2012 Fiscal Year Research-status Report
加齢性嗅覚障害の病態生理解明とその診断治療法開発のための分子生物学的研究
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23592506
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 健二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40334370)
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Keywords | 嗅覚 / 加齢変化 / カロリー制限 |
Research Abstract |
嗅神経上皮は生理的状態で神経細胞のターンオーバーがあり、傷害時にはこの機能が賦活化されて組織再生が起こるという高い再生能がある。しかしながら加齢に伴って再生能は低下し、結果として神経上皮の不可逆的な変性が起こる。従って加齢に伴う嗅覚障害克服のための一助として、嗅神経上皮の変性を抑止するための予防戦略が求められている。カロリー制限は長寿遺伝子の発現や酸化ストレスの軽減を介して哺乳動物において寿命、代謝疾患、循環器疾患、神経疾患などさまざまな老化関連疾患の発症を抑える唯一の確実な介入として知られており、耳鼻咽喉科領域では我々の研究グループがマウスにおいてカロリー制限が加齢性難聴の進行を抑止できることを報告している。本研究では末梢嗅覚器においてもカロリー制限によって同様の加齢変化の抑止がみられるかを検討した。【対象と方法】実験1ではICRマウスをコントロール群と32%カロリー制限群に割り付け、それぞれカロリー以外の栄養素を同等に調節した専用のペレットを使用して12か月飼育した。飼育後灌流固定、断頭、頭部を脱灰し嗅粘膜の組織切片を作成し嗅粘膜の神経変性の状態を評価した。実験2ではC57B6マウスを同じくコントロール群とカロリー制限群に割り付け1か月飼育したのちメチマゾールの腹腔内投与で嗅粘膜傷害を惹起させた。傷害後2か月の時点で固定、嗅粘膜の組織切片を作成し、傷害後の最終的な再生の程度を評価した。【結果と考察】実験1ではカロリー制限群ではコントロール群に比較して嗅粘膜における神経変性が大きかった。また実験2においてもカロリー制限群はコントロール群と比較して最終的な嗅神経上皮の再生が不完全であった。以上の結果から、カロリー制限は嗅粘膜においては加齢性の神経上皮変性を悪化させること、またそれは傷害時の不完全な再生の蓄積に基づく可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各実験群の動物モデル作成は終了し、組織学的解析も順調に進行しているが、遺伝子解析や蛋白解析が当初の予定よりも遅れており、今後早急に遂行する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果からカロリー制限は嗅粘膜においては加齢性の神経上皮変性を悪化させること、またそれは傷害時の不完全な再生の蓄積に基づく可能性が示唆されたが、今後はこの現象の背景にある分子生物学的メカニズムを解析するため嗅粘膜における遺伝子発現、蛋白発現の変化をDNAマイクロアレイやPCR,ウェスタンブロット等で解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の分子生物学的解析に必要となる試薬の購入が中心となる。これに加えて継続遂行中の組織学的解析に必要な抗体等の試薬を購入する予定である。
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Research Products
(4 results)