2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性期統合失調症患者に発症する嚥下障害の実態調査と病態解明のための研究
Project/Area Number |
23592541
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
三枝 英人 日本医科大学, 医学部, 講師 (70287712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 毅 日本医科大学, 医学部, 助教 (80421163)
伊藤 滋朗 日本医科大学, 医学部, 助教 (90515975)
下田 健吾 日本医科大学, 医学部, 講師 (30277529)
朝山 健太郎 日本医科大学, 医学部, 助教 (20373011)
澤谷 篤 日本医科大学, 医学部, 助教 (30449269)
池森 紀夫 日本医科大学, 医学部, 助教 (00350041)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 慢性期統合失調症 / 嚥下障害 |
Research Abstract |
慢性期統合失調症患者に発症した嚥下障害症例において、嚥下障害の発症に至る病歴、向精神薬の内服状況と治療歴、神経学的所見、全身所見と共に嚥下運動の病態生理学的検討を行った。嚥下運動の病態生理学的解析には、嚥下透視検査、内視鏡検査の他に筋電図検査(表面筋電図、hooked wired electrodeによる筋電図)、超音波断層法、咬合圧測定装置、食道内圧測定装置を適宜組み合わせて、多チャンネル同時記録解析装置を用いて行った。その結果、嚥下障害の発症パターンには大まかに分類して4つのものに分けられると考えられた。(1)遅発性ジストニアを合併したもの、(2)遅発性ジスキネジアを合併したもの、(3)その他の疾病が嚥下障害の発症原因であったもの、(4)高度な痩せと栄養不良、全身状態低下以外に有意な異常を認めないもの。(1)(2)については、基本的には向精神薬を非定型のものから選択的作用を有する薬剤へ変更する、中止するなどの精神神経科的な治療が重要なことは言うまでもないが、合併する慢性栄養不良に対する栄養管理を確実に、かつ安全に行うことが重要であることが、どの分類にも共通して考えられた。また、(2)においては、ジスキネジア自体が高度のものであっても、直接的に嚥下運動の障害とはならずに、これに抗するような頸部筋群の二次的な筋緊張性の亢進が嚥下障害の重要な要因となっていることが多く、これに対してはリラクセーション等の理学療法を行うことで、ジスキネジア自体の振幅の低下と共に嚥下障害の軽減が得られることが分かった。(3)については、一例で重症筋無力症が原因であることが判明し、これに対する治療により嚥下障害は改善したが、慢性期統合失調症の患者であっても、きちんと原因検索を行うことが重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
慢性期統合失調症に発症した嚥下障害についての病態生理学的な研究は進んできたが、当大学附属の3施設における疫学的な研究の展開が進んでいない。その理由は、嚥下障害を発症した患者の評価法や、診察方法、観察方法などの基準、更にその対処法が一定化、更に確立していないことが大きな要因であるが、その基準は従来から記述されている方法では必ずしも有用ではないため、新たに作製する必要があるものである。しかし、慢性期統合失調症患者に発症した嚥下障害患者の病態生理学的検討が進むにつれ、その基準化が図れるようになるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性期統合失調症患者に発症した嚥下障害症例において、嚥下障害の発症に至る病歴、向精神薬の内服状況と治療歴、神経学的所見、全身所見と共に嚥下運動の病態生理学的検討を行う。また、その適切な対応法とともに、治療法についての検討を行う。また、当大学附属の3施設における疫学的な検討を進める。可能であれば、当大学関連の精神神経科病院における慢性期統合失調症患者における嚥下障害発症についての、より広い範囲でフィールドワークも展開したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
嚥下障害の病態解析のための動作解析ソフト、往診で行える簡易筋電図装置の購入を行い、更なる解析を進める。また、研究者間での討議を重ね、学術雑誌への症例報告、学会発表を行う。症例がまとまれば海外の学会での報告も視野に入れている。
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