2012 Fiscal Year Research-status Report
扁桃病巣疾患における病態解明と扁桃摘出術の有用性に関する基礎的エビデンス
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23592518
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
高原 幹 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50322904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長門 利純 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80431419)
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Keywords | 咽頭科学 / 口蓋扁桃 / 扁桃病巣疾患 / IgA腎症 / APRIL / CXCR3 |
Research Abstract |
1.ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 IgA腎症扁桃におけるTリンパ球上のケモカインリセプターについて検討した。CCR4、CCR5、CCR6陽性T細胞の割合は習慣性扁桃炎群 、IgA腎症群にて変化は認められなかった。しかし、CXCR3の発現はIgA腎症群にて有意に高い結果となった。次にCpG-ODN刺激後のCXCR3発現の変化では、IgA腎症群にて有意に扁桃T細胞におけるCXCR3陽性細胞の割合が増強していた。更に末梢血におけるT細胞上のCXCR3の発現を検討し、習慣性扁桃炎群と比較してIgA腎症群にて有意に発現が強いことを確認した。またその発現は扁桃摘出術後に有意に低下していた。IgA腎症の腎生検組織では腎糸球体浸潤CXCR3陽性細胞が存在し、その程度と扁桃でのT 細胞上のCXCR3発現度に相関が認められた。 2.IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生 T細胞非依存的にIgAの産生を促すAPRIL(a proliferation-inducing ligand)について検討した。無刺激下では習慣性扁桃炎群もIgA腎症群も差は認められなかった。しかし、CPG-ODN刺激下では、習慣性扁桃炎群に比べ、IgA 腎症扁桃群では有意にAPRILの産生亢進が認められた。次に、CpG-ODN刺激後のB細胞におけるAPRIL受容体の発現は、IgA腎症群において有意に亢進していた。更にIgA腎症扁桃B細胞にてCpG-ODNと同時にAPRILも追加刺激し、IgAの産生亢進を確認した。また、IgA腎症扁桃リンパ球をCpG-ODNと同時にAPRIL受容体阻害抗体存在下で培養し、IgAの産生低下を確認した。末梢血における血清APRILを測定し、習慣性扁桃炎群と比較してIgA腎症群にて有意に値が高く、扁桃摘出術後は有意に低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の科研申請において、無駄のない、かつ余裕を持った研究計画を提出した。そのため、途中で計画の変更がなくスムーズに計画を遂行できた。また、本研究は扁桃摘出術がないと検体が得られず、研究自体が滞るが、昨年度から長年の演題発表や総説執筆などの効果が現れたのか、症例が増え、検体が得られる機会が増加した。今年は今までの結果を論文としてまとめ、報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.上記のCXCR3、APRILの検討は上記検討結果を論文としてまとめる。 2.新たにIgA腎症の血管炎の要因として、血管内皮細胞のフラクタルカイン(CX3CL1)とCD8T細胞などのCX3CR1結合が関与していることが報告されており、扁桃のCX3CR1陽性T細胞がホーミングしている可能性も示唆される。よってIgA腎症と習慣性扁桃炎群の扁桃T細胞上のCX3CR1発現を測定し、比較検討する。 3.IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生においては、濾胞ヘルパーT細胞から分泌されるIL-21がIgAの産生を増強させることが知られており、それに関して検討を進める。実際には扁桃濾胞ヘルパーT細胞数(CD4CXCR5陽性細胞数)をIgA腎症と習慣性扁桃炎群で測定し、比較検討する。また、扁桃単核球培養上清におけるIL-21発現を測定し、疾患群間で差が認められるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リアルタイムPCR試薬、各種抗体、磁気細胞分離システム、免疫染色関連試薬、フローサイトメトリー試薬、ELISA試薬、CpG-ODNなど の消耗品が主となる。本大学には上記の実験に必要な設備自体は整っており、消耗品費のみの経費で研究が遂行できると考える。
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