみ限局しており毛細血管周囲には認められなかった。以上の結果から、加齢とともに血管条毛細血管基底膜にIgG沈着し、基底膜を構成する細胞外マトリックスが変化するために、血管条型加齢性難聴が生じる可能性が考えられた。現在、生後8および12週齢群における血管条及びラセン靭帯のHSPGの分布を観察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のゴールは、加齢性難聴に対する内耳毛細血管、中でも血管条の毛細血管の選択的透過性の変化の有無とその影響を解明することである。 血液 -内リンパ関門の変化については血管条毛細血管を、また血液-外リンパ関門の変化はラセン靭帯の毛細血管と半規管膨大部の毛細血管を対象として観察した結果、加齢に伴って血管条毛細血管の基底膜陰性荷電が選択的に減少することが明らかとなった。この結果は、血管条毛細血管基底膜の状態が加齢によって影響されることを示唆しており、興味深い知見である。何らかの機序によって血管条毛細血管の基底膜が障害され、基底膜陰性荷電を構成するヘパラン硫酸の分布が変化した可能性が考えられたため、その機序を分子生物学的手法によって検討した。その結果、C57/BL/6マウスにおいて、血管条毛細血管にIgG の沈着が生じ、それに伴ってヘパラン硫酸の分布が変化することが推察された。毛細血管基底膜は血管の透過性にとって重要な存在であることが知られており、加齢とともに血管条毛細血管の透過性が変化することは予想される。これまでの結果は、加齢に伴う内耳毛細血管の透過性の変化を解明するために重要なステップであり、2年目の研究目的を十分に達していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
生後8および12週齢群における血管条及びラセン靭帯のHSPGの分布を観察する。 血管透過性の変化については、1、2、6、12カ月マウスを対象として、HRP 15mgを生食0.1mlに溶かし、マウスの大腿静脈より30秒以上かけて注射した後に大気中に30分間放置する。その後、生食で体内の血液を洗い出してから全身かん流固定および浸漬固定を行う。断頭後、蝸牛を摘出しパラフィンにて包埋後、切片を作製して、1000倍率の光学顕微鏡下に血管条、ラセン靭帯、ラセン唇の毛細血管基底膜および毛細血管内皮細胞外のHRPの局在を月齢別に観察し、加齢における蝸牛毛細血管の透過性の変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.前年度品切れで注文できなかったためH24年度に未使用額が生じた抗体の購入と光学顕微鏡の購入 2.免疫染色に必要な抗体と関連用具の購入 3.新たなマウスの購入費用 4.HRPおよび関連薬剤の購入 5.これまでの研究内容の論文執筆投稿費用 6.データ処理および学会発表、論文執筆に向けて統計ソフトとPCの購入 7.国際学会で研究成果発表および情報収集するための経費 8.国内の学会で研究成果発表および情報収集するための経費
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Research Products
(3 results)