2011 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌におけるシスプラチン感受性規定因子の解明ー網羅的タンパク解析法を用いて
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23592542
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
小川 徹也 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40334940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 和宏 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (60109759)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 頭頸部外科学 / シスプラチン耐性 / 網羅的タンパク解析 |
Research Abstract |
本年度の研究では、ヒト頭頸部癌細胞株を用いてシスプラチン感受性に関連するマーカータンパク質をProteinChip; Systemを用いて検出することを目的として実施した。シスプラチン感受性細胞株とこの感受性株にシスプラチンを暴露し耐性を獲得した耐性獲得細胞株、さらにシスプラチン自然耐性細胞株の3株の比較、検討を行った。その結果、感受性株と考えられるUM-SCC-23とその獲得耐性株であるUM-SCC-23:CDDP-Rとの間で検出量に差が見出された。さらにこれらピークの検出パターンは、自然耐性株であるUM-SCC-6と類似パターンを示した。以上からこれらピークの減弱が獲得耐性に伴うだけではなく、自然耐性においても減弱することから、頭頸部癌における真のシスプラチン耐性化因子と考えられる可能性が示唆された。しかしながら抗癌剤多剤耐性化に伴う減弱とも予想されるため、さらに5-FU耐性細胞株でも同様の解析を行った。しかし5-FU耐性株においては、これらピークの発現は認められ、今回見出されたピークはシスプラチン耐性によってのみ減弱し、シスプラチン耐性に特異的な変化であり、シスプラチン効果予測に有効なマーカーとなる可能性が示唆された。さらに、ExPASy Molecular Biology ServerのSWISS-PROTを用いて、発現タンパクの分子量を基に、近似分子量を持つタンパクの検索を行った。その結果、候補タンパクとして様々な種類が同定された。今後さらに頭頸部癌におけるタンパクレベルからの網羅的解析を行うことで、シスプラチン、耐性化規定因子を精度高く同定するだけでなく、その予後因子をも探索することで、最善の抗癌剤治療法選択、治療効果予測、あるいは減弱したタンパクを導入することにより、シスプラチン感受性を再獲得できる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
○1 SELDI-TOF-MSによるタンパク同定:それぞれの細胞株から抽出したタンパクを抽出した。SELDI-TOF-MS(陽イオン、陰イオン交換チップを使用)を用い、これらを網羅的に解析し、それぞれの細胞株でピークが異なる部分を見出した。さらにこれらのピークを、Swiss ProtのEXPASY proteomics serverを利用して、予測されるタンパクとして同定し得た。以上のように、平成23年度の予定通り、SELDI-TOF-MSを用い、シスプラチン感受性規定因子の同定を行うことができた。○2 MALDI-TOF-MSによるタンパク同定:上述のSELDI-TOF-MSは比較的小さな分子量のタンパク解析を得意とするが、大きな分子量のタンパクはSELDI-TOF-MSは有用ではなく、電気泳動(SDS-PAGE,銀染色)を利用し、この差の見られる部分を直接抽出することで解析を試みた。現在、発現に違いのあったタンパクを切り出し、ゲル内トリプシン消化を施行し、MALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析)で解析し、シスプラチン感受性規定因子と考えられるタンパクを同定している。学術論文としての報告を行う予定である。以上から、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度1. 頭頸部癌シスプラチン感受性株、獲得耐性株、自然耐性株における、同定タンパクの発現の有無と、その相違の確認それぞれの細胞株において、タンパク発現の有無と、その違いを確認する。同定されたタンパクが、すでに抗体として使用できる状況であれば、それらを使用しウエスタンブロッティング法を用い、発現を確認します。抗体が存在しないならば、抗体を作成し、同様にウエスタンブロッティング法を用い、発現を確認する予定である。さらにこれらの結果を基に、それぞれの細胞株で発現の程度に差があるのか、その差が実際のシスプラチン感受性とどのような関連性を持つのか、解析を試みる。本研究では様々なタンパクが同定され、解析されると予想されます。しかしこの平成24年度の研究結果で、さらに精度高く選択することで、より精度の高いシスプラチン感受性規定因子を見出すことが可能となります。平成25年度2. siRNA法、遺伝子導入法を用いたタンパクの発現調節による、感受性変化の確認以上の研究計画・方法で得られたタンパクの発現を調節することで、感受性が実際に変化することを確認し、本研究で得られたタンパクが、真のシスプラチン感受性規定因子であることを証明します。例えば耐性株で発現するタンパクを、siRNA法でノックダウンし、MTT法で感受性が増加すること、あるいは耐性株で減弱するタンパクを、遺伝子導入法で機能獲得し、感受性が増加することを見出せば、得られたタンパクが、真のシスプラチン感受性規定因子であるといえます。以上の研究計画・方法で、真のシスプラチン感受性規定因子を探索、同定、証明します。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SELDI-TOF-MSによるタンパク同定、 MALDI-TOF-MSによるタンパク同定のため、細胞培養試薬や細胞培養器具を物品府として使用する計画である。さらにタンパク解析、抗体費用にも、研究費を使用する計画である。
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Research Products
(8 results)