2011 Fiscal Year Research-status Report
加齢性嗅覚障害の病態生理解明とその診断治療法開発のための分子生物学的研究
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23592506
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 健二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40334370)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 嗅神経上皮 / 再生 / 加齢変化 / カロリー制限 |
Research Abstract |
ICRマウスを2群に分け、コントロール食(28kcal/週)とカロリー制限食(18kcal/週)を与え10ヶ月長期飼育したのちolfactory habituation-dishabituation testによる嗅覚の評価を行い、マウスを潅流固定し嗅粘膜の組織切片を作成した。切片にHE染色及び抗olfactory marker protein(OMP)抗体染色を行い嗅神経上皮の変性の度合いを半定量評価したところ、カロリー制限群ではコントロール群に比較して有意に嗅神経上皮の変性が大きかった。また嗅覚検査でもカロリー制限群はコントロール群に比較し反応が悪い傾向にあった。次にカロリー制限が嗅粘膜傷害からの再生過程に及ぼす影響を評価した。C57BL6マウスを2群に分け、上記コントロール食とカロリー制限食を1ヶ月投与ののちメチマゾールで嗅粘膜傷害を惹起し、傷害後1週間目、2ヶ月目でそれぞれマウスを潅流固定し嗅粘膜の組織切片を作成した。切片に抗Ki67抗体と抗OMP抗体による免疫染色を行い傷害後の細胞増殖と神経再生の程度を検討したところ、傷害後1週間の組織でKi67陽性細胞数はカロリー制限群で有意に少なく、また傷害後2ヶ月の組織でカロリー制限群は有意に嗅神経上皮の変性部位が大きかった。これらの結果より、カロリー制限により加齢に伴う嗅粘膜の変性が促進されること、その背景に基底細胞の分裂能低下による傷害時の神経再生の低下があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カロリー制限という全身状態が嗅粘膜の細胞動態に影響を与えうることが組織学的に確認され、今後研究を進める上で最も重要な現象の変化を捉えることに成功した。これにより、今後変化の背景にある分子メカニズムを解析するための道筋がつけられた。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAマイクロアレイ法及びリアルタイムPCR法を用いて、カロリー制限マウスの嗅粘膜でupregulate またはdownregulateされる細胞サイクル、増殖因子などの遺伝子群を同定する。この情報からターゲットを絞り、カロリー制限による嗅神経上皮の基底細胞の増殖能低下の背景にある分子メカニズムの解析を進める。さらにこの分子機構を人為的に制御し、逆に細胞増殖を亢進させることで傷害後の嗅神経上皮の再構築を改善できるかどうかを検討し、将来的な予防治療法の可能性について探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は上記の解析を行うためカロリー制限モデルマウスを再度作成し、傷害後経時的に組織を採取する必要がある。したがって動物の購入費用、カロリー制限食及びコントロール食の購入、抗体等試薬の購入および成果発表のための旅費に研究費を使用する予定である。
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