2012 Fiscal Year Research-status Report
電気刺激による内喉頭筋の再運動化と筋萎縮の抑制に関する研究
Project/Area Number |
23592519
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
片田 彰博 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90281899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国部 勇 旭川医科大学, 医学部, 講師 (40321963)
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Keywords | 機能的電気刺激 / 声門閉鎖運動 / 埋込型電極 / 神経再支配 |
Research Abstract |
本研究の目的は、障害された喉頭機能を回復させるために、麻痺している喉頭の筋に電気刺激を加えて筋収縮を誘発し、固定している声帯を再運動化させることにある。 まず、声門閉鎖運動を誘発する甲状披裂筋を長期間刺激するための埋込型電極をデザインした。電極は縦8㎜、横10㎜、厚さ1㎜のシリコンシートに直径1㎜の電極を3㎜間隔で2列に8個配置した。この電極で実際に声門閉鎖運動が誘発できるのか検討するために、イヌの声帯麻痺モデルを作成した。実際の声帯麻痺患者では、喉頭筋に神経再支配がおこっていても、声帯運動は回復せず、声帯が固定したままとなる。これは、喉頭筋に生じる神経再支配が本来の神経支配とは異なる過誤支配となるためである。本研究では喉頭の再運動化に対する神経再支配の影響を確認するために、モデル動物を反回神経を切断した直後に再吻合した喉頭筋再支配モデルと反回神経切断後に吻合をおこなわない喉頭筋脱神経モデルの2群に分け、電気刺激によって誘発される声門閉鎖運動の違いについて検討した。 神経切断から3ヶ月後に、声帯が固定していることを内視鏡で確認して、麻痺側の甲状披裂筋の表面に埋込型刺激電極を留置した。口から内視鏡を挿入し、電気刺激で誘発される声門閉鎖運動を観察した。切断後に神経吻合をおこなった再支配群の動物では、小さな電気刺激で大きな声門閉鎖運動が誘発され、その調節は容易であった。一方、神経吻合をおこなわなかった脱神経群の動物でも電気刺激によって声門閉鎖運動を誘発することはできるが、より大きな電気刺激が必要であり、その調節も容易ではなかった。 この結果から、喉頭筋の神経再支配の程度にかかわらず、電気刺激による声門閉鎖運動の誘発は可能であるが、喉頭筋が神経再支配を受けているほうが、より効率的に声帯運動を誘発することが可能であり、その調節も容易であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喉頭運動機能の回復を目指した機能的電気刺激の応用には、まず目的とする筋を確実に刺激することができる電極が必要不可欠である。昨年度は新しい電極を開発し、それが実際に使用可能であるかを検証し、使用に耐えうるものであることを確認した。本年度はその電極を用いて麻痺している筋を電気刺激した。その結果、筋の神経再支配の程度によって刺激効率には違いがあるものの、目的とする声門閉鎖運動を誘発することができた。この知見は、本研究の最終目的である、機能的電気刺激による麻痺声帯の再運動化の基盤となるものであり、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、障害された喉頭機能を正常に近い状態に回復させる新しい治療法の確立を最終目標としている。本年度の研究成果から麻痺している甲状披裂筋を電気刺激することによって、声門閉鎖運動を誘発できることが確認できた。しかし、筋の再支配の状態によって刺激効率が大きく異なることから、理想的な刺激パラメーターを検討することが、実際の臨床応用を考える上での重要な課題となる。さらに、電気刺激によって誘発された声帯の運動が、障害された機能の回復に有効に作用するのかを検証しなければならない。電気刺激で誘発した声門閉鎖運動が音声障害や嚥下障害を回復させることを評価する。また、電気刺激が筋線維自体におよぼすダメージや神経再支配に対する影響についても、イヌおよびラットを用いた実験によって検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に、実験動物の購入、手術機器、麻酔用薬品、電極など消耗品を中心に研究費を使用する計画である。現在使用してる電極は試作品であり、長期間の埋込には完全に対応していない。したがって、動物モデル実験と平行して電極の改良をすすめる必要がある。この点については、関連企業の協力を仰ぐ必要があると考えている。また、本研究の遂行に重要な声帯運動を観察する内視鏡のシステムが老朽化しており、画質の低下が著しい。内視鏡の補修および動画記録装置の更新についても研究費を使用しなければならない状況である。
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Research Products
(7 results)