2011 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌に対するDNA修復阻害遺伝子導入による化学療法および放射線療法増感効果
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23592544
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
山下 拓 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (00296683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 幸仁 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (70317220)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | DNA修復遺伝子 / ウイルスベクター / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
まず二本鎖DNA切断修復に関わる主要蛋白NBS1の変異遺伝子(mNBS1)を導入したウイルスベクターAd-NBS1-GFPおよびコントロールベクターAd-GFPの各種頭頸部扁平上皮癌細胞株に対する導入効率を検討した。その結果、検討したすべての細胞株でMOI=5以上で、ほぼ100%の細胞にベクター由来のGFP蛍光を確認できた。次に使用する細胞株のNBS-1蛋白発現をWestern blottigにて確認した。いずれの細胞株でもNBS1は恒常的に発現していることを確認した。続いてMTTアッセイにて頭頸部扁平上皮癌細胞株に対するAd-NBS1-GFPおよびAd-GFPの抗腫瘍効果をin vitroで検討した。その結果、コントロールベクターAd-GFPは、無治療コントロールに比較しても抗腫瘍効果を示さなかったが、Ad-NBS1-GFPはMOI=5で有意な抗腫瘍効果を示し、またシスプラチンとの併用でさらに抗腫瘍効果を認めた。また中世条件下コメットアッセイを用いて、それぞれの治療群の細胞における二本鎖DNA切断の量を測定した。その結果Ad-NBS1-GFP治療群において二本鎖DNA切断量が有意に高いことが判明した。このことはウイルスベクターにより導入された変異型NBS1が、腫瘍細胞の持つ二本鎖DNA切断修復能を阻害したことが示唆される。またシスプラチン耐性株と感受性株を用いた同様の検討で、Ad-NBS1-GFPはシスプラチン耐性株のシスプラチンに対する感受性を増強することが分かった。以上in vitroの検討において、変異型NBS1遺伝子の頭頸部癌細胞株への導入は、二本鎖DNA切断修復阻害効果を介して抗腫瘍効果を示すことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、変異型NBS1遺伝子を導入したウイルスベクターの頭頸部扁平上皮癌に対する効果をin vitroで検討する計画を立てていた。現在のところMTTアッセイを用いて変異型NBS1遺伝子を導入したウイルスベクターのin vitroでの抗腫瘍効果についての検討を施行でき、また当初予想したものに近い抗腫瘍効果を確認すろことができた。さらに現在頭頸部癌に対して最も多く使用されている抗癌剤シスプラチンとの併用でさらに抗腫瘍効果が期待できることを示すことができた。またシスプラチンとの併用について今回用いた治療ベクターの作用機序の一つと考えられる二本鎖DNA切断修復の阻害作用が働いている可能性についても中性条件下のコメットアッセイで証明された。以上より平成23年度は当初の予定をほぼ順調に達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の目標は、まず当該ウイルスベクターのin vivoでの効果を確認することに主眼をおきたい。また抗癌剤シスプラチンとの併用による相乗効果が期待できるかについてもin vivoで検討したい。具体的にはヌードマウスへの頭頸部扁平上皮癌移植モデルを作成し、ウイルスベクターの腫瘍内注射の効果、また化学療法との併用による治療効果の上乗せの有無につき検討したい。治療効果の判定は、体表からのノギスによる測定、超音波による測定を行い、近似腫瘍体積で検討する予定である。さらに治療効果のメカニズムの検討のため、摘出腫瘍の凍結薄切切片を用いてγH2AX染色を行い腫瘍内での二本鎖DNA切断損傷量の測定、TUNEL法にて腫瘍内アポトーシス細胞数の評価を行う。また肝臓、腎臓、肺を摘出し、ホモジェナイズしたサンプルをPCRにかけ、副反応評価として全身へのウイルス播種の検討を行う。 抗癌剤シスプラチンはまず腫瘍細胞において一本鎖DNA損傷を引き起こし、細胞分裂時にこの一本鎖損傷が二本鎖DNA切断へと変化することが知られている。変異型NBS1は二本鎖DNA切断修復の阻害作用を持つ。そこで一本鎖DNA修復に関わる因子PARPの阻害剤を併用すれば、当該ウイルスベクターの治療効果はさらに強まると予想される。以上の理論に基づき、PARP阻害剤とNBS1の変異遺伝子(mNBS1)を導入したウイルスベクターの併用治療をシスプラチン存在下に行う予定である。この研究においても、治療効果メカニズムの検討のため、摘出腫瘍の凍結薄切切片を用いてγH2AX染色を行い腫瘍内での二本鎖DNA切断損傷量の測定、およびTUNEL法にて腫瘍内アポトーシス細胞数の評価を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、変異型NBS1遺伝子を導入したウイルスベクターの頭頸部扁平上皮癌に対する化学療法増感効果の検討をヌードマウスを用いて行う計画である。6治療群分けを予定しており、それぞれ20匹、計120匹のヌードマウス使用を予定している。一匹9千円のため1080千円を予定している。またMTTアッセイ、γH2AX染色、TUNEL法、PCR、凍結切片作成などに用いる試薬、キットに500千円、ガラス器具は消耗分のみ50千円を予定した。この年は放射線増感効果に関する結果がまとまると考えられ、国内及び米国へ1回ずつそれぞれ50千円、300千円の経費が必要となる見込みである。これには航空券、宿泊料金、学会参加費が含まれる。またこの結果を論文にまとめる予定で研究結果投稿料として50千円を予定している。
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