2011 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌の浸潤・転移におけるEMTによる癌幹細胞活性化機構の解明
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23592537
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
太田 一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00326323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 昭久 群馬大学, その他部局等, 准教授 (60275336)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 頭頸部外科学 / 癌幹細胞 / 浸潤・転移 / EMT |
Research Abstract |
本研究では、頭頸部癌の治療効果の向上のため、癌細胞の浸潤・転移のしくみを解明し、そのしくみを基に浸潤・転移を阻止することを目的としている。これまでに、Wntシグナル伝達経路がSnailを介してEMT(Epithelial-Mesenchymal Transition、上皮間葉移行)を誘導することで、MT1-MMPおよびMT2-MMPを活性化させるとともに、癌細胞の浸潤・転移能を獲得させることを見出してきた。そこで、頭頸部癌細胞において、いかにしてWnt/Snailのシグナル伝達経路がEMTを誘導し、癌幹細胞を活性化させ浸潤・転移を促しているかを、in vitroおよびin vivoのレベルで分子生物学的手法および独自の浸潤・転移モデルを用いて解明する。 本年度は、頭頸部癌細胞株にSnail遺伝子を導入し、導入細胞の機能解析を行った。Snailを強発現することで、細胞膜上のE-Cadhrinの発現は減弱し、細胞間接着が外れ、EMTが誘導された。また、Snail導入細胞の運動能を解析したところ、コントロール細胞よりも細胞運動能が亢進していた。また逆に、転移浸潤能の高い癌細胞にSnail-siRNAを導入することでその機能をノックダウンすると、細胞間接着能が強固になるとともに細胞運動能も抑制された。 これからの結果より、頭頸部癌細胞においてもin vitroにおいてWnt/Snailのシグナル伝達経路がEMTを誘導し癌の浸潤・転移を促していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より予定していた頭頸部癌細胞株へのSnail遺伝子の導入も実行できEMTの形質変化が確認でき、癌細胞の浸潤・転移の機能解析のためのin vitro実験も遂行できた。一方、Snail-siRNAを導入することで浸潤・機能の抑制効果も確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のin vitroにおける頭頸部癌細胞でのSnailの発現によるEMT誘導、ならびに癌細胞の浸潤・転移の亢進の結果を踏まえて、in vivo、つまり生体においても同様の現象が再現できるかを検証する。具体的には、我々が開発・確立した鶏卵によるin vivo癌浸潤・転移モデルを用いて、Wnt1あるいはSnailを強発現させた癌細胞が、生体において浸潤・転移能、さらには腫瘍増殖能を獲得するかどうかを検討する。さらに、Snailを強発現した癌細胞が、癌幹細胞としての形質を獲得しているかについて検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額については、当初計画していた細胞培養の維持にかかる費用が軽減されたために発生したが、次年度はin vitroでの癌細胞の機能実験に加え、鶏卵によるin vivo癌浸潤・転移モデルを用いての動物実験を施行するため、予想以上に実験維持費が必要となる可能性があり、次年度使用額で補填する予定である。
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